順天堂グローバル教養論集第一巻20160325
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73医療の場における異文化理解て接する他集団との初めての体験に、ストレンジャーがどのように行動したらよいかわからず(不確実性)、安心感がない(不安)こと。さらに不確実性と不安は集団間コミュニケーションのそれぞれ独立した局面であること。またストレンジャーは、自らの行動を知りつつ行動すること。そして集団間および対人間の諸要素の両方が、集団間コミュニケーションに影響を与えること。最後にストレンジャーは、他集団の成員の行動を説明する際に、集団の成員であることを過大評価することを6種の仮定条件としている。Gudykunstは、人間のコミュニケーション行為の原点に「知ること」を置き、知りたいことが足りないために、不確実なことがあり「不安」になると考えた。したがって、不安の消滅、つまり安心感の獲得が、Gudykunstの集団間コミュニケーションの目標である。そのためには、相手の文化背景について十分な情報を得る必要がある。そうすることができて初めて、安心したコミュニケーションが可能になると考えられた。1.6. 本稿の目的 本稿では日本における外国人患者の代表的な人種属性に関して、医療に関する文化と、医療における異文化に直面した際の具体的対処法を、文献検索により得た結果を通じて考察する。2. 方法 医療における異文化理解の具体例を調査するため、文献検索を実施した。国内の文献は、小林米幸著(2006)『医師・看護師・コメディカルに役立つ外国人患者への外来対応マニュアル』等の外国人患者に関する書籍と、医学中央雑誌Web、Google Scholarを利用して「異文化、医療」といったキーワードで検索された結果のうち、医療の場での異文化理解に関連すると思われるものを抽出した。海外の文献は、Geri-Ann Galanti (2008)の“Caring for Patients from Different Cultures、 4th edition”とAthena du Pre (2014)の “Communicating about Health 4th edi-tion”に関して医療の場での異文化理解に関する情報を抽出した。これらの海外の書籍を選定した理由は、医療における特定の人種集団の行動様式の一般化に関する情報を提供していたからである。小林米幸著(2006)『医師・看護師・コメディカルに役立つ外国人患者への外来対応マニュアル』の外国人患者に関する記述は、外国人医療に関する無料電話相談(7カ国語)であるNPO法人AMDA国際医療情報センター東京、大阪オフィスで受け付けた年間約5,000件の電話相談の中からの抜粋である。Geri-Ann Galanti (2008)の“Caring for Patients from Dif-ferent Cultures、 4th edition”の内容は、著者が米国カリフォルニア州立大学で教鞭をとる中で医療従事者から得たケーススタディである。とAthena du Pre (2014)の “Communicating about Health 4th edition”の内容は、著者が医療コミュニケーション講師、ジャーナリストとしての業務経験から得た著者独自の視点の記述である。文献検索によって得た結果については、水野(2013)が31名の医療通訳者にアンケート調査を行った結果である、医療の現場での文化差に起因する問題の分類を参考に、主な問題について人種ごとの傾向の記述を文献から抽出した。なお、2013年に経済産業省が、国内の189の医療機関を対象に実施した外国人患者の受け入れ状況に関するアンケート調査結果によれば、2012年度の居住国別の外国人患者の受け入れ人数は、1位中国、2位韓国、3位ロシア、4位米国、5位フィリピンであり、中東はサウジアラビアが10位に入ったのが最高であった。したがって、本稿で取り扱う人種に関しては、それぞれ東アジア、ロシア、アングロアメリカンとアフリカ系アメリカン、東南アジア、中東に大別した。文献検索の結果をもとに、各人種において、価値観、時間に対する概念、痛み、家族、妊娠出産、終末期に対する考え、健康信念、習慣に関する記述を抽出した。

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