順天堂グローバル教養論集第一巻20160325
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74順天堂グローバル教養論集 第一巻(2016)3. 結果3.1. 結果1:代表的な民族の医療に関する文化 医学中央雑誌Web、Google Scholarを利用して「異文化、医療」といったキーワードで検索された結果はそれぞれ29件、590件であった。タイトルと抄録を調査したところ、特定の人種属性に関して医療の場での文化的特徴を明確に示唆するものは見当たらなかった。そのため、国内外の書籍のうち小林米幸著(2006)『医師・看護師・コメディカルに役立つ外国人患者への外来対応マニュアル』等の外国人患者に関する書籍と、Geri-Ann Galanti (2008)の“Caring for Patients from Different Cultures、 4th edition”とAthena du Pre (2014)の “Communicating about Health 4th edition”の内容を精査し医療の場での異文化理解に関する情報を抽出した。以下の情報は、一般知識や過去の経験による概観(一般化)であり、その文化を理解するための最初の一歩である。各文化でよく見られる傾向を指すが、それが個人に当てはまるかどうかの判断については、より詳細な情報を集め慎重になる必要があることを理解されたい。 東アジア諸国(日本・中国・韓国を含む)に含まれる国はそれぞれ独自の文化を持つが、世界全体で見た場合には比較的調和を好み争いを避ける民族といえる。時間に対する概念は、特に中国では過去、伝統を重視する傾向がある。苦難を我慢することが美徳という考えがあり、痛みがあっても過小に表現する。また多くのアジア諸国で親、年長者を尊敬する文化である。患者に対しては家族が介助することが義務と考えられており、妊娠・出産には女性の親族が立ち会うことが多い。命にかかわる病に際して、患者に対して余命を隠す傾向がある。多くのアジアの国において、特定の疾患が恐れとスティグマの対象になっている。死に向き合うことをよしとせず、前もって緩和ケアに関して相談をしたくないという家族もいるが、近年この傾向は変わりつつある。健康に関しては民間療法が発達しており、中国と韓国ではカップやコインを使った民間療法を実施するため、しばしばその治療跡を欧米の病院で虐待の跡と誤解されることがある。薬草を使用した民間療法も盛んに行われている。また、乳児の臀部に出る蒙古斑についても、西洋にはないため虐待の跡と誤解されがちである。 ロシアの人々の価値観に関しては、時間に価値を置いており、無駄話を好まず、直截である場合が多い。応対する際は、アイコンタクトをしっかり行い、毅然とした態度で応対するのがよい、とされている。時間に対する観念は未来志向で、時間を守る。また時間を無駄にしたくないという意識が高い。痛みに対しては、非常に我慢強い。また、薬物中毒を恐れるため、鎮痛剤を与える場合には、その重要性について説明する必要がある。家族に関しては、母親と年長者を尊重する傾向がある。妊娠中は、運動や重い物を運ぶと胎児が傷つくという考えを持つ人がいる。出産に際しては、女性の親戚の立ち合いを希望することが多い。終末期においては、終末期であることを家族が患者に隠したがることがある。生検、臓器移植は体の神聖性を侵すと考えられるため、拒否されることが多い。健康信念、習慣については、冷えが病気につながると考える人が特に高齢者に多い。また薬物中毒を恐れるため、薬の服用は最小限にしたいと考える人がいる。また、カップを使って民間療法が行われている地域がある。 アングロ系アメリカ人は独立に価値を置く人種であり、直接的なアイコンタクトと感情のコントロールが求められる。またプライバシーを重視する。時間に対する概念は様々だが、社会階層が低い人に現在志向が多く見られる。痛みに対しては鎮痛剤を希望する人が多いが、痛みを我慢しがちである。家族は核家族的であるが、同性愛の患者は友人が家族同様であることもある。夫婦の権限は基本的に同等である。妊娠・出産に関しては、出産前の医療が一般的で配偶者が出産に立ち会うこと、そして病院での出産が好まれる。終末期に際しては、診断と予後に

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