順天堂グローバル教養論集第一巻20160325
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75医療の場における異文化理解ついて患者が直接詳細な情報を得たい、必要な治療は全てやりたいという人が多い。中流以上はインターネットで情報収集する人が多い。死後の臓器提供には肯定的である。人種特有の傾向としては、積極治療を望み西洋医療を信頼する。しかし、中流以上で民間療法(ハーブなど)を独自に行う人々もいる。アフリカ系アメリカ人に関しては、特に高齢者は病院を信用していない。また、意図していなくても差別に敏感である。非常に宗教上の信仰心に篤い人が多い。時間に対する概念は、社会階層が低いと現在志向で、予防医学等に無関心である傾向がある。痛みを大げさに表す傾向があり、核家族的だが、親友や教会の友人を家族と呼ぶ傾向もある。妊娠・出産に関しては、出産前の医療が一般的で、一般に女性のみが出産に立ち会う。終末期に際しては、医師にそれ以上治療してもらえないことを恐れDNR(蘇生処置をしない)にサインを躊躇する。また奇跡を信じて生命維持装置を外したがらない人もいる。宗教心が篤いため、病気が罪の罰だと考える人がいる。また、民間療法として、薬草による治療の伝統があり、社会階層に関係なく行われている。 東南アジアの人々は、仏教徒が最も多いため、貞節を重視する傾向がある。時間に対する概念としては現在を重視する。高齢者の中には時間を守ることを重視しない人もいる。痛みがあっても我慢することが多い。家族の中では年長者を敬う習慣があり、男性が意思決定をすることが多い。親戚を連れてきた場合は、診療時には本人ではなくその場で最年長の男性を見て話すとスムーズに進むことが多い。出産に際しては、実母か夫が立ち会うことを希望し、産後に胎盤を持ち帰ることを希望する人もいる。終末期に対する考えは、家族が余命を本人に隠したがる傾向があり、両親や祖父母の死後は彼らが先祖となり護ってくれるという信仰がある。また、言葉が病気を引き起こすという考えがある。民間療法は様々であるが、カップやコインを使った治療法があり、虐待と間違われがちである。 中東の人々の価値観には、イスラム教が非常に大きく影響している。女性は貞節が重んじられるため、直接のアイコンタクトを嫌う傾向がある。時間に対する概念は、過去、現在を重視する傾向があるが、イラン人は未来志向の人が多い。時間通りにすることを重視しないため、診療や手術等で時間を守る必要がある場合は、丁寧に説明する必要がある。痛みを非常に大きく表現する傾向がある。家族を大事にし、家族も患者が大切であるため、家族が患者の治療に意見する。父権主義であるため、治療に関して本人ではなく最年長の男性が意思決定をする場合が多い。また、男性の医療者に女性の患者というケースは宗教上認められないことが多く、特に出産の際には同性の医師を求める傾向がある。妊娠は自然な状態なので出産前の医療は不要と考え受診が遅くなる傾向がある。また、家族計画はアラーの意思に反するので行わない。出産に際しては、通常女性の親戚が出産に立ち会う。また出産後最初に出る母乳は子供に有害という考えがある。終末期に際しては、余命を本人に隠したがる傾向があり、アラーの意思に反するという理由で、死について計画をしたがらない。また、宗教上、死後の臓器提供は認められていない。その他の習慣としては、ラマダンの時には断食のため、服薬、飲食をしない。また、服薬より注射を有効と考える傾向があり、敬虔なムスリムは豚肉を不浄と考え食べない。3.2. 結果2:医療における異文化に直面した際の具体的対処法 Galanti (2008)は著書Caring for Patients from Different CulturesのAppendix 3: Dos and Don’ts of Providing Culturally competent careの中で、医療の場における異文化理解に際して、医療者がすべきこととしてはいけないこと(表)を以下のように述べている。

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