順天堂グローバル教養論集_第二巻_2017年3月(ISSN2424-0001)
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48順天堂グローバル教養論集 第二巻(2017)(2003)などが挙げられる(MICかながわ、2006)。これらの自治体またはNPO、NGO等が主催のプログラムに共通する特徴としては、医療通訳関連団体の設立は90年代以降と新しいものが多いこと、自治体が関係する医療通訳関連団体では研修制度と派遣制度が同じ団体で行われていることが多いことが挙げられる。 教育機関主催のプログラムに関して、大阪外国語大学では2004度より「医療通訳翻訳の実務論」が開校され、2005年度に創設された通訳翻訳学専修コースのカリキュラムの一部になっている。大阪の吹田市では自治体国際化協会から平成17年度地域国際化協会等先導的施策支援事業助成金を受け、コミュニティー通訳養成講座を開講した。2006年には神奈川県主催の「医療通訳を考える全国会議2006」が開催され、2009年2月には大阪大学で医療通訳士協議会が発足し、2010年7月には東京大学主催で夏期医療通訳講座が、2010年10月には東京外国語大学で国際医療通訳講座がそれぞれ開講し、医療通訳養成に向けた数々の取り組みが行われている。また大学などの公的教育機関のみならず、民間の通訳養成団体インタースクールでも、2009年に医療通訳養成講座が開講され、2009年に設立された東京通訳アカデミーにおいても医療通訳養成、民間資格認定が行われている(大野、2015)。1.2. 医療通訳システムに関する海外先進地域 海外の医療通訳養成プログラムを含む医療通訳システムに関しては、それぞれの国が自国の事情に合わせてシステムを確立し運用している。移民の多い国では、移民が公的サービスを受けて労働者として定着する過程で法的根拠が整う傾向がある(連、2013)が、移民が多いというだけで医療通訳の先進国ということにはならない。著者の知る限り、医療通訳の先進国であるということを示す客観的な指標はまだ確立していない。しかし、本研究では、医療通訳者がいる国のなかで法的根拠と予算財源があるものを、先進事例として取りあげることとした。1.3. 本稿の目的 本研究の目的は、海外の医療通訳システムの中から先進事例となるものを抽出し、法的根拠と予算財源を中心に調査し、日本の現状と比較することである。2. 方法 方法1:日本で出版された論文の中で、医療通訳の海外先進事例として紹介されている国を、先行文献検索により抽出した。2016年6月に、CiNiiで「医療通訳」をキーワードに検索した結果のなかから、抄録から海外先進事例、法的根拠あるいは予算財源について述べていたことがわかった文献を抽出した。また、Pubmedで“medical, healthcare, interpreter”をキーワードに検索した結果の中から、抄録から海外先進事例、法的根拠あるいは予算財源について述べていたことがわかった文献を抽出した。その後、抽出した文献の内容を精査し、主に法的根拠と予算財源に関して日本の現状との比較を行った。 方法2:シンガポールのニチイインターナショナルクリニックにおいて、医療通訳業務について調査を行った。シンガポールはアジアの医療先進国であり、著者が実際に調査を実施したことから海外先進事例として報告する国に加えた。調査方法は、2016年9月5日~9月8日の、9時~18時に受付と院内通訳に同席し、行動観察を行い、その様子をノートに記録した。通訳者は2名(著者を含む)であり、1名は病院スタッフかつ医療従事者であり医療通訳者としての研修は受けておらず、もう1名は研修生であり医療従事者ではなく、医療通訳者としての研修を受けていた。研修生は筆者でもあるため、観察対象から除外した。3. 結果 結果1:CiNiiで検索した結果、136件の文献

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