順天堂グローバル教養論集_第二巻_2017年3月(ISSN2424-0001)
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49医療通訳システムに関する海外先進地域の取り組みと日本との比較が抽出された。その中で、米国が9件、オーストラリアが3件、イギリスが1件、スイスが1件であった。海外文献についてPubmedで検索した結果、272件の論文が抽出され、その中で医療通訳制度について言及のある論文は1本のみ、国は米国であった。よって、本稿では文献調査の結果としては米国とオーストラリアについて詳述し、抽出した論文から法的根拠予算財源に関する情報の有無を精査し、日本の現状と比較することとした。CiNiiとPubmedで検索した結果抽出した論文を表1に示す。3.1. 米国 米国では英語での読み書き、対話による意思疎通が十分でない状態をLEP(Limited English Proficiency)と称している。連邦政府から補助金を得ている医療機関は、LEP指針(2003)によりLEP患者に医療通訳者を無料で提供する責務がある(大谷、2012)。また1964年に制定された公民権法(Civil Rights Act of 1964)(Title VI)第601節には、「米国居住者は、人種、肌色、国籍等を理由に排斥、拒否、差別の対象にされない。」と明記されており、この法律は言語による人種差別を禁じた連邦の基本法である(Juckett、2014)。米国の病院の構成は、日本同様、公立と民間の2種類である。 日本の国立にあたる連邦立の病院は、精神・結核・退役軍人の3種類の専門病院のみである。公立病院にあたるのは郡立病院である。民間病院は、営利と非営利に分かれている。教会や慈善団体によって開設された非営利病院が病院全体の70%を占め、医療保険制度改革法の 9007 条(Section9007)によって、連邦の課税制度から免税対象となっており、州や地方自治体の財産税、連邦所得税などの税控除を受けることができる。病院の構成の半数を占める民間非営利病院の中には、不況で財政難のため、経営統合や連携体制の強化を模索する所もある。また、2000年 Executive Order 13166(大統領令13166号)では全連邦政府機関に、LEP患者等のサービスへのアクセス向上のために実施すべきことのガイドライン作成を義務づけた(西野、2004)。対面通訳とビデオ通訳、電話通訳等を組み合わせて、少数言語の場合もサービスを提供表1. CiNiiとPubmedで検索・抽出した論文著者(年)表題米国森田 直美(2015)米国の医療通訳事情: IMIA学術集会に参加して竹迫 和美(2014)米国の医療通訳システムスミス山下 朋子埋橋 淑子大谷 晋也(2014)アメリカの医療通訳現場から学べること : 総合病院でのビデオ通訳の試み竹迫和美、中村安秀(2013)米国において医療通訳士が職業として確立するまで:~創始期先駆者の視点~遠藤 弘良(2014)国際医療交流の現状と医療通訳 (特集 医療通訳士と保健医療)スミス山下 朋子、埋橋 淑子、大谷 晋也(2012)アメリカ合衆国における医療通訳事情調査報告竹迫和美、中村安秀(2010)多文化共生の扉・アメリカ合衆国の医療通訳の現状石崎 正幸Borgman Patricia D.西野 かおる(2004)米国における医療通訳とLEP患者西野 かおる(2005)医療通訳―米国に学ぶ事と今後の課題Juckett G, Unger K(2014)Appropriate use of medical in-terpreters.オーストラリア与那嶺 隆(2010)公的医療機関における医療通訳制度 (特集 オーストラリアの多文化主義政策)藤原 ゆかり(2007)オーストラリア,ニューサウスウエールズにみる多言語サービス―産科のシステムと医療通訳の利用に注目して松尾 博哉(2005)オーストラリアの医療通訳制度事情

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