順天堂グローバル教養論集_第二巻_2017年3月(ISSN2424-0001)
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51医療通訳システムに関する海外先進地域の取り組みと日本との比較は最大手の電話通訳事業会社で、24時間電話通訳により急な要請や希少使用言語へ対応している。(使用料:$3.95/分(約430円)) 米国では「医療通訳士」という公的資格はまだなく医療通訳者の育成、研修内容についての全米基準はまだ確立されていない。現在代表的な民間の医療通訳トレーニングは「Bridging The Gap」であり、全米各地の通訳派遣会社、セミナー機関が本コースを提供している。本コースの修了証書が、医療通訳をする上での最低限の教育を受けたという証明になり、医療機関が医療通訳者を雇用する際に配慮される。筆者も2014年2月に当該コースを受講した。一週間の講座では日本語の他に、スペイン語、ロシア語、ウクライナ語、中国語、ASL(アメリカ手話)の話者が共に受講しており、授業は英語で実施された。「Bridging The Gap」の主催団体The Cross Cultural Health Care Program (CCHCP)はワシントン州の認定試験対策から発足した、シアトルに本部がある非営利団体で、医療通訳研修のほか、異文化対応能力開発研修とコンサルティング、多言語での出版等を実施している。3.2. オーストラリア オーストラリアの医療は、一般開業医、専門医、病院、薬局、検査機関の5つの分野に分けられている。オーストラリアではホームドクター制となっており、医師は一般開業医と専門医に分かれている。病気や怪我の場合には、まず一般開業医の診察を受け、必要に応じて専門医の紹介を受ける。 オーストラリアは多民族国家であり、すべての病院に移民者数の多い14ヶ国語(日本語はない)での対応が義務付けられており、患者の通訳は病院の負担で行なわなければならない。病院は急性期の患者のみを受入れ退院後は在宅医療または介護施設へ移行できる仕組みが整備されていること、総合医制度が確立していることなど基本的には英国型のシステムに似ている。が、英国のように医療の提供すべてを国営で行なうのではなく、民間との混合方式を採用し、財源面・医療面での民間部門の充実を図ってきた。公的病院は運営のための財源のほとんどを連邦政府からの補助金と州政府からの拠出金に依存している。民間病院は政府などからの補助金を受けず、患者は診療費のほかに入院料などの施設関連費用を請求され、公的保険は適用されないが、手術の待ち時間が短いことや医師や治療環境の選択が自由にできるという利点がある。オーストラリアでは全病院の約6割を公的病院が占めており、近年民間病院が増加傾向にはあるものの、依然として公的病院が中心的役割を果たしている。 1970年代に、白豪主義から多文化主義への転換として通訳サービスを充実するための制度が発足、全豪統一の通訳試験も確立した。公立病院では州政府の医療通訳サービスを受けられるが、公立病院以外の一般開業医などを受診する際には、民間通訳サービスに加えて連邦政府「Translation and Interpretation Service(TIS)」でも医療通訳サービスが受給可能である。 Translation and Interpretation Service(TIS)はオーストラリア連邦最大の通訳翻訳サービス機関である。国の税金を財源として24時間体制で100以上の言語に対応する対面、電話通訳サービスを実施している。TISの事業経費の負担者は連邦政府及びサービス利用者で、政府機関等や医療機関(GP、専門医)との連絡は無料であるが、オーストラリア国民及び永住者に限られている。患者負担額は無料である。 医療費の負担は税金を財源とする「メディケア(Medicare)」と呼ばれる公的医療保障制度(国民皆保障制度)による。公立病院では全国民がほぼ無料で医療サービスを受けている。医療システムは連邦政府レベルの「メディケア庁(Medicare Australia)」によって全国一律に運営されており、運営に要する連邦政府の財源は4分の1がメディケア税(Medicare Levy)、 4分の3が所得税や間接税などの税金でまかなわれている。1977年に、翻訳者と通訳者の資格を

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