順天堂グローバル教養論集_第二巻_2017年3月(ISSN2424-0001)
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52順天堂グローバル教養論集 第二巻(2017)標準化し認定する国家機関であるNational Ac-creditation Authority For Translators and Interpret-ers (NAATI)が移民局の一部署として創設された。NAATI試験は医療通訳に特化したものではなく、司法通訳、学校通訳も含めたコミュニティー通訳としての包括的な知識を問われるという点で日本や米国とは異なる。 オーストラリア政府公認の通訳・翻訳家になるためには、オーストラリアの国家資格となるNAATI(National Accreditation Authority for Translators & Interpreters)の資格を取得する必要がある。医療通訳者のほとんどは母国語の他に英語を学習し、オーストラリアに来た後に NAATIの資格を取得、その後、母国語と英語の通訳者として活躍する。NAATIの資格はLEVEL1~LEVEL5までの5段階にわかれ、通訳・翻訳家としての資格を取得するには、レベル3以上を取得する必要がある。  NAATIの資格を取得する二つの方法は以下のとおりである。 1. 定期的におこなわれる、NAATIの公認検定試験に合格する 2. NAATIの認定を受けた通訳・翻訳の専門コースを受講し規定の条件を満たす 連邦の通訳翻訳サービスに加え、各州が独自のサービスを提供している。その中で、シドニーのあるニューサウスウェールズ州を挙げる。 ニューサウスウェールズ(NSW)州は、豪州で最も移民の多い州であり州の言語政策も整備されている(藤原、2007)。1972 年に公的医療機関における医療通訳サービスが試行的に開始し、NSW州人種差別禁止法の施行された1977 年から本格実施、2013年時点では12州を大都市地域4つ、郊外地域4つに区切って医療通訳派遣サービスを実施している。 NSW州は1988年、多文化の国民の保健サービスへのアクセス向上のために州の公的保健システムを再構成し、地域事務局制を廃止して地域保健サービス制を導入した。各地域保健サービス局が受け持つ地域を拡大、より広範囲での保健行政を目指したことにより、全地域を対象にした通訳サービスが設立された。また法的根拠として、州命令の2006 年第 53 号 医療通訳に関する基本手続では、異なる文化背景の住民への同様の医療サービスを義務付けられた。実際の通訳現場の形態として、NSW州の、シドニー南西部健康局医療サービスを例に挙げる。 シドニー南西部健康局医療サービスは、病院及び健康管理施設を管轄する州政府機関で、シドニー南西部の全公立医療機関に通訳・翻訳サービスを提供しており、医療機関での対面通訳、電話通訳や自宅への訪問通訳に対応している。予約はコールセンターで常勤スタッフが一括受付、常勤通訳者と契約通訳者に割り振っている。報酬は、常勤通訳者(8時半–17時)で年45000~65000ドルであった(約490~700万円)。契約通訳者は、最低保障として、125ドル(約13600円、2時間半)が支払われている。電話通訳者は、最低保障として18.30ドル(約1980円/30分)、以降30分単位で同額が加算される。 NSW 州では、公的医療機関の通訳には、公的な認証NAATIを受け、特別に訓練され、医学用語を理解し、公的医療システムに精通した通訳者を使うことが方針とされている。NAATI の認定資格は更新制で、再認定を受けなければ医療通訳の資格が取り消される。実際にプロの医療通訳者として派遣されるためには、集中講義、医学専門用語研修、定期講習など州政府が費用を負担して実施するいくつかの研修を受け、最後は試験に合格しなければならない。医療通訳に関しては、Health Care Interpreter Ser-vice(HCIS)が統一してサービス運営を行っている。利用者が公立病院、公的医療機関等で公的患者として診療を受ける場合は本人の負担なしで通訳サービスを受けられる。通訳サービス提供にかかる費用は NSW 州政府が負担しており、サービスを実施している各地域保健機関に予算を割り当てている。州保健省は研修を実施しており、研修後は州政府関連の医療通訳機関

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