順天堂グローバル教養論集_第二巻_2017年3月(ISSN2424-0001)
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54順天堂グローバル教養論集 第二巻(2017)されていた、同様の日系クリニックでの病院スタッフの募集要項にあった報酬は、月給が3300シンガポールドル(約26万円)でボーナス有、推定年収は額面で約360万円であった。医療通訳に関する資格は、国家資格・民間資格共に無いようであった。 外務省Webサイトの在外公館医務官情報の米国、オーストラリア国内の「日本語で受診できる医師・カウンセラー・鍼灸師など」の項に記載のある日本人医師は、その専門分野(家庭医、一般内科など)全て一般開業医であると思われる。シンガポールでは、国策により2005年に日本人医師の就業は30名までと定められており、日本人医師は、医療機関が集まるビルのテナントや大病院のテナントとして、クリニックを開設し一般開業医として診療にあたるという就業形態が大多数である。米国やオーストラリアと同様、一般開業医と専門医とに分かれているシンガポールでは、一般開業医の場合は患者が日本人医師の診療を選んで受診することが出来るが、専門医の紹介に関しては、医療機関同士の契約の問題のため、通常患者が医師を指定することができないため、日本人の専門医を選んでアクセスすることはできないと思われる。よって、主に医療通訳の需要は専門医でより必要であり、実際に利用されていた。日本人一般開業医のいない地域では、First touchと高度医療両方で医療通訳が必要とされることが予想されるが、概して高度な或いは危険性を伴う治療・病態の説明に際してより正確性の求められる医療通訳が求められる。3.4. 日本との比較 日本と米国、オーストラリア、シンガポールにおける医療通訳の法的根拠と予算財源に関する比較を表2に示す。 日本の場合、医療通訳に関する法的根拠は手話以外にはないが、手話の場合は障害者差別解消法(2016)などにより公的機関と民間企業における手話通訳による言語支援が法制化されている。しかし、英語などその他の言語では、医療通訳による支援はまだ法制化されていない。 医療通訳者は通訳だけでなく「診察室での医者と患者の信頼関係を重視し、コミュニケーションを円滑に進めるための仲介人というだけでなく、患者の心理面への配慮、必要 な援助を提供できる場への引き継ぎも大切な役目」(灘光、2008)と考えられているが、その報酬は一般通訳の10分の1程度と言われており、十分ではないのが現状である。米国と日本との最大の相違点は、米国で誰でも無料で医療通訳サービスが保証されている点である。米国がCodeなどの法的根拠があるのと比較して、日本国内では医療通訳を提供するうえで法的根拠はない。その財源は国または州政府の医療費予算であるのに対して、日本では自治体の一部の予算や病院等様々な財源でまかなっており、財源が不安定なため医療通訳者に十分な報酬が保証されていない現状がある。 米国の医療制度は、公的医療保険と民間医療保険の2本立てとなっている。公的医療保険制度には2種類ある。1方は「メディケア」(65歳以上の高齢者、65歳未満の身体障害者、末表2. 日本、米国、豪州、シンガポール、日本の医療通訳の法的根拠と予算財源に関する比較米国豪州シンガポール日本法的根拠公民権法 (Civil Right Act VI-6)州命令(NSWは医療通訳に関する基本手続き)なしなし(手話は障害者差別解消法などあり)予算財源各州政府各州政府海外旅行保険、患者個人等病院、地方自治体、個人等様々

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