順天堂グローバル教養論集_第二巻_2017年3月(ISSN2424-0001)
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56順天堂グローバル教養論集 第二巻(2017) まず、医療通訳サービスを保障する法的根拠の設定が必要である。そしてその法的根拠に基づき、訪日、在日外国人診療の受診の権利を保証できる仕組みづくりが必要である。また、医療通訳者の派遣、教育にかかる組織運営と運営費用を国、自治体が負担し、患者が無料でサービスを利用できる体制づくりも必要である。医療通訳者の質保証のため、全国統一の資格試験、研修プログラムを整備することに関しては、日本では現在整備中である。さらに医療通訳者の質確保のため、給与を会議通訳、ビジネス通訳等と同程度に保証する必要がある。5. 本研究の意義 日本における医療通訳に関する仕組みづくりのため、各国の事情の違いはあるものの、米国およびオーストラリア、シンガポールのような医療通訳の先進国における事例を参考にすることは意義がある。 また、米国とオーストラリア、日本との比較に関する論文は先行研究にあるが、シンガポールとこれらの国々を比較した研究はこれまでになく、比較によって得られた考察は新たな知見といえる。 本研究の限界は、国内の文献のみ検索したことである。海外の文献も検索対象に含めることで、より多くの国々や、言語の医療通訳に関して情報が得られるため、今後の課題としたい。6. 結論 海外の医療通訳システムの中から米国とオーストラリアを医療通訳の先進国とみなし、法的根拠と予算財源を中心に調査した。これらの国と比較して、法的根拠の設定、医療通訳者の派遣、教育にかかる組織運営と運営費用を国、自治体が負担し、患者が無料でサービスを利用できる体制づくり、全国統一の資格試験および研修プログラム整備の必要性、給与を会議通訳、ビジネス通訳等と同程度に保証することによる医療通訳者の質確保の必要性が示唆された。今後も医療通訳者の専門化にむけて、先進諸国の事例を踏まえた政策、教育上の進展が望まれる。謝辞 本研究の実施にあたり、移民政策学会シンポジウムに招待いただき報告の機会をいただきました、西村明夫様、シンガポールのクリニックで調査の機会をいただきました特定非営利活動法人多文化共生センターきょうと、ニチイインターナショナルクリニックの関係者の皆様のご協力に心より感謝申し上げます。 (本稿は、2016年5月に移民政策学会にて発表した内容を、論文用に加筆編集したものである。)引用文献Errors in medical interpretation and their potential clinical consequences in pediatric encounters.Pediatrics, 1, 6–14.遠藤弘良(2014).「国際医療交流の現状と医療通訳(特集 医療通訳士と保健医療)」『保健の科学』第56巻12号, 832–835頁.藤原ゆかり(2007).「オーストラリア,ニューサウスウエールズにみる多言語サービス--産科のシステムと医療通訳の利用に注目して」『ペリネイタル・ケア』第26号(6), 634–640頁.Flores, G., Laws, M. B., Mayo, S. J., Zukerman, B., Abreu, M., Medina, L., Hardt, E. L.(2003). Errors in medical interpretation and their po-tential clinical consequences in pediatric en-counters. Pediatrics, 1, 6–14.Harmsen, J. A. M., Meeuwesen, L., Wieringen, J., Bernsen, R., & Bruijnzeels, M.(2003).When cultures meet in general practice: inter-cultural differences between GPs and parents of child patients. Patient Education and Coun-selling, 51, 99–106.石崎正幸・Patricia D. Borgman・西野かおる(2004).「米国における医療通訳と LEP患

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