順天堂グローバル教養論集_第二巻_2017年3月(ISSN2424-0001)
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59ニュージーランドの教職課程の訪問調査報告1. はじめに 日本においては、教育学部のある大学を中心に、教職課程を持つ大学は少なくない。英語教職課程を持つ大学も多い。文部科学省が2016年に発表したデータによると、その数は400校にも及ぶ (日本経済新聞、2016)。資格取得を重視する日本にあって、中学高校の英語教員免許は、英語を専門とする大学生が在学中に取得できる唯一とも言える国家資格である。そのため、教員になる意志があるなしにかかわらず、将来のために安全策として教員免許の取得を目指す学生は少なくない。また、大学側にとっても、入学者を引き付ける大きな魅力として利用している側面も否めない。 しかし、そのような学部レベルの英語教職課程は、文部科学省の設置基準に従い、教員審査を受けているにもかかわらず、問題点が少なくないことはこれまでの調査結果によって明らかにされており、文部科学省も認識していることである。(文部科学省、2015;日本経済新聞、2016)。ではまず、その問題点についてみていこう。2. 英語教職課程における問題 これまで英語教育の世界では、大学における英語教職課程に関する調査研究が行われ、解決すべき問題がある程度明らかにされている。そして明らかになった問題解決のため、教育実習生が身につけるべき資質、知識そしてスキルを提示している。日本の中学校や高等学校の場合、他国と異なり生徒指導、進路指導、また担任としての業務などがあり、求められる力は多岐にわたるが、本稿では、私立A大学国際教養学部英語教職課程の向上に直接関係する点に絞って論じていくことにする。 その一つ、山崎 (2006)は、大学の英語教職担当者、中学高校の教育実習担当者、教育委員会の教員採用担当者などに調査を行い、実習生に求める力について報告している。その中で浮かび上がってきた点は次の2点である。2.1. 高度の英語力 具体的には、英検準1級あるいはTOEFL iBT 550点に相当する英語力を持ち、適切な発音で英文を読んだり話したりできること。また、大学入試センター試験に対して正確な解答がを出す力があること、ALTとコミュニケーションをとることができること、学校英文法を体系的に説明できることなどが挙げられている。なお、筆者の一人である小野田は、かつて14年間英語教員免許取得を希望する英語専攻の学生を対象とする英語科教育法を担当していたが、しっかりとした文法力を身につけていた学生はごくわずかであり、毎年教育実習校から、教育実習生の文法力を向上させ、正確な英文を書けるように指導してほしいとの要望を受けていた。これは、かなり深刻な事態であるが、実際に正規の教員として働いている教師の実態を見ればうなずけることである。例えば、2014年度に文部科学省が全国の公立中学校・高等学校英語教員を対象に行った調査がある。それによると、英語力の指標である英検準1級あるいはそれ以上に相当する資格を持っている中学の英語教員は28.8%、高校の英語教員では55.4%に過ぎないのである (日本経済新聞、2016)。2.2. 充実した教育実習  充実した教育実習を行うためには、実習期間の長期化は避けられない。これは、現実的には、Key words英語教職課程、教育実習、理論と実践との融合English Teacher Education Programs, Teaching Practice, Close Integration of Theory and Practice

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