順天堂グローバル教養論集_第二巻_2017年3月(ISSN2424-0001)
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60順天堂グローバル教養論集 第二巻(2017)必ずしも実習校の指導教員が望んでいることではない。過密なスケジュールで働く、中学校高校の教員にとって、実習生を担当すること自体が大きな負担である。事実、指導教員の多くは実習期間中に実際に教える時間として、6~15時間が望ましいと回答している。しかし、その一方で教員を育てる理想として、長期の実習期間の必要性も認識している。ただし、その準備として、次のような指導を、大学側に要望している。(a) 英語の4技能の統合力の養成(b) 教科書を使用した効果的な指導法の伝授(c) 長期化された実習期間中の対応 ・大学の指導教官による実習校の定期訪問と授業参観そして助言 ・大学の指導教官と実習生指導教官の連携 ・実習に適性を欠くと判断された実習生の大学側の引き取り このような指導教員の考えは、Murphey, Onoda, Takahashi, & Chiba (2008)でも報告され、特に教育実習期間の長期化が理想的であることが、大学の教職担当者だけでなく、高校の指導教員、そして実習生からも指摘されている。ただし、この場合気を付けたいのが、実習生の回答は、教員を目指す意識の高い実習生のみによる回答であるということである。前述のように教員資格のみ必要な学生は当然のことながら長期化を望んではいない。一般企業の就職活動に支障が出るからである。 また、佐野・斎藤・吉田 (2016) は、教育上の成功を達成したフィンランドの教員養成制度を分析し、その要因として5年制の教職課程に着目し、「高い専門性を持ち、自分の考えで行動する教師の育成」(p. 4)という目標があることを指摘している。このような認識のもとに、日本の学部レベルの教職課程は、英語を教えるための知識と技能を身につけ、理論と実践を効果的に結び付けるには不十分であると判断し、学部レベルから続く6年制の教職課程制度を提案している。また、その中で、大学・大学院における教職課程の科目の効果的な連携と融合を行うべきであるし、現職教員の自己研鑽の機会を与える機能も取り入れるべきであるとしている。このように、教職課程を長期化し、専門性と教職に対する意識を高める制度が必要であることは明らかである。3. 他国での教職課程の取り組み 他国での教職課程に関する研究調査の中で、日本の英語教職課程改善に役立つと思えるのが、台湾、シンガポールでの教員養成の取り組みである。山崎(2006)は、実際にその国々で調査を行い、その特徴を下記のように報告している。 3.1. 台湾 台湾における取り組みのひとつとして、国立台湾師範大学のインターンシップが報告されている。1年間見習い教員(ただし、政府から手当が給付される)として、実習校で授業参観、授業実践を行う。指導教官は実習生と月に一度会合を持ち、講義に参加したり、グループ討議に参加したりする。また、授業実践の録画を提出する義務を負う。その一方で、インターン受け入れ側では、受け入れにあたって面接試験を行い、英語力、一般的学力や人格を審査し、年に2、3名のみ受け入れるとのことである。3.2. シンガポール Nanyang Technological Universityでは、4年間で小学校・中学校・高等学校の免許が取れる、学部レベルの教職課程がある。教育実習 (pract-icum)が21単位必修となっており、school ex-perience (2週間)、teaching assistantship (5週間)、 teaching practice 1 & 2 (5週間 + 10週間)と実習に比重が置かれている。これは1年間で同様の教員免許を取得する大学院でのコースでも同様で、10週間の教育実習が課されている。 このように、台湾とシンガポールにおいては、十分な知識と指導力を持つ教員を養成するために、教育実習体験を長期にわたって積むことが

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