順天堂グローバル教養論集_第二巻_2017年3月(ISSN2424-0001)
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61ニュージーランドの教職課程の訪問調査報告重要であると考えられ、その制度が整っているのである。4. ニュージーランドでの調査研究の意義 これまで述べてきたように、日本では、十分な指導力や英語力を身につけた教員を輩出してこなかったこと、教職課程にかかわる教員の話し合いがなされていなかったために、今日のような問題が生じている。そのような反省に基づき、私立A大学国際教養学部英語教職課程から理想的な英語教員を輩出するためという強い意志の元に、宮下、吉野、小野田が、ニュージーランドのヴィクトリア大学ウエリントン校の教育学部を訪問した。学部長、教員養成コース運営担当の教授、及び指導者に、そのコース全体のカリキュラムに加え、指導力向上のためのシステムについて聞き取り調査を行った。指導力に長け、使命感と情熱を持った教員を教職課程で養成するには、小野田がかつて在外研究を行なったこの大学の応用言語学部から紹介していただいた教育学部において調査を行うことの意味が大きいと判断したのである。また実際の指導を学ぶべく、キャンパスの近くの高校での日本語や英語の授業を参観させていただき、これからのあり方に関して3人で話し合ったことは、志を同じくして英語教職課程を改善していく大きな第一歩となると考えた。特に政府が、教育と教員養成に重点を置いているニュージーランドで調査研究することは、われわれの調査研究の目的には欠かせない要素であり、この調査研究は意義深いものであると考える。なお、日本の英語教員の問題としてこれまでに取り上げた英語力向上の解決策は、外国語として英語を学ぶ日本と状況が異なるため、今回の調査の目的とはしなかった。5. ヴィクトリア大学ウエリントン校教育学部5.1. 学士コース 教育学部では、教員を目指す、目指さないにかかわらず、教育や教育心理について学ぶことが大きな位置を占める。この2つを学ぶことは、将来の個人の生活、社会生活、そして社会貢献に非常に役立つと考えているのである。このコースの中では、学生は次のような点について考えることになる。1. 人生の様々な段階において人間はどのように学び成長していくのか。2. このような学びや成長に影響を与える要因としてはどのようなものが考えられるか。3. 学習意欲をどのようにして維持するか。4. 学校が担う社会的役割はどのようなものか。5. 若者が直面している人生の問題とはどのようなものがあるか。 (Faculty of Education, Victoria University of Wellington, 2016) そして特徴的なのは、教職課程履修条件である。 日本のように大学に入学すると同時に教職課程を履修できるのとは違い、ニュージーランドでは、学部レベル、ディプロマレベル、修士課程レベルのいずれの場合であれ、教職課程に入るには、どのような教科を専門にするにしても、基本的能力として読み書きの力そして計算力が要求される。 また、家族や友人以外の2人 (できればすでに教師として働いている人間)による審査を報告し、彼らに教員としての適性を証明してもらわなければならない注1。 さらに、よい教師になるための資質について考え、他の応募者とグループ討議を行って評価を受けなければならない。評価項目は、(1) 相手の意見を聞く力、(2) 口頭でのコミュニケーション能力、(3) 同僚と協力関係を構築する力、などであるが、それに加えて教育省は、教養と計算能力を義務づけている。これは、教育実習等で実際に生徒の指導に当たるからである。最後に、教職課程では、中学高校での実習が含まれるため、警察による人物チェックが行われるとのことである。

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