順天堂グローバル教養論集_第二巻_2017年3月(ISSN2424-0001)
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64順天堂グローバル教養論集 第二巻(2017)からの移民の子供や留学生が多い学校もあり、特別な配慮が必要となってくるからである。6. 教師の資質と指導技術を高めていく制度 今回の調査の過程で多くの人から聞くことができた興味深く注目できる点は、教育に重点を置くニュージーランドならでは教育の質を保証する制度が存在することである。その特徴は、(a) 教職課程としては、学部レベルも存在するが、ディプロマレベルや修士レベルが好まれている点。(b) 課程履修のための人物の審査や厳しい履修基準、警察によるチェックが入る点。(c) ディプロマレベルや修士レベルが修了してから最低2年間教員として指導経験を積み、指導法が基準以上であると査定されて初めて、正規の教員として認定される点。(d) 理論と実践を有機的に結びつけ、その知識と技術を利用しながら、長期の教育実習を行い、その中で随時中学高校の指導教員および大学の指導教官からの指導助言を適時受け指導技術を高め、教員として成長させていく点。(e) 正規の教員として認定された後も、3年ごとに、自分の教育や指導方法を裏付ける書類(生徒による授業評価、作成した教材など)を教育委員会に提出し、査定を受けなければならない点。(f) 教員になってからも、オンラインや週末を利用して、修士課程を履修するよう薦められている点。 などであり、日本の免許状更新講習とは比較にならないほど厳しい制度になっているように思える。7. 結論 今回、私立A大学国際教養学部の英語教職課程を改善するという目的で、ニュージーランドにあるヴィクトリア大学ウエリントン校教育学部を訪問し多くの情報を得ることができた。その中で、実際に生かせると思えることは下記のようなことであろう。(a) 3年時の英語科指導法の授業の履修をしながら、中学高校で教育実習を行う。できれば、大学での講義と数週間の実習を交互に行う。そして、英語科指導法の担当者とその他の教職科目担当者が実習中に訪問し、教育実習生、中学高校の指導教員と、実習生の授業について話し合い、授業改善を試みる。また、これまでの調査研究 (たとえば、Murphey, Onoda, Takahashi, & Chiba, 2008) にもあるように、教育実習の期間を、合計で2ヶ月という長期に設定し、実習生として授業を行いながら、指導技術を効率よく高めていくような仕組みを作る。(b) 同時に、第二言語習得などの科目を履修させ、その分野での知見を生かした実践的な指導技術を学生に身につけさせる。 このような方策を実現するには、佐野・斎藤・吉田 (2016)にあるように、教員として赴任するまでに十分な指導力を身に付けることを目指し、5年制、6年制の教職課程プログラムを作成する。つまり、 学部レベルの教職課程では、時間的にも内容的にも学生を教員として育てることは難しいため、大学院に教職課程を設置し、そこで時間をかけて学生を指導していくことである。 グローバル市民養成を掲げる私立A大学国際教養学部では、創立当初より英語教職課程を設置し、高い英語力と異文化間コミュニケーション能力を携えた中学校高等学校の英語の教員を輩出しようと日夜努力している。現在教職課程を履修している学生はまだ1、2年生のみである。英語の指導技術の指導に関しては英語科指導法を中心に行っているが、1クラス20名近くおり、また指導法担当の教員の数も限られているため、学生一人ひとりに授業実演を行わせ、きめ細かく指導する時間が限られている。

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