順天堂グローバル教養論集_第二巻_2017年3月(ISSN2424-0001)
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86順天堂グローバル教養論集 第二巻(2017)である。そのため、結論を出すのはためらわれるが、 教師として学生に関わった筆者が、現時点で27年度を振り返り、CLILの英語授業での取り組みに関して、どのような展望と課題が見えるかについて、3点示唆したい。 まず、中間・期末エッセイにおける単語使用の頻度やculture等の主要単語の文中での使われ方の観察を通して、学生の授業内容への理解・関心の深まりが示唆された。今後、個人差はもちろん、単語レベルを超えた内容や、学期中の教師のコメント・評価の関わり等についても分析を進めていきたい。 次に、授業の録音・録画データを年度終了後に観察する中で、担当した学生が目的意識をもって日本語と英語を使い分けていたことが分かった。また、小グループのディスカッションでは、英語の授業以外の体験や知識が、グループでの課題への取り組みや相互理解に十二分に生かされていることも分かった。自己の体験や葛藤なども自由に話し合えるグループの雰囲気は、前・後期でクラス替えのない本プログラムならでは学習体系なのかもしれない。しかしながら、教師の介在が、時に、複雑な問題に関する日本語での意義深い会話を止めてしまうこともある。あるいは、そのような複雑な問題について議論を求められる場面においても、英語から日本語に切り替えないですむ英語力のサポートや学習環境の整備が必要である可能性も考えられる。 最後に、本稿で報告した学生は、1年を通じ、ライティングに関する用語の知識、期待される修辞学的作文構成、ピア・フィードバックの手順等について、思いのほか訓練されていたようであった。このような傾向は、英語ライティング指導を専門に研究を進める教師の影響かもしれない。とはいうものの、小グループ・ディスカッションの書き起こしデータに見られた学生の自己分析や要望は、エッセイの構成について述べていたことが多かった。このような場において、どのように内容自体へ学生の意識を向けていくか、また、現在では書くスキルの習得・作業と内容学習が分断されている様子も見られるので、どのように統合していくか。以上が、教師としての筆者の今後の課題である。付記 本稿は、全国大学英語教育学会 (JACET) 札幌大会での報告を研究ノートとして書き下ろしたものである。また、本稿で紹介する作文・談話データは、平成27年度学長教育改善プロジェクトに採択された「大学における内容重視の英語授業談話分析」の分担者として収集したデータの一部である。研究の機会や助言を常日頃から頂いたプロジェクト代表者である東條弘子先生に感謝の意を表したい。引用文献Arndt, V. (1993).Response to writing: Using feedback to inform the writing process. In M. N. Brock & L. Walters (Eds.),Teaching com-position around the Pacific Rim (pp. 90–116).Clevedon, UK: Multilingual Matters.Coyle, D., Hood, P., & Marsh, D. (2010).CLIL: Content and Lanuage Integrated Learning. Cambridge, UK: Cambridge University Press.

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