皮膚が産生する殺菌物質の作用:
我々の皮膚は常に種々の病原微生物に曝されているが,皮膚の微生物叢の数と構成は生理的な状態で一定保たれている.それは皮膚の物理的なバリアだけではなく,皮膚の上皮細胞が産生する殺菌物質による自然免疫作用である.上皮組織由来殺菌物質の中で, β-defensins (hBD), cathelicidin LL-37, dermcidin, psoriasinなどが注目されている.これらの殺菌物質は主に上皮組織に発現し,数多くの皮膚疾患の病態に関与していることが知られている.我々は,これら殺菌物質の殺菌作用以外の上皮細胞,免疫担当細胞と炎症性細胞に対する影響について検討している. 上記の殺菌物質がそれぞれの特異的な受容体を介して,マスト細胞の遊走,脱顆粒,PGD2,サイトカインやケモカインの産生を誘導することが明らかになった.さらに,これらの殺菌物質が血管透過性を増強し,皮膚の炎症に関与することを確認した.また, 皮膚由来殺菌物質が好中球,単球,樹状細胞,T細胞の走化因子としても作用し,さらに,ケラチノサイトからサイトカインやケモカインの産生を誘導することも明らかにした(図).最近の研究によって,hBDとLL-37がケラチノサイトの遊走と増殖を誘導することから,創傷治癒に関与することが示唆された.興味深いことに,殺菌作用とケラチノサイトに対する作用において, hBDとLL-37の効果は相乗的であった.以上のことから,上皮組織由来殺菌物質は体内で単に殺菌物質として働くだけでなく,幅広い生物活性を生体内で示すことによって感染防御,アレルギー反応,炎症反応と自然免疫に関与する可能性が考えられる.今後,皮膚の自然免疫における殺菌物質の機能と役割の解明が進み,皮膚疾患等の感染症の治療法へ応用されることを期待する.
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