教室紹介

診療

消化器疾患の外来および入院診診療を消化器内科の教室と一緒に行っています。担当する肝胆膵疾患の症例数は7年連続国内トップの実績を持つ肝がんのAblation(ラジオ波治療:RFA & マイクロ波治療:MWA)を筆頭に全国でも有数であり、最新の画像診断法を用いて体系的、合理的に診断し、低侵襲治療を行っています。肝胆膵外科とも連携して診療を進めています。

肝がんAblation/ラジオ波治療(RFA:Radiofrequency ablation)& 新世代マイクロ波治療(MWA:Microwave ablation)

肝癌に対するラジオ波治療(RFA)は、椎名教授が就任した翌2013年から2019年まで7年連続国内トップの治療実績となりました(各年の治療数は「診療実績」に記載)。ちなみに、例年第2位はNTT東日本関東病院、第3位は東京大学ですが、これらの施設では、ラジオ波治療を確立するため前任地東京大学において椎名教授とともに研鑽した医師がラジオ波治療を担当しています。当科には多くの大学病院やがんセンターなどから治療困難な患者を紹介されており、全国各地からだけでなく海外からも治療を求める患者が来院しています。大腸癌や胃癌の肝転移のラジオ波治療も増加し、転移性肝癌でも10年以上の生存が多数存在しています。肝外病変に対してもラジオ波治療を実施するため、「肝細胞癌その他の悪性腫瘍の肝外病変に対するラジオ波治療の有効性と安全性に関する研究」の自主臨床試験実施計画を病院倫理委員会に提出し承認されています。

治療をしている椎名教授

新世代マイクロ波治療も超音波ガイド下に、アンテナ(ラジオ波の電極にあたる)を経皮的に病変に挿入し、熱で腫瘍を壊死させるという、ラジオ波治療に類似した治療です。必要な技術や支援機器もほぼ同様ですが、1回の穿刺、焼灼で、これまでのラジオ波治療よりもより大きな範囲を安定して焼灼できるという強みがあります。これまでのラジオ波治療なら2、3ヶ所を穿刺し焼灼する必要があった病変が、中心部を1回穿刺し焼灼すれば十分ということになる可能性があります。このため、当科では新世代マイクロ波治療の導入にも積極的に関与し、2017年1月13日には本邦で初めて臨床例に新世代マイクロ治療を実施し、現在まで国内最多の症例を治療しています。今後もいくつかの新世代マイクロ波治療機器が導入される予定ですが、いずれも順天堂で最初の臨床例が実施される予定です。

肝がんラジオ波治療・新世代マイクロ波治療の解説と詳細は、「肝臓がんラジオ治療・マイクロ波治療(焼灼術)の解説」をご覧ください。

血管造影/肝動脈化学塞栓術(TACE)& 肝動注化学療法(HAIC)

当教室はアンギオ班と呼ばれていた時期もあることからわかるように、肝動脈化学塞栓術(TACE)や肝動注化学療法(HAIC)など、血管造影を利用したvascular interventionでも伝統があります。現在、国内で最も多くの肝癌患者をフォローアップしていますが、肝癌では経過が長くなると多発再発を起こす症例が多くなります。これらの症例ではTACEやHAICが選択されるため、vascular intervention の症例数はいっそう増加すると考えられます。現在は、New FP療法を考案し、肝動注化学療法(HAIC)等では本邦でトップを争う実績をもつ永松洋明准教授が中心となり、vascular intervention を実施しています。バルーンTACEや球状塞栓物質(ビーズ)を用いたTACE、簡易リザーバーを用いた短期肝動注化学療法なども積極的に実施するようになりました。

治療を行っている永松先生

肝癌の分子標的薬など

肝癌の患者では10年間生存すると25%の症例で肝外転移が出現します。当教室は本邦で最も多くの肝癌患者をフォローしているため、肝外転移のみられる症例も少なくありません。このため、最近では分子標的薬治療にも力を入れており、分子標的薬治療の分野でもトップクラスの症例数となっています。当教室ではAblationと分子標的薬を組み合わせることにより新たな治療戦略を構築しようとしています。

門脈圧亢進症と腹部超音波検査

丸山紀史准教授が中心となり、バルーン下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)、経皮経肝的静脈瘤塞栓術(PTO)、経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術(TIPS)、腹腔-静脈シャント(デンバーシャント)、経頸静脈的肝生検などの診断・治療手技を当教室内で実施できる体制となりました。 また、丸山准教授は腹部超音波も専門であり、造影超音波検査等の超音波精査もレベルアップしました。


今後は、さらに臨床データを蓄積し、介入試験により新しいエビデンスを創出したいと思います。

研究

大学の教室として、新しい医学・医療の創生が期待されています。日常臨床から生まれる疑問に答えるため、臨床研究を企画し、実施し、解析し、その結果を学会に発表し、論文に投稿し、世界に情報発信する必要があります。

当教室では、まず、研究を進める上での基本となる知識や技術を習得し、さらにサイエンスに基づく論理の組み立ての重要性を認識してもらいます。研究テーマは個々人の興味を尊重します。当教室では、① アブレーションに特化したガイドラインの作成、② 超音波、CT、MRI、血管造影などの機器を用いた診断と低侵襲治療に関する研究、②アブレーションの治療評価の客観化に関する研究、③肝悪性腫瘍以外へのアブレーションの適応に関する研究、④新たなアブレーション技術の開発、⑤臨床検体を用いた基礎的研究とトランスレーショナルリサーチ、を推進しています。また、椎名教授は前任地で多数の肝疾患の臨床情報をデータベース化して解析を進め、ランダム化比較試験等の臨床研究も実践してきました。これらの経験を基にさらなる診療・研究のシステムの構築を目指しています。当教室では、これまでも、超音波ガイド下穿刺用薄型プローブの開発、経皮的局所療法に必要な各種器具の作製等を進めてきましたが、今後も、産学連携、医工連携を積極的に推進し、画像診断・治療機器・治療支援技術等の開発に取り組んでいきます。

教育

医学生には、講義だけでなく、BSLでアブレーションや血管造影など、実際の診療を見学して教科書で読んだ知識を確認する場を提供しています。研修医および医局員は、入院診療については、初期研修2年間および後期研修1年目までは先輩医師との2人担当医制をとり、副担当医として患者を受持ちます。医局員は十分な知識と経験を習得した後に週1、2単位の外来診療を担当することになります。また、消化器内科医としての基本手技である上下部内視鏡検査、腹部超音波検査については、順天堂医院や関連施設でトレーニングを受け習得していきます。さらに、当教室では肝胆膵領域の診断と低侵襲治療、血管造影など一段と高度な技術を習得することも可能です。

豊富な症例でより良い研修の場を提供

当教室では、良質の医療を提供し、患者さんの支持を集め、多くの患者さんの診療を行なうことで、より良い臨床研修の場を提供しうると考えています。椎名教授等はこれまで肝癌の低侵襲治療の分野で他の追随を許さない医療を提供し、世界で最も豊富な症例を集積してきました。その結果、医療の現場の活気を生み出し、より良い診療体系の確立につながり、さらに多数の症例が集積するという連鎖によってvirtuous circleを経験してきました。ともに切磋琢磨した人材が、現在、日本の肝癌診療の第一線で数多く活躍しているという事実がその成果の証です。

IVO(RFA&MWA)トレーニングプログラムを実施

ラジオ波治療はこれまで国内1,400施設で実施されており、肝癌に対する標準治療となっています。ただラジオ波治療の技術及び成績は外科手術以上に施設間格差が大きいと言われています。技術の習得には、学会発表を聞いたり論文を読んだりする以上に実際の手技を見学することが有用と考えられます。順天堂ではラジオ波治療(2018年度よりマイクロ波治療も取り入れ)の技術の向上や標準化を目指し、他施設の医師向けにトレーニングプログラムを実施しています。国内の医師向けには2019年11月までに計14回開催し、全国各地から計237名の受講者が集結しています。また、海外の医師向けにも計7回実施し、海外から計111名が参加しています。

国内版は2日間、国際版は4~5日間で、ともにレクチャーとライブデモンストレーション、ケーススタディの3つで構成されています。レクチャーは20〜40分で、「最新のラジオ波治療・マイクロ波治療」、「ラジオ波治療・マイクロ波治療機器概説」など7つの話題を扱います。ライブデモンストレーションでは、前日の夕方にラジオ波治療・マイクロ波治療を実施する症例のプラニングと超音波検査(受講者にも実施してもらい体位変換の重要性などを理解してもらっている)を行ない、翌日にその症例の治療手技を見学します。国内版では3-4症例、国際版では12-15症例のライブデモンストレーションを行ない、人工腹水や人工胸水作成、fusion imaging、造影超音波ガイド下治療などの手法を示しています。ケーススタディでは、ラジオ波治療およびマイクロ波治療が困難と思われる症例を各施設から持ち寄ってもらい、それを全員で検討し議論しています。

IVO(RFA&MWA)トレーニングプログラムの詳細は、「肝がんラジオ波治療・マイクロ波治療の解説」サイトと「医局ブログ」でも、ご覧いただけます。またYouTube画像診断・治療学順天堂では動画も国内版・国際版ともに公開しています。

なお、「ラジオ波焼灼術等の低侵襲治療のための効果的なトレーニングシステムの開発」に対し科学研究費が交付されています。

トレーニングプログラムの参加者数 トレーニングプログラムの参加者数

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ラジオ波治療トレーニングプログラム(講義)ラジオ波治療トレーニングプログラム(ライブデモンストレーション) ラジオ波治療トレーニングプログラム(ライブデモンストレーション)ラジオ波治療トレーニングプログラム(集合写真)

国際学会・国内学会を主催

APASL STC on HCCのポスター

2018年5月には、椎名教授が会長となり、APASL STC Yokohamaをパシフィコ横浜で、”HCC: Strategy in the New Era”をテーマに開催しました。109の招待講演等に加え472の一般演題を集め、37か国から912名という多くの参加者を迎えて終了しましたが、演題数および参加者数は「肝がん」をテーマとした国際学会としてはこれまでで最多のものとなりました。

APASL STC on HCCのポスター2
ACTA2020のポスター

2020年10月には、椎名教授が会長となり、ACTA 2020 TOKYO(7th Asian Conference on Tumor Ablation)を”Lead the World”をテーマに開催します。

”Lead the World”には2つの意味があります。ACTAに相当する組織として米国にはWCIOが、ヨーロッパにはECIOがありますが、アジアは症例数が最多であり、市場規模も最大です。Interventional oncologyの分野で世界をリードしていくのはACTAであるという決意を持とうというのが1つです。

もう1つは、外科的治療、薬物治療、放射線治療が悪性腫瘍の3大治療とされていますが、根治性がありながら侵襲が少ないInterventional oncologyが、今後の癌治療をリードしていく決意を持とうという意味です。
*新型コロナウイルスの感染拡大により中止となりました。

※ポスターにデザインされたAblationの手元は椎名教授の手元を撮影したものです。

ACTA2020のポスター2

2021年8月には「第40回Microwave Surgery 研究会」を主催予定、
2022年5月には「第58回肝癌研究会」を主催する予定です。

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