スタッフ

高宮 信三郎 非常勤講師(前 先任准教授)
Shinzaburo Takamiya, PhD

TEL:03-5802-1043(内線3542)
FAX:03-5800-0476
E-mail:stakamiy(at)juntendo.ac.jp

▶︎プロフィール

経歴

       -1978  大阪大学大学院理学研究科博士課程生物化学専攻修了
1978-1985  順天堂大学医学部寄生虫学講座(現 熱帯医学・寄生虫病学講座)
                 助手
1985-1993  同 講師
1985-1987  米国オレゴン大学分子生物学研究所 Research Associate
1991-1992  JICA専門家/ブラジル国ペルナンブコ免疫病理学センター
1993-2014  順天堂大学医学部寄生虫学講座(現 熱帯医学・寄生虫病学講座)
                 助教授(先任准教授)
2014-         順天堂大学医学部熱帯医学・寄生虫病学講座 非常勤講師

所属学会 

日本寄生虫学会(評議員)
日本臨床寄生虫学会
日本生化学会
日本分子生物学会

▶︎研究の概要

 寄生虫には自由生活期の好気的環境から宿主体内の嫌気的環境に移行し、様々なレベルの低酸素状態(ハイポキシア)を生き延びるものが多く、私たちはこれらの低酸素適応のしくみを解明することを研究目標としています。とくに、エネルギー代謝の中心的オルガネラであるミトコンドリアの呼吸鎖電子伝達系、およびヘモグロビンなどの酸素代謝に関連する酵素系は、多くの寄生虫において独特の進化をとげています。私たちは上記の寄生蠕虫を対象に、それらが宿主体内で生き延びる戦略を分子レベルで解明することにより、その根源的コントロールや治療などの臨床応用に役立てることを目標としています。

▶︎研究テーマ

 研究手法としては生化学的手法を中心に、分子生物学的手法、プロテオーム解析など最新の解析手法を取り入れて研究をすすめている。現在は蠕虫のもう一つのグループの条虫について、マンソン裂頭条虫をモデルとして解析している。

現在以下3つのテーマについて研究を行っている。

1. 回虫はその生活史において好気的呼吸から嫌気的呼吸へ転換する



 哺乳類の好気的代謝ではグルコースは、解糖系(酸素が無い場合、乳酸を生成する)、TCA回路を経て分解されるが、その際に遊離した還元力(電子)は呼吸鎖電子伝達系によって酸素に伝達され、それと共役してATPが合成される。これに対して宿主の腸管という酸素分圧の低い(pO2=0~10 mmHg)環境に生息するブタ回虫の成虫では、グルコースの嫌気的代謝の終末産物として、乳酸ではなくコハク酸を生じるホスホエノールピルビン酸カルボキシカイネース-コハク酸(PEPCK-コハク酸)経路が存在する。本経路の最終段階であるコハク酸の生成にミトコンドリアのフマル酸還元系が関与していることは1980年初頭にすでに知られていたが、フマル酸還元系の分子構築および分子機構に関しては不明であった。

 我々のグループでは、ブタ回虫成虫ミトコンドリアから呼吸鎖膜蛋白の可溶化・分離精製を行い、はじめて回虫から電子伝達複合体I-III、複合体IIの精製に成功した。これらを用いて再構成実験をした結果、フマル酸還元系は複合体I、複合体II、ロドキノン(哺乳類のユビキノンと異なる)から成ること、すなわちNADH由来の電子は複合体Iによってロドキノンに伝達され、さらに複合体II(フマル酸還元酵素)によってフマル酸を還元してコハク酸が生じることが明かとなった。酸素のかわりにフマル酸を最終電子受容体とする、嫌気的フマル酸呼吸(嫌気的ミトコンドリア)の実体がはじめて解き明かされた(Takamiya et al., 1984,1986)。
 これに対して自由生活期である受精卵の発育から感染幼虫形成までは、大気圧下(pO2=760mmHg)で生息する。受精卵をin vitro培養して得られた感染幼虫からミトコンドリアを調製しその呼吸鎖を調べたところ、哺乳類と同様な好気的呼吸鎖を持つことが明らかとなった。すなわち、その組成は複合体I, III, IV, ユビキノン、シトクロムc およびコハク酸脱水素酵素としての複合体IIからなる。
 さらに成虫の複合体IIと幼虫の複合体IIはアイソザイムであることが明らかになり、回虫はその生活史において好気的呼吸から嫌気的呼吸へとドラステックに呼吸鎖成分を転換して生息環境に適応していることが示された(Takamiya et al., 1993)。

2. 回虫シトクロムb5の低酸素適応における生理的意義



 上述したブタ回虫ミトコンドリア呼吸鎖を研究する過程で、我々は新しいタイプのシトクロムb5を本回虫成虫の筋肉から見出し、その分子特性を明らかにするとともに遺伝子クローニングを行った(Yu et al., 1996)。また、本シトクロムはこれまでに知られていない分泌型のタンパクで、回虫成虫の体腔液中に分泌されることを明らかにした。
 この体腔液には酸素に対する親和性が哺乳動物のものと比べて非常に高い(25,000倍)ヘモグロビンが存在することが古くから知られていた。つまり回虫ヘモグロビンはin vivoでは決して酸素を解離することはなく、したがって酸素の運搬や貯蔵としての役割は果たせず、その生理的機能は長い間謎であった。三菱化学との共同による構造生物学的研究から、回虫シトクロムb5は、このヘモグロビンと協働して、低酸素環境に生息する回虫にとって有毒な酸素分子と一酸化窒素を同時に取り除き、酸素や一酸化窒素から由来するラジカルを生じさせないという、回虫の生存上必須な生理機能をもつことが明らかになった(Yokota et al., 2003; Hashimoto et al., 2006; Takamiya et al., 2009)。

3. 肺吸虫は好気的ミトコンドリアと嫌気的ミトコンドリアをそれぞれ異なった組織に持っている



 回虫の研究と並行して、我々は腸管以外の様々な組織に寄生する他の寄生蠕虫のミトコンドリア呼吸鎖の研究を行っている。宿主の肺に虫嚢を形成して寄生する肺吸虫成虫からミトコンドリアを調製し、その呼吸鎖を解析したところ、本吸虫は一つの個体のなかに、好気的呼吸鎖と嫌気的呼吸鎖を併せもつことが明らかになった(Takamiya et al.,1994)。これは両呼吸鎖成分を併せもったひとつのミトコンドリア集団として存在するのか、あるいはそれぞれの呼吸鎖成分を有する二つのミトコンドリア集団が存在するのかという、細胞生物学上非常に興味のある問題を提起する。この問題を解明するために、組織化学的手法や密度勾配遠心法を用いてさらに解析した結果、肺吸虫には体表側に好気的呼吸鎖を有する、サイズの小さなミトコンドリア(好気的ミトコンドリア)が、体内の実質細胞には嫌気的呼吸鎖を有するサイズの大きなミトコンドリア(嫌気的ミトコンドリア)が局在することが明らかになった(Takamiya et al., 2010)。これは前述の問題提起の後者のケースを支持するものであるが、肺の組織血の酸素分圧が40mmHgであることを考慮すると、その中に虫嚢をつくって生息する肺吸虫にとって最もエネルギー効率の良い適応の結果と考えられる。

研究室所在地

〒113-8421
東京都文京区本郷2丁目1番1号 A棟11N
TEL: 03-5802-1043
FAX: 03-5800-0476



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