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研究


 

本研究室の2つの柱

 
細胞生物学・形態学的技術を駆使して各種オルガネラの機能異常がもたらす神経病態・細胞死を解明する。
最先端の形態解析技術を駆使し、細胞内の膜オルガネラの動態を”観る”。
 

概要

 
本講座では、オートファジー・リソゾームタンパク分解系・細胞内物質輸送・細胞死を中心とした基礎医学の知識および形態学・細胞生物学・分子生物学の手技を習得し、各種オルガネラの機能異常がもたらす神経病態の解明を目指しております。
特に、国内最大規模の共同実験施設である形態解析イメージング研究室と連携しながら細胞〜臓器レベルの免疫電顕を含む各種超微形態学的解析を重視することが本研究室の特徴です。これら技術を用いて、必要に応じて神経系以外の各種臓器細胞の形態学的解析も行っております。
 
 

主な研究課題

 
(1) リソソーム病とパーキンソン病に共通に認められる病態の解析
(2) リソソーム膜タンパク質p18の中枢神経系における役割
(3) ゴルジ膜タンパク質GPHRの中枢神経系における役割
(4) 典型的なアポトーシスでは説明できない神経細胞死の実体の解明
(5) 光顕と電顕を繋ぐ解析技術の利用によるオートファジーの分子機構の解析
 
(1) リソソーム病とパーキンソン病に共通に認められる病態の解析
 リソソームには20種類以上のタンパク質分解酵素が存在し、カテプシンと総称されます。これまで、これらカテプシンの生体内での役割を明らかにすべく、遺伝子欠損マウスが作成されてきましたが、ほとんどのマウスは重篤な症状を呈することなく、繁殖可能であります。しかし私たちが解析してきたリソソームアスパラギン酸プロテアーゼであるカテプシンD欠損マウスのみ25日という早期に死亡し、激しい神経変性・網膜変性を呈することが分かりました(Koike et al., 2000, 2003, 2005, 2013; Nakanishi et al., 2001)。詳細な解析の結果、同マウスは神経性セロイドリポフスチン蓄積症(NCL)のモデルであることが判明し、2006年にはヒトでもカテプシンD遺伝子異常が原因の神経変性疾患が発見されております。以上は、カテプシンDが他のタンパク質分解酵素では相補できない必須の役割を生体、特に中枢神経系で持っていることを示唆されており、その役割を明らかにするためにはカテプシンDの内在性の基質とインヒビターを探索することが重要だと考えております。
 NCLは神経細胞を中心にセロイドリポフスチンを含むリソソームが蓄積する常染色体劣性遺伝の神経変性疾患で、現在14型に分類(CLN1-14) されております。発症年齢はタイプごとに異なり、胎児から成人まで広い年齢で発症することが知られております。大部分NCLではミトコンドリア内膜のサブユニットcがリソソームに蓄積することが大きな特徴で、オートファジーによりリソソームに運ばれたミトコンドリアの分解不全が同病発症に関係することが示唆されます。
 ミトコンドリアがオートファジー・リソソーム系によって分解される現象を、特にマイトファジーと呼びます。上記のNCLの原因遺伝子産物としてオルガネラの膜タンパク質が多く発見されておりますが、その多くが機能不明です。一方、パーキンソン病の原因遺伝子産物(Parkin、PINK1など)はマイトファジーの出発点であるミトコンドリアのオートファジーによる認識に関与しており、パーキンソン病とNCLはマイトファジー不全を軸にすることで、一体として捉えることが可能です。実際、リソソーム膜タンパク質ATP13A2の遺伝子異常による神経変性疾患はパーキンソン病とNCLの両方の特徴を有し、パーキンソン病としてはPARK9、NCLとしてはCLN12と称されております。今後、ATP13A2だけでなく依然機能が不明なNCL関連膜タンパク質とマイトファジーの関連を明らかにすることで、より一般的な神経変性疾患を理解するための希少疾患研究を展開いたします。
 
(2) リソソーム膜タンパク質p18の中枢神経系における役割
 p18(LAMTOR1)というタンパク質は、リソソーム膜に局在し、リソソームの成熟・細胞の増殖制御に重要な MAP キナーゼ経路およびmTORC1 経路のリソソーム膜上での活性化に必須であることが知られております。p18の全身でのノックアウトマウスは胎性致死で、エンドソームとリソソームの融合が阻害されることが明らかとなりました(Nada et al.,2009;小池共筆頭著者)。また、in vitroの系では同分子がオートファゴソームとリソソームの融合にも関わることが示唆されております。私たちは、中枢神経系におけるp18の役割について明らかとするため、p18のコンディショナルノックマウスを用いて中枢神経系特異的p18欠損マウスを作成したところ、同マウスが生後14日で死亡することがあきらかとなりました。このマウスを詳細に解析することにより、中枢神経系におけるp18、および MAP キナーゼ/mTORC1 経路の役割について遺伝学的に明らかにしたいと考えております。
 
(3) ゴルジ膜タンパク質GPHRの中枢神経系における役割
 GPHR(Golgi pH regulator)はゴルジ体の(マイルドな)酸性環境の維持に必須なチャネルで、培養細胞におけるGPHRの欠損はゴルジ体断片化などの異常を来します(Maeda et al., 2008)。このようなゴルジ体の断片化は様々な神経変性疾患でも認められるますが、ゴルジ体を特異的に阻害する薬剤などはないため、それが神経変性の原因なのか結果なのか知る術はこれまでありませんでした。GPHRの全身でのノックアウトマウスは胎性致死ですが、GPHRコンディショナルノックアウトマウスを用いて中枢神経系(ニューロン+グリア)特異的欠損マウスを作成したところ生後14日で死亡しました。そこで、このマウスを詳細に解析することにより、中枢神経系におけるゴルジ体の役割について明らかにしたいと考えております。
 
(4) 典型的なアポトーシスでは説明できない神経細胞死の実体の解明
 小児の神経変性疾患のモデルマウスのカテプシンD欠損マウスの中枢神経系・網膜の細胞死、新生仔マウスの低酸素-脳虚血負荷後の海馬の神経細胞死の系におけるCADによらない核酸分解酵素の関与、ネクロプトーシスの関与などを遺伝学的に検討することにより典型的なアポトーシスでは説明できない神経細胞死の実体を明らかにしたいと考えております。
 
(5) 光顕と電顕を繋ぐ解析技術の利用によるオートファジーの分子機構の解析
 私たちは免疫組織化学法、超薄切片を用いた透過電子顕微鏡観察、凍結超薄切片法による免疫電顕法、単層培養細胞の凍結超薄切片法、フリーズレプリカ法、in situ ハイブリダイゼーション法などの高いレベルの形態学的手法に精通しています。小池はこれらの経験を生かして平成23年度より本学の研究基盤センター超微形態研究室室長、26年度より国内医学部で最大規模の施設である形態解析イメージング研究室室長を兼務し、学内外の研究者の形態学的研究の支援を行っております。また、オランダユトレヒト大学医学部Cell Microscopy Centerとの緊密な共同研究を展開しております。
 これまでに習得したこれらの形態解析技術と、生化学・分子生物学・遺伝学の技術を組み合わせ、哺乳類オートファジー分子機構の研究および評価系の開発特にオルガネラ特異的オートファジーの評価系の開発を行います。特に、光顕と電顕を繋ぐ解析技術の開発と利用を行い、光-電子相関顕微鏡法(CLEM)のために蛍光タグおよび化学修飾タグを用いたオートファジー膜形態の解析、加圧凍結-凍結置換による細胞の”ありのまま”の姿の観察に基づくオートファジーの膜の由来に関する超微形態学的研究、収束イオンビーム搭載走査型電子顕微鏡(Focused Ion Beam Scanning Electron Microscope;FIB-SEM)を用いた連続断面観察(block face imaging)によるオートファゴソームの三次元再構築法、樹脂標本において傾向が残存する蛍光タグの利用による共焦点レーザー顕微鏡とFIB-SEMを用いた相関観察によるオートファジー像の動態に着手して参りたいと考えております。本研究を通して得られるであろうpracticalな手法は他の研究プロジェクトにも生かすことができると考えております。
 


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