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研究

基礎研究

臨床研究


 

基礎研究

 
基礎研究の背景
2型糖尿病の患者数は日本で爆発的に増加しています。糖尿病の発症予防、糖尿病患者の予後改善のためには、糖尿病の病態を解明し、その病態の根本に根ざした治療が必要です。そこで、私たちは、糖尿病の病態と治療法に関わる研究に取り組んでいます。

研究のテーマ
現在下記のようなプロジェクトを行なっています。プロジェクトのメンバーは固定せず、各研究者が得意とする分野に積極的に参加しながら、密接にコミュニケーションをとることで研究が円滑に進むように努めています。

1)膵β細胞容積の調節機構の解明と膵β細胞容積を増加させる新規治療法の確立
2型糖尿病における致命的な欠陥は膵β細胞容積が徐々に低下していくことです。2型糖尿病で認められる膵β細胞容積低下を防ぐことができえれば、血糖コントロールはより容易となり、合併症を効果的に予防できます。具体的研究内容を以下に示します。
a) 膵β細胞におけるオートファジー機構
   オートファジーとはタンパク分解の機構のひとつですが、現在までに、私たちは、順天堂大学生化学第一、東京都立臨床研との共同研究で、このオートファジーが膵β細胞で適切に働くことが、膵β細胞容積増加に必須であることを解明しました。

[関連リンク]
 http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131%2808%2900250-7
 http://www.jci.org/articles/view/69866

   今後、膵β細胞では、どのような刺激がオートファジーを調節しているのか、どのような機構を介して膵β細胞容積を調節しているのかなどを解明していこうとしています。この研究の一部は、文部科学省、科学研究費補助金、JST-CRESTから補助金をいただき、研究を進めています。

[関連リンク]
 http://www.proteolysis.jp/autophagy/organization/koubo/index.html
 http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/project/37/37_05.html/

b) 妊娠時の膵β細胞容積増加機構の解明
   妊娠期には膵β細胞が最も盛んに増殖し、その容積を増加させます。では、なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか?我たちはカリフォルニア大学サンフランシスコ校と弘前大学の病理学教室との共同研究で、この現象の一端の解明に成功しました。

[関連リンク]
 http://www.nature.com/nm/journal/v16/n7/abs/nm.2173.html

   私達が見つけたのは、まず妊娠期に増加するホルモン、プロラクチンが膵β細胞のプロラクチン受容体に結合し、その作用で膵β細胞のセロトニン合成酵素の遺伝子発現が増加し、その結果、膵β細胞でセロトニンが増加、このセロトニンはインスリンと同時に分泌され、オートクラインあるいは、パラクライン的にセロトニン2B受容体に作用し、膵β細胞容積を増加させるというものでした。
   今後、さらに詳細な作用機序を解明していく予定です。

c) インクレチン製剤をはじめとする膵β細胞容積調節に関与しうる因子の研究
   インクレチン製剤が糖尿病臨床の場に登場してきました。インクレチン製剤の魅力は2型糖尿病で低下している膵β細胞容積を増加させる可能性があることです。我々は、このメカニズムに関して検討をしております。また、膵β細胞容積増加作用があると推定される他の薬剤に関しても、その効果とともに、機序の解明を行っております。

2)亜鉛のながれによる糖代謝制御の研究
   亜鉛は必須微量元素のひとつであり、その欠乏は成長障害、重篤な皮膚炎や摂食障害等さまざまな病態を引き起こすことが知られています。また、亜鉛イオンは細胞内のオルガネラ間や細胞間を移動することにより様々な細胞応答を引き起こすことが最近報告され、我々はこれを「亜鉛のながれ」とよび注目しています。この亜鉛のながれの原動力となっているのが亜鉛トランスポーターと呼ばれる分子群です。数年前に2型糖尿病感受性遺伝子としてSLC30A8遺伝子が同定されましたが、これは膵β細胞のインスリン分泌顆粒内に亜鉛イオンを汲み入れる亜鉛トランスポーターZnT8をコードしています。われわれは最近、SLC30A8遺伝子欠損マウスを解析することにより、インスリン分泌顆粒内に蓄えられてインスリンと共分泌される亜鉛イオンが、β細胞からの過剰なインスリン分泌を抑制するとともに、肝臓においてインスリン分解を抑制する作用があることを発見しました(Tamaki M. et al. J Clin Invest 123, 4513-4524, 2003)。この亜鉛イオンが取り持つ膵臓と肝臓の臓器間コミュニケーションのおかげで、食後に肝臓で過剰にインスリンが分解されることなく、全身にインスリンをゆきわたらせることが可能になります。この他にも生活習慣病の病態形成に、亜鉛のながれが関与する可能性を示唆する知見を得ており、現在精力的に研究を行なっています。

[関連リンク]
 http://www.jci.org/articles/view/68807

3)糖尿病における動脈硬化の発症進展の解明
   多数の疫学研究の結果、糖尿病が心血管イベントのリスクファクターであることが明らかになってきました。しかし、糖尿病状態で出現するどのような因子が、どれくらいの重みで動脈硬化を進展させるのかは、未だ明らかではありません。2003年、我々は顕微鏡およびコンピューターシステムの進歩に助けられ、New En face Method for Optimal Observation of endothelial surcase (NEMOes)を確立し、ラットおよびマウスにおけるin vivoでの単球の内皮への接着を定量評価することに成功しました(Azuma K. et al. Biochem Biophys Res Commun 309, 384-390, 2003)。このNEMOesを応用することにより、臨床における糖尿病と動脈硬化症進展との関係に関する疑問を解決し、その結果を患者さんの治療に役立てることを目標にして検討を行っています。
(a) 血糖変動の動脈硬化への影響
   当研究室では、持続性高血糖に比較して繰り返す食後高血糖が、動脈硬化を促進させる因子であることを見出すとともに、低血糖もまた、動脈硬化を促進させることを明らかにしてきました。今後、このような血糖変動が動脈硬化を促進させる機序を詳細に検討していく予定です。

[関連リンク]
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24684300

(b) 血管平滑筋細胞におけるオートファジーの役割
   タンパク分解機構のひとつであるオートファジーは、血管平滑筋細胞の増殖やアポートシスの制御に関わっていることを確認しています。今後は、糖尿病による動脈硬化の発症進展過程における血管平滑筋細胞のオートファジーの役割やその作用機序を検討していく予定です。
(c) 各種治療薬による動脈硬化への介入
   インクレチン関連薬などを始めとした治療薬を用いて、その効果や作用機序を検討しています。
4)肝、骨格筋のインスリン抵抗性のメカニズム探索と運動の効果に関する研究
   糖尿病状態で肝および、骨格筋のインスリン抵抗性が出現し、運動により主に骨格筋のインスリン抵抗性が改善することがよく知られております。本研究室では、それぞれの臓器におけるインスリン抵抗性のメカニズムを検討するために、ヒト・動物・細胞を対象とした研究を組み合わせて、研究を進めています。
a) 骨格筋のインスリン抵抗性のメカニズム
   臨床研究と共に、基礎研究においても異所性脂肪とも言われている骨格筋細胞内脂質(脂肪筋)に着目してインスリン抵抗性のメカニズム探索を進めています。ヒトの研究から、短期間の運動不足(physical inactivity)や高脂肪食が脂肪筋を増加させて、インスリン抵抗性を引き起こす可能性が明らかとなりつつあります。この現象は、東アジア人で非肥満でも糖尿病の患者が多いことを説明しうる病態となっている可能性がありますが、そのメカニズムについて、physical inactivityの動物モデルを作成して、脂肪筋を増加させるメカニズムなどについて探求しています。
    また、興味深いことに、脂肪筋は長距離ランナーにおいても肥満者並みに増加しているのにもかかわらず、インスリン感受性は高く保たれています。この現象は「アスリートパラドックス」と言われており、このメカニズムを明らかとすれば、脂肪筋が増加してもインスリン抵抗性にならないような治療法に結び付く可能性があります。そこで、スポーツ健康科学部との共同研究により、健常者や長距離ランナーの骨格筋サンプルを採取し、アスリートパラドックスのメカニズムの解明を進め、脂肪酸輸送担体の違いがそのメカニズムの一部である可能性が明らかとなってきました(Kawaguchi M. et al. J Clin Endocrinol Metab. 99:3343-52. 2014)。現在、マイクロアレイによる解析からアスリートパラドックスの原因となる遺伝子の機能解析をさらに進めております。

[関連リンク]
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24937540

b) 肝インスリン抵抗性のメカニズム
   肝インスリン抵抗性は空腹時血糖値及び食後高血糖を規定する重要な因子と考えられています。本研究室では、肝臓における炎症の下流で活性化する転写因子や酸化ストレスが肝インスリン抵抗性のメカニズムの一部である可能性を明らかとしました(Tamura Y et al. Diabetologia 50: 131-141, 2007, Kumashiro N et al. Diabetes 57: 2083-2091, 2008)。
5)糖尿病再生医療に向けた膵β細胞発生・分化機構の解明
    糖尿病の根治を可能とするためには、血糖値を正常範囲に制御するのに充分なだけのβ細胞数を確保する必要があり、これを達成するための治療法として、膵β細胞再生療法が注目されています。その実現に向けた一つの手掛かりは、膵臓の発生・分化過程を詳細に解析し、それを再現することにあります。我々の研究室では膵内分泌前駆細胞や新生β細胞を単離するための遺伝子改変マウスを用いて、膵β細胞がどのようにしていつ、どのような機構で生まれてくるのかを解析しています(Miyatsuka T et al. Diabetes 63: 3388-3393, 2014)。そして得られた知見をもとに組織幹細胞やES細胞/iPS細胞からβ細胞を作製、糖尿病再生医療に応用することを目標に研究を進めています。


[関連リンク]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24834978

 
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