第3回市民公開講座 質疑応答:講演1

講演1:がんって何?

がん細胞が何故発生するのかを教えて下さい(例えば食物によって等)。

がん細胞は遺伝子異常(突然変異)により発生します。その遺伝子異常の原因は完全には解っていませんが、胃ではピロリ菌感染による炎症や肺ではタバコによる刺激が、発がんに作用(突然変異を誘発)していると考えられています。

大腸がんの時の初期の自覚症状を教えて下さい。

初期のがんや前がん病変では軽度の出血を伴うことはしばしばありますので、その場合は便の潜血検査で陽性となることはありますが、通常は初期には自覚症状はありません。

子宮がん、乳がんの手術後に上肢・下肢が腫れるのは何故ですか。

がんがリンパ管や血管を侵してそれらを閉塞させるため、リンパ液や血液の流れが妨げられると、周囲組織に液体成分がしみ出ることが腫れの原因です。

若い人には「がん」が少なく、高齢者に発生頻度が増えるのは何故ですか。

遺伝子異常(突然変異)ががんの発生原因ですが、その遺伝子異常は高齢者でなくとも多少は起こっています。しかし、一個のがん細胞が発生しても目に見えるようながんに成長する前に、自身の免疫力や修復機構によりがん細胞は排除されています。高齢者になるとがん細胞が発生する頻度も高くなりますが、それを排除する力も弱くなるため、目に見えるがんへと成長しやすいと考えられます。

全ての「がん」が遺伝子の突然変異で発生するという事は、防ぎ様がないという事でしょうか。あれば、予防方法や日常生活での注意点などを教えて下さい。

完全に防ぐことは難しいと思われますが、突然変異を引き起こす原因を取り除くことで、がん発生の危険率を下げることは可能です。たとえば、胃ではピロリ菌を除菌するとか、肺ではタバコをすわないということです。

大腸にできたポリープが癌化する可能性と対策について教えて下さい。

ポリープには腫瘍性と非腫瘍性のものがありますが、腫瘍性(腺腫)は大きいほどがん化する確率が高く、1cm以上のものでは10%以上はがんを含んでいます。非腫瘍性のものはあまりがんにはなりませんが、大きなものや数十個も多発するものは注意が必要です。がん化を防ぐことはできませんが、ポリープがんでは小さいうちは早期がんであることが多いので、早期のうちに治療すれば完治できる可能性が高いです。

「がん」の進行は、年齢によって差があるのですか。若い人の方が進行が早いと言われているのは、本当ですか。

たとえば胃がんでは30歳以下場合発生頻度は少ないですがで、がん細胞がばらばらのもの(低分化腺がん)がほとんどでありこれらは進行が早く、80歳以上の高齢者の場合では腺管の形をとるもの(高分化腺がん)が多くこれらは進行が比較的遅いので、まとめてみるとそのような傾向があるように見えますが、がんの進行速度はどのような組織であるかが重要です。

がん細胞が目に見える状態になるまでと腫瘍が1㎝・2㎝になるには、どれ位の年数がかかるのでしょうか。

一個のがん細胞がいつ発生したかがわからないということと、がん細胞も細胞の種類で増殖速度が違いますので、正確には解りません。答えになるかどうかわかりませんが、大腸癌ではポリープがんでは1cm~2cmでは早期がんであることが多く、粘膜内に止まったがんであれば5年くらいの間は早期がんのままであると推測されていますが、早期がんでも粘膜より深く浸潤した後は進行癌になるのは早く1~2年くらいと推測されています。

結合組織とは、具体的にどのようなものでしょうか。また、「がん」ができないのは何故でしょうか。(結合織にがんが出来ないわけではないという事から説明して下さい)

皮膚などの上皮細胞と筋肉などの非上皮細胞の間をとりもつ組織で、それらの維持と機能を果たすために必要な血管やリンパ管や支えとなる線維組織などから構成されます。これらの結合組織の構成成分からも血管肉腫や線維肉腫などがんも発生しますが、その頻度は胃がんや肺がんなどに比べるとかなり低いです。

脈管浸潤とリンパ管浸潤とあったが、どちらの方が予後が悪いのか。その理由も含めて知りたいです。また、もし「がん」のtypeで異なるなら代表的なものだけで良いので詳しく教えて下さい。

脈管浸潤(静脈浸潤のことでしょうか?)とリンパ管浸潤ともにこれらのみでは予後に影響しませんが、静脈浸潤があると肝臓転移の危険性が高くなり肝臓に転移すると予後が悪く、リンパ管浸潤があるとリンパ節に転移する危険性が高くなりリンパ節に転移すると予後が悪くなります。そして、最終的な予後は、総合的な進行度を示す病気分類により判定します。
なお、胃がんでは腺管構造を有するもの(分化型腺がん)が静脈に浸潤する頻度が高く、腺管を作らずばらばらになりやすいもの(低分化型腺がん)はリンパ管に浸潤する頻度が高い傾向があります。

「がん」の病因には、遺伝因子と環境因子があると思いますが、具体的に環境因子がどのように遺伝子の突然変異を引き起こすのでしょうか。

たとえば胃がんではピロリ菌、肝臓がんでは肝炎ウイルス、子宮がんではパピローマウイルス、肺がんではタバコなどの環境因子は発癌に関連することが解っていますが、それらによる炎症や化学物質の作用により遺伝子が傷つけられることで遺伝子異常が起こりやすくなると考えられていますが、その詳細は不明な部分も多いです。

遺伝子検査によって「がん」になる人、そうでない人がわかると以前テレビで見ました。家族にがんを患った人がいなければあまり心配する必要はないのでしょうか。

家族性大腸腺腫症などいくつかの遺伝性疾患では高頻度でがんが発生することが解っています。また、家族や親戚にがんを患った人が多い場合はがんの発生する危険が高いことは知られていますが、家族にがんを患った人がいなくてもがんは発生しないとは限りません。

大腸がんの発生から発育進展と遺伝子変化に書かれているAPC、K-ras、p53、DCCについて詳しく教えて下さい。

APCは大腸の良性腫瘍である腺腫の発生、K-rasは腺腫の進行(増大やがん化)に作用する遺伝子です。p53はもともと正常ではがん抑制遺伝子ですが、これの変異により正常の働きが失われるとがん化に作用します。DCCというがん抑制遺伝子の変異によりさらに進行していくとされています。ただし、これらはこれまでに解ってきたがん化におけるとくに重要な遺伝子でありますが、がんの発生から進行までに作用する遺伝子異常はこれらがすべてではありません。