第3回市民公開講座 質疑応答:講演3・4

講演3:肺がんの診断と内科的治療の最前線-順天堂の取り組み-
講演4:肺がん外科治療の現状と将来

肺がんが初期で見つかったのに亡くなった人がいる。とてもショックです。初期の肺がんの死亡率はどこで決まるのでしょうか?

早期と初期は異なります。早期がんは治療を行えば殆ど治るがんといえますが、初期のがんは再発することがあります。肺がんの初期とは通常IまたはII期相当ですが、20%程度の再発率があります。

どうして肺がんが増えているのですか?

肺がんが増えている原因は喫煙の影響といえます。通常禁煙がひろまるとその約30年後に肺がんが減ってくるといわれています。つまりもう少しで減ってくるのではないでしょうか。現にアメリカやイギリスでは減少しています。一方で心配なのは喫煙に関係しない肺がんが増えていることです。腺がんというタイプの肺がんは喫煙と関係が薄いのですが、増えています。その原因は不明です。

どうして高齢者に増えているのですか?

がんが発生するためには、多段階発がんというメカニズムが必要です。これは遺伝子の一つ一つに傷がついていくことでがんが発生するというものです。ご高齢の方は遺伝子に傷がつく機会が多くなるといえるのでがんが多いのです。

人間ドックで肺がんの検索を行う場合、どんな検査がBestでしょうか?

肺がんの検診は胸部CTがベストです。そのほかに喀痰細胞診、胸部単純写真などがありますが、CTが一番です。PETの検診における役割はまだ一定の見解がありません。

大気汚染は、喘息の悪化要因のようです。肺がんの原因にもなるでしょうか。北海道、長野県、沖縄等空気のきれいな所では、発生頻度が少ないのでしょうか?

大気汚染は肺がんの原因になります。しかしたばこの影響がより強いのが現状です。ちなみに沖縄県はたばこと関係の深い扁平上皮がんが腺がんよりも多い日本でも珍しい県です。

大腸がんはアスピリンで予防できるようですが、肺がんもアスピリンで予防できますか?

肺がんでは予防に関する研究でうまくいった報告はないようです。今後の研究を期待したいところです。

肺がんが骨・頭・肝・副腎に転移が多いのは何故でしょうか?

肺がんは神経に転移するのを好みます。脳は神経ですし、副腎も実は神経です。骨や肝臓にも転移します。

肺がんと食事との関係をご説明いただけますか?

肺がんと食事との関係はあまり強くありません。胃がんや食道がんなどの消化管のがんに比べてその影響は少ないのです。

肺がんも含め、がんを早期に発見するためにはどんな方法が良いでしょうか?

検診を行うことが重要です。肺がんであれば胸部CT、大腸がんは便潜血、大腸内視鏡、胃がんは胃内視鏡、前立腺がんはPSA測定、乳がんはマンモグラフィーなどが良いと思います。

「肺がんの治療方針」のフローは大きな発見、意見と思う。この見解を学会等で発表する予定はあるのでしょうか?

あります。しかし、科学的な論証を重ねて慎重に行うことが重要と考えています。なぜならば現時点で15%程度しか治らない肺がんを不適切な治療を行うことで、治る方に不十分な治療を適応することはさけなければならないからです。

副煙による「がん」になりやすさがあるのでしょうか?

喫煙に対する生体反応は個人差があります。研究レベルでは、タバコに含まれる有毒な物質を発がん性のあるより毒性の強い物質に変換する酵素、あるいは解毒する酵素の量が個人によって異なることが示され、それが喫煙による発がんに大きく影響を与えるとの報告もあります。ただし科学的に検証するのは困難です。

肺がんの転移予防として、頭部に放射線をかけるという文献を見たことがありますが、そのような治療予防はあるのでしょうか?

小細胞肺がんの場合胸部の治療がうまくいった場合にそのような治療方針をとります。

国をあげて肺がんを減らすための方法は、市民講座、先生方、口コミ、インターネット、患者、国家、TV、CMなどがありますが、他にどんな方法があるでしょうか?

最近ではインターネットがよいのではないでしょうか。また、最近では学会活動の一環として積極的に市民講座を通じて禁煙のキャンペーンを行なっております。さらに学校において、喫煙による健康被害について早い段階から教育を繰り返しすることが大切だと思います。

EGFRに選択的ならば副作用は出ないように思えるのですが、イレッサと肺障害の因果関係は、はっきりしているのでしょうか?

動物実験やヒトでの臨床研究からイレッサと肺障害の因果関係ははっきりとしているといえます。また、様々な臨床研究から、喫煙者、もともと肺線維症のある方、全身状態がよろしくない方は肺障害がおき易いことがわかっています。

小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺小細胞肺がんについて詳しく教えて下さい。

小細胞肺がんは肺がんの20%を占めます。化学療法と放射線治療に反応しやすく、滅多に手術は適応されません。非小細胞肺がんは肺がんの80%ですが、逆に手術でとれる場合には積極的に手術を行います。

病期について詳しく教えて下さい。

"病期はIからIV期に分かれます。腫瘍の因子Tとリンパ節の因子N、そして転移の因子Mで決めます。MがあるとM1と表現してIV期という意味になります。IからIII期は以下のTとNの組み合わせとなります。

表1 病期
 
N0
N1
N2
N3
T1
IA IIA IIIA IIIB
T2
IB IIB IIIA IIIB
T3
IIB IIIA IIIA IIIB
T4
IIIB IIIB IIIB IIIB
それぞれの治る確立は以下の通りです。
表2 非小細胞肺癌切除6,644例の
臨床病期及び病理病期別5年生存割合7
 
臨床病期
病理病期
IA
72.0% 79.5%
IB
49.9% 60.1%
IIA
48.7% 59.9%
IIB
40.6% 42.2%
IIIA
35.9% 29.8%
IIIB
28.0% 19.3%
IV
20.8% 20.0%
"

インフォームド・コンセントについて、担当医師へ過去手術の成功率を聞く事はできますか?

もちろんできます。

分子標的治療薬による増殖作用のブロックがあるとの事ですが、この種の薬(がん細胞の細胞膜に作用するもの)でがん細胞を壊す(殺す)ものはすでに改発されているのでしょうか?

日本において肺がんで使用可能な分子標的治療薬はイレッサとタルセバの2種類です。いずれも細胞増殖を抑えますが、腫瘍も縮小するので、がん細胞も壊す効果もあると考えられています。

子供にも肺がんはあるのですか?

子供の肺がんはとても少ないです。20歳代になると特殊な肺がんが発生することがあります。