講演1:がんは遺伝するか?

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講演2:リンパ浮腫の予防とケア

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質疑応答

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右胸の乳房を全摘しました。手術後10年近くたった頃から右腕がむくんできています。効果的なドレナージ法を教えて下さい。
右腕が浮腫んでいる場合は、左のわきの下と右脚の付け根に滞っているリンパ液を流すことが必要です。まずは、肩回しをしてから、深呼吸をしましょう。ドレナージの基本はさするのではなく、手の平に皮膚を密着させて、皮膚をずらすように回すことが重要です。
<前処置>
(1) 左のわきの下に右手をあて、20回程度円を描くようにまわしましょう。
(2) 左わきの下から右わきの下まで3等分します。
① 左わきの下に一番近い部分を、円を描くようにマッサージし、左わきの下に向かって流します。
② 左わきの下から右わきの下まで3等分した真ん中の部分を、円を描くようにマッサージします。
③ 左わきの下から右わきの下まで3等分した右わきの下の近くの部分を、円を描くようにマッサージします。
(3) 右足のつけ根に両手をあてて、円を描くように20回まわします。
(4) 右足のつけ根から右わきの下までを5等分し、右足の付け根に一番近い部分から円を描くようにマッサージを行い、右わきの下ところから始め、右足のつけ根に向かって流す。
<右腕のマッサージ>
(1) 右肩を肩先にむけて、円を描くようにマッサージする。
(2) 右肩から肘までの外側を2等分し、右肩の近くの部分から肩先にむかって円を描くようにマッサージする。
(3) 右肘に手をあて、円を描くようにマッサージする。
(4) 右肘から手首までを2等分し、右肘の部分からマッサージする。
(5) 手の甲、指先を上に向かってマッサージする。手のひらは手の甲にむけて行う。
<後処置>
(1) 指先までマッサージしたら、今まできた道をもどる。
(2) 左わきの下まで3~4回なでる。
(3) 右わきの下から右足の付け根にむかって、来た道を戻るように3~4回なでる。
サウナ浴の際、水に入ることは可能でしょうか。また、長時間入浴は、避けるようにとのお話でしたが、どれくらいのことをさすのでしょうか。
サウナ浴の際、水に入ることは可能ですが、急激な温度の変化によって、術側のリンパ液がうっ滞し、赤く腫れ上がったりしやすくなります。熱いお湯(42度以上)の浴槽で長く入ることは避けた方がいいでしょう。お風呂に入る時には、体や髪の毛を洗ったり、浴槽に入って温まったりして、リラックスして入浴しましょう。
乳がんの手術後は、必ずリンパ浮腫がおこるとするとどの程度のむくみになるものでしょうか。手術の内容で個人差はありますか。またどの位の期間むくみが続くでしょうか。一度手術すると何年間もリンパ浮腫は考えていかなくてはならないのでしょうか。
本人が気づかない程度の症状の軽いものも含めると、50%を超えるといわれます(日本乳癌学会班研究「リンパ浮腫の実態調査と治療・予防ガイドラインの作成」最終報告、2008年)。どの位の期間浮腫が続くかということは、個人差があり、一概には言えませんが、リンパ浮腫に対するケアを早く始めることで、むくみによる重だるさなどの症状を改善したり、リンパ浮腫の悪化を防いだりすることができるでしょう。腕がむくんだと感じたら、できるだけ早く担当医や医療者へ相談することが重要です。乳がんの手術後は、リンパ浮腫にならないようにずっと気をつけていくことが大切です。
ヒートテックのブラ付きのタイプは着用しても大丈夫でしょうか。
しめつけるようなタイプでなければ、着用して大丈夫です。
子宮体がんの手術をしました。肩こりの針灸治療やマッサージはやめたほうがよいでしょうか。
肩こりが凝った時にマッサージをしても大丈夫です。子宮体がんの手術をした場合は、鍼灸治療においては、下半身の鍼灸は避けた方が望ましいです。
乳がんの手術でセンチネルリンパ節生検を受けました。どの程度、リンパ浮腫になりやすいですか。どの部分からむくみやすいですか。
腋窩リンパ節郭清を受けた患者の約24~28%、センチネルリンパ節生検を受けた患者の3~5%に発症すると言われています。
むくみを発症しやすい部位として、患側の上腕や前腕の内側や、患側の脇の下の背中側で初期に浮腫が発症しやすいといわれています。
採血・注射は術側の腕を避けていますが、血圧の測定も手術した側の腕で行わない方がよいでしょうか。
血圧測定も手術をした腕で行うと、リンパ浮腫を誘発しやすくなりますので、術側とは反対の腕で血圧測定を行いましょう。
冬場は、肌をだしてのマッサージは寒いです。どのような格好でマッサージをした方がいいですか。
皮膚に手のひらを密着させ、やさしく皮膚を動かすようにするのがリンパドレナージのポイントです。素肌に直接手のひらがあたるようにするので、基本的には、その部分に衣類をつけずに行うほうが効果的といえます。しかし、身体が冷えてしまっては困ります。やわらかい天然素材の身体にやさしくフィットするキャミソールやTシャツなどがよいでしょう。
入浴中のマッサージはさけた方がよいでしょうか。
入浴中は血行が促進され、体液循環量が多くなるため、入浴中マッサージを行うとリンパ浮腫が悪化します。そのため、お風呂から出て、ほてりが冷めてからマッサージを行いましょう。
セルフリンパドレナージはどこで学べますか。
リンパ浮腫外来でセルフリンパドレナージの方法を習得することができます。また、インターネットでセルフリンパドレナージの方法を知ることができます。
リンパの会というリンパ浮腫の体験者がリンパ浮腫と共存して前向きに生きていけるように最新のリンパ浮腫関連の情報収集と提供などのために活動している会があり、年2回~3回リンパドレナージの講習会を開催しています。講習会は関東に限らず全国で開催していますので、お近くの講習会に参加することもできるかと思います。「乳がん・子宮がん・卵巣がん術後のリンパ浮腫を自分でケアする」の書籍は、DVDが付いていますので、ご覧になり、学習されることをおすすめいたします。
リンパ浮腫についてよく分かる本などはないですか(マッサージの流し方等が知りたいです)。
2つの本を紹介します。

① リンパ浮腫治療のセルフケア文光堂
② 乳がん・子宮がん・卵巣がん術後のリンパ浮腫を自分でケアする主婦の友社
日常生活上の留意点を教えて下さい。
【皮膚に傷をつけないために日常生活のコツ】
むくみのある部分の皮膚はとてもデリケートになっていて、小さなひっかき傷や虫さされをきっかけに、蜂窩織炎などの炎症が起きることがあります。炎症防止には、まず皮膚を傷つけないことが大切です。
深爪を避け、甘皮を切らないようにする。
きつすぎる指輪や腕時計は避ける。(腕の場合)
きつい靴やハイヒールは避け、サイズの合った歩きやすい靴を選び、靴ずれを防ぐ。
衣類はゆったりめでやわらかい素材のものを選ぶ。
長時間の温泉浴やサウナは避ける。
日焼けをしたり、しもやけにならないように気をつける。
【無理をしないための日常生活のコツ】
重いものはできるだけ小分けにして運ぶ
飛行機、長時間の車や電車に乗る場合は、できるだけ脚を高くし、ときどき膝関節や足関節の曲げ伸ばしを行うことで、長時間も同じ姿勢をとることは避けましょう。
正座はできるだけ避ける。
夜寝るときは、むくみのある腕や脚に負担のかからない姿勢を工夫する。
先日、婦人科の看護師さんにマッサージをしすぎて腫れてきた方がいたので「マッサージはしなくていい」と言われましたが、しなくていいのでしょうか。
強い圧でマッサージをしすぎて、リンパ浮腫が増強してしまうことがあります。それは、リンパ管を圧排し、炎症を起こし、腕や脚が腫れてしまうことがありますので、リンパ液を排液する方向を考え、やさしい圧でマッサージを行うことが重要です。
圧迫療法が何故効果があるのかイメージできません。実際、ゆったりした靴や洋服、締め付けない下着を推奨しており、圧迫するとかえってむくむように思われます。圧迫療法は弾性包帯や着衣なので、ポンプ効果ということでしょうか。
圧迫療法を行う目的は2つあります。
まず水分が組織のすき間にたまらないようにする効果とリンパ液の逆流を防ぐ効果があります。そのため、リンパ浮腫予防に効果があるといわれています。
日本の医療は、今まで手術後のリンパ浮腫については、あまりケアがされてこなかったようですが、現在、医療リンパドレナージの資格や施術の実現が流行っているのでしょうか。手術前の事前説明(医師が患者に手術の説明をする)の際に、この手術をするとリンパを損傷する恐れ、そしてその後にリンパ浮腫を発症するリスクがあることをきちんと説明することは義務化というか必ず説明されているのでしょうか。
手術前の事前説明の際に、手術後起こり得る合併症やリンパ浮腫の発症するリスクがあることをきちんと説明しています。
左乳房全摘出(リンパ節転移なし、非浸潤がん、センチネルリンパ節)から6年がたちました。リュックを背負って毎年春ピンクリボンウォーク(5km)に参加しております。ゴールをすると必ずといっていいほど左腕にむくみを感じ、何ともいえない重だるさを感じます(左手(患測)グーパーもしづらいです)。ウォークに参加をする場合、留意点を教えて下さい。
長時間手を振ってウォーキングをしていると、腕が浮腫むという方が多いです。そのため、ウォーキング中、時々手を挙げるような動作をすることで上肢の浮腫の悪化を防ぐことができます。
健美操(東洋医学から生まれた健康体操)は乳がん患者にすれば有効でしょうか。(術後取り組んできたのですが・・・)
リンパ液の流れは、筋ポンプの働きによって促されます。そのため、有酸素運動は筋ポンプの作用を刺激し、リンパ液の流れを促すことにつながります。そのため、リンパ浮腫の予防や改善の効果が期待できます。
自分ではなんとなくむくんでいるような気がしますが、リンパ浮腫外来はリンパ浮腫の症状が出てからでないと受診できませんか。
浮腫んでいるのではないかとご心配になるお気持ちをお察しいたします。現時点では当院で手術を受けられた方にかぎり、すでにリンパ浮腫の症状がある場合だけでなく、リンパ浮腫についての相談やリンパ浮腫予防を目的として外来指導を行っております。ご心配な場合には是非ご相談下さい。なお、リンパ浮腫外来は、予約制です。受診を希望される方は、まず担当医に相談した上でリンパ浮腫外来の予約をお申込み下さい。