第12回市民公開講座 質疑応答:講演1

講演1:肝がん予防のための医療の進歩

C型肝炎・B型肝炎は伝染性がありますか。また、人からうつされるということはありますか。

B型・C型肝炎はいずれも人から人へ伝染しますが、風邪や胃腸炎のように容易に周囲へ伝染するようなものではありません。B型・C型肝炎の感染はいずれも血液・体液を介したもので、原因として代表的なものは輸血、性交渉、針刺し事故、器具の消毒が不充分なピアスの穴あけや入れ墨、注射の回し打ち(麻薬の回し打ちや昔のワクチン接種など)などがあります。また、B型肝炎では出生時に産道を通るとき母親から赤ちゃんへ感染することが知られています(C型肝炎でもまれにあります)。一般的にB型肝炎の方がC型肝炎より伝染しやすいですが、血液内のウイルス量に左右されますし、B型肝炎はワクチン接種によって予防することが可能です。握手などの接触、同じ皿のものを食べる、入浴などでうつることはありません。伝染を防ぐため、B型・C型肝炎患者の方は自分が怪我をしたときや歯医者にかかるときなど出血を伴う何らかの処置をしてもらう時には、周囲の方に感染させないように手袋をしてもらったり事前に注意しておくなど気を配る必要があります。また、周囲の人は感染を恐れるあまりに不当に肝炎患者に不快な思いをさせるような言動をしないようにしましょう。

3ヶ月に1度採血に依る健康診断を受けていますが、採血注射針からうつることはありますか。

現在の医療機関で使用されている注射針は使い捨てのもの(ディスポーザブル)ですので、採血注射針から伝染することはありません。

肝がんを早期に発見するには、どのような検査を受ければ良いのでしょうか。

肝がんの早期発見には超音波検査、CT、MRIなどの画像検査が重要です。なかでも超音波検査は身体への負担やコストの面で利点が大きいためよく用いられますが、横隔膜直下などの見えない部分、見づらい部分がある(特に肥満者や極端な痩せ、肺気腫患者や胸腹部の手術歴のあるかたなどでは見えない部分が増えます)ので、時々CTやMRIなど他の検査を併用することが重要です。血液検査では肝がんを検出できない場合も多いですが、補助的に用いられます。

肝がん発見のきっかけとなるような自覚症状はあるのでしょうか。

肝臓内には神経がはしっていないため、一般的に肝がんでは症状がでません。肝臓を包む腹膜には神経がはしっているので、肝がんが腹膜に近い部分にできたり、巨大になって膜を引っ張るようになると、おなかが張った感じや痛みとして自覚される場合があります。また、肝がんが胆汁を流す管をつぶしたりすると黄疸(皮膚が黄色くなる)になる場合があります。いずれにしても、肝がんの早期発見に自覚症状はあてにできません。

トランス脂肪酸の多い食品をもう少し具体的に教えてください。

農林水産省のホームページにはトランス脂肪酸の含有量の多い傾向にある食品が公開されています。(農林水産省 食品に含まれる総脂肪酸とトランス脂肪酸の含有量)それによりますと、100gあたりのトランス脂肪酸含有量が特に多かったのがマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングで、やや多かったものとしてバター、植物油脂、動物油脂が挙げられていました。ただし、商品によってかなりの幅があるようです。その他のトランス脂肪酸が多い製品が含まれていたものとしてクリーム類、ケーキ、パイ、ドーナツ、ビスケットなどの洋菓子類、マヨネーズ、チーズ、クロワッサン、ポップコーンなどが挙げられています。トランス脂肪酸は少量で毒性があるような性質のものではないので、全体として少量しか摂取しないものや、含有量が微量のものについては神経質になり過ぎる必要はありません。

マーガリンとバターはどちらの方が健康に良いのでしょうか。

かつて、動物性脂肪であるバターと比べると植物性脂肪のマーガリンの方が健康に良いといわれていたことがありました。しかし、マーガリンにはトランス脂肪酸を比較的多く含む製品が多いことから、昔いわれていたほどバターと比べて健康によいわけではないことが明らかになっています(主に動脈硬化と関係した話題です)。しかしながら、バターにもマーガリンと比べると少量であるとはいえトランス脂肪酸が含まれていますし、バターに多く含まれる飽和脂肪酸は動脈硬化のリスクを増やすことが知られています。よって、どちらが良いと断言できるほどの根拠はなく、むしろ「多く摂取するとどちらも良くない」と考えるべきです。

コリンエステラーゼの数値が基準値より100ほど高い場合は、脂肪肝の可能性がありますか。

コリンエステラーゼの数値の出し方は検査施設によって大きく異なるため、いくつ以上というのは難しいですが、一般に栄養の取り過ぎでコリンエステラーゼの数値は上がります。脂肪肝の証明のためには腹部超音波やCT、MRIなどの画像検査が必要ですが、コリンエステラーゼが高いかたは脂肪肝の可能性があります。

脂肪肝になってしまった場合、食事や運動療法で普通の状態に戻すことは可能でしょうか。
(個人差はあると思いますので、一般的論で構いません)

脂肪肝とひとことで言っても、ただ肝臓に脂肪がたまるだけの「単純性脂肪肝」と、進行すると肝硬変になる「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」や「アルコール性肝炎」などがあります。糖尿病や脂質異常症がある場合はそれらの治療を行わないと難しいですが、肥満と単純性脂肪肝があるだけの状態であれば、多くは食事・運動療法で元に戻すことが可能です。

果糖は注意とのことですがぶどうジュース(100%)はどうでしょうか。
また、飲む場合は、1日コップ何杯までなら大丈夫でしょうか。

製品によりますが、もともとブドウはリンゴやみかんと比べても果糖が多く含まれる果物ですので、無添加の製品であっても果糖の摂取量は多くなります。ジュースの原材料として、梅やみかんは比較的果糖の量が少ないようです。果糖のみに関する一日の摂取推奨量というのはありませんが、食事バランスガイドで推奨されているブドウの摂取量は一日一房とされています。ブドウ一房でできるジュースの量については製品に記載されていませんが、ブドウの代表的な品種のデラウェア一房(食べられる部分が一房 85-130g)で100gあたり59キロカロリー(日本食品成分栄養表より)に対してブドウジュースが濃縮還元で100gあたり47キロカロリー、ストレートで100gあたり55キロカロリー(同じく日本食品成分栄養表より)として計算すると、無添加のブドウジュースで一日一杯程度が妥当と結論づけられます。ただし、ブドウジュースに限らず、ジュース類は食物繊維をはじめとした大事な栄養素が失われていること、摂取するのに手間がかからなくて摂取量が多くなりがちであることなどから、できればジュースではなくて果物そのもので摂取するようにした方が良いです。

C型、B型キャリアかどうかのチェックはあるのでしょうか。

C型肝炎、B型肝炎ともに血液検査でチェックできます。C型肝炎はHCV抗体、B型肝炎はHBs抗原でチェックします。B型肝炎については稀にHBs抗原がB型肝炎があっても陽性にならない方もいるので(オカルトHBV感染といいます)、HBc抗体も併せてチェックします。前者のHCV抗体、HBs抗原に関しては健診でもチェックされている場合がありますが、HBc抗体も含めて検査するとなると医療機関への受診が必要です。

母が乳がんでリンパにも転移があり、1月末に手術の予定です。コレステロール値も高くお薬服用中です。がん死滅のためには、DHAや葉酸などを摂取すれば良いのでしょうか。また、食事療法だけでは難しい場合、何か効果の高いサプリメントはありますか(手術、化学療法前に)。

DHAなどの抗酸化療法はがん予防に対してはある程度有効な可能性がありますが、がんができてしまってから「がんを殺す」という意味での効果はほとんど期待できません。また、葉酸、DHAも含めてサプリメントにも副作用があり(葉酸は発熱や蕁麻疹、DHAは出血し易くなるなど)肝心の手術に対して良くない影響を与える可能性もありますので、主治医とよく相談したうえで内服するようにしてください。

バラクルードの胎児奇形について教えてください。

バラクルードの内服によって胎児が奇形になるリスクについては証明されていません。動物を用いた毒性実験では、ヒトへの投与量に換算すると100倍以上の分量で胎児への影響が出たとされており、データ上ではリスクは低いと考えられます。とはいえ、遺伝子の構成物質に近い成分を用いた製品ですので胎児に影響する可能性を完全に払しょくするのは難しく、バラクルードは妊娠を予定している女性には投与しにくい薬剤です。バラクルードと同系統の核酸アナログ製剤であるゼフィックス(ラミブジン)では人について国外のデータがあり、こちらでは一般に胎児奇形ができる可能性と変わりがなかったとされています。このことから、せめて証拠がある方が良いということで妊婦に対してゼフィックスを用いる場合もありますが、これも確実に大丈夫と断言できるわけではなく、また、ゼフィックスには耐性ウイルスができやすいという大きな欠点があり、変更についてはよくよく相談する必要があります。

HBc抗体(+)の時点での抗がん剤使用時の肝炎の活性化率、あるいは劇症肝炎率を教えてください。

抗がん剤の種類によって、B型肝炎ウイルスが活性化する危険度は異なります。一般的な全身化学療法では、HBs抗原とHBc抗体がともに陽性の患者さんでは抗がん剤によってB型肝炎ウイルスが活性化して肝障害が起こるリスクは20%から50%、HBc抗体のみが陽性である患者さんでは3%未満と報告されています。悪性リンパ腫などの血液疾患では、通常より強く免疫を抑える治療が行われるため、危険度はさらに高くなります。劇症肝炎の発症率についてはデータがありませんが、一般のB型肝炎ウイルスによる肝障害よりも抗がん剤によるB型肝炎活性化による肝障害は劇症化の危険度が高いとされており、要注意です。いずれにしても、事前に核酸アナログ製剤を用いることによって再活性化を予防することができますので、治療前の対処が重要です。

一昨年70歳の姉が肝がんの手術で肝がんを全摘出しましたが、弟が肝がんになる可能性はどのくらいでしょうか。また、日常気を付けることや予防法を教えてください。

肝がんになる危険度と遺伝については、直接の因果関係はほとんど無いと考えてよいです。ただし、お姉さんがもしお母さんから伝染したB型肝炎ウイルスが原因で肝がんになったのであれば、お母さんからのB型肝炎が弟さんにも伝染している可能性はあり、その場合は肝がんになるリスクが高くなります。また、お酒によって肝がんになった場合や糖尿病からの肝がんの場合も同様に、弟さんも遺伝的に同じ原因による肝がんになりやすい可能性があります。予防法については、まずお姉さんが何が原因で肝がんになったのかを確認して、肝炎ウイルスが原因であれば弟さんの肝炎ウイルス感染の有無の確認、飲酒や糖尿病が原因であれば節酒やダイエットが重要となります。

肝硬変の初期段階から、肝臓がんになる確率は5%以下と説明を受けましたが、肝がんになってしまった場合の、治療内容と生存期間(余命)を教えてください。また完治もあり得るのでしょうか。治らないと診断された場合は、ただ死を待っているだけなのでしょうか。

肝がんになった場合の治療法は、肝がんの大きさ、個数、がんの場所、肝硬変の進行度などによって異なります。治療法としては切除手術の他に、ラジオ波焼灼術といって電極を指して腫瘍を焼く治療法やエタノールを注入して癌細胞を殺してしまう治療法、血管造影を用いて抗がん剤を注入した上でがんを栄養している血管に詰め物をしてがん細胞を窒息させてしまう治療法などさまざまです。陽子線や重粒子線を用いた治療法も行われていますが、できる施設は限られます。手術やラジオ波焼灼術ができる場合は完治が期待できますが、肝硬変が元に肝がんできてきている場合は肝硬変が治ったわけではないので、また新しく肝がんができることも多く注意が必要です。生存期間はだいたい5年くらいとされていますが、もとの病期や症例によってかなり大きくばらつくので、参考程度と考えて下さい。完治が難しい場合も血管造影や抗がん剤などで治療していくことは可能なことが多いですし、肝硬変の予後には肝臓の予備機能がどの程度温存されているかが大きな影響を与えますので、肝硬変に対する治療を続けていくことが非常に重要です。何もできないケースも無いわけではないのですがその前に検討できる事柄は多いですので、その際は主治医とよくご相談ください。

現在の肝硬変の初期段階の治療は、インターフェロン治療しかないのでしょうか。

肝硬変に対する治療は原因によって大きく異なりますが、共通していえるものとしては、初期段階ではBCAA製剤などの栄養療法、ウルソデオキシコール酸などによる抗炎症療法が中心になります。また、C型肝炎が原因の肝硬変であればインターフェロン療法が可能な場合もあります。ただし、インターフェロン療法が効く確率は肝硬変でない方に使う場合より落ちますし、副作用も出やすくなりますので、使用については事前によくよく検討する必要があります。