第21回市民公開講座 質疑応答:講演1

質問内容は、皆様にわかりやすいよう一部内容修正しています

講演1:「肺がん検診 ~肺がん対策に今できること~」

肺がんの検診を定期的に行うことは効果があるのでしょうか。

危険度にあった適切な肺がん検診を定期的に行うことで肺がんによる死亡率が減少したことが明らかになっており、定期的な肺がん検診は効果ありとされています。

肺がん検診は、いつ、どこで、どんな検査をすれば良いのでしょうか。エックス線検査のみでも大丈夫ですか。

現在、有効性が確認されている肺がん検診は非常に限られていて、100%大丈夫な検診はありません。このため今回の講演では、肺がんにより命を奪われる可能性を可能な限り低くできる現時点での対策について、根拠を提示しつつ講演させていただきました。
具体的な肺がん検診受診方法ですが、まずは住民検診などの対策型検診を毎年うけるのが有効です。また肺がんの高危険群(平均喫煙本数×喫煙年数が600以上)では、人間ドックなどで低線量CTを受けるのも有効な可能性があります。

複数の検診機会がある場合は、なるべく多く受診した方が良いのでしょうか。お勧めの受診方法はありますか。

現在わかっているのは年1回の検診を継続して受診すると有効というものです。年間に複数回おこなった方がいいかどうかはわかっていませんが、放射線被ばくが多くなるなどのデメリットに注意が必要です。
具体的な受診方法としては、毎年1回、喫煙歴、年齢など肺がんの危険度に合った内容の検診を、毎年同じ医療機関で、受けられるのがいいと思います。

肺がん検診の自己負担はどの位でしょうか。病院はどこでも良いでしょうか。

検診を行う検診施設によって異なります。市区町村の住民検診など(対策型検診)では無料の場合もありますが、人間ドックなど(任意型検診)ではいくつかの検査を選択できる分、より高額な場合があります。

受動喫煙について詳しく教えてください。肺がん発症との関連性や受動喫煙への対策方法などはありますか。近隣のマンションよりたばこのにおいがしてきますが、長期間家の中に煙が入ってきた場合、体に害はありますか。

喫煙者が「たばこを吸引して出る煙(主流煙)」を吸入する「能動喫煙」に対して、周囲の人たちが「たばこから立ち上る煙(副流煙)」と「喫煙者が吐き出した煙(呼出煙)」を吸わされてしまうことを「受動喫煙」といいます。
たばこの煙には70種類以上の発がん性物質が含まれているため、「受動喫煙」でも肺がんの危険が1.3~2.0倍高まるとされています。
受動喫煙の対策のために健康増進法が改正され2020年4月までに施設ごとに敷地内禁煙や喫煙専用室の設置などの対策が行われる予定です。しかし受動喫煙の完全な遮断は困難で、喫煙者の衣服、髪の毛などからたばこ臭を感じただけで受動喫煙をしていることになります。まずは可能な限りたばこの煙から回避することが重要です。

気管支喘息から肺がんになる可能性はありますか。また、確率はどのくらいでしょうか。

気管支喘息と肺がんは異なる疾患なので、気管支喘息が肺がんに変化したわけではありません。
気管支喘息と肺がんの両方にかかる例はあります。気管支喘息があると肺がんにかかりやすいかどうかを調べた研究がいくつかありますが結論は出ていません。ただし、喫煙歴のある喘息例では、喫煙歴の無い喘息例より肺がんを発症することが多いようです。喫煙は喘息、肺がんそれぞれの危険因子であることがわかっているので、喘息があるから肺がんにかかりやすいというより、喫煙が喘息と肺がんそれぞれを発症させる可能性が考えられています。

間質性肺炎は、肺がんになるのでしょうか。治療方法はありますか。

気管支の最末端にある肺胞(空気の小さな袋)と肺胞の間で、これを支えている部分を間質といいます。通常の肺炎は肺胞の中で炎症が起こりますが、間質に炎症が起きる状態を間質性肺炎といいます。間質性肺炎の原因は、膠原病や過敏症、薬剤性などのほか、原因不明(特発性)のものもあります。間質性肺炎と肺がんは、異なる疾患なので間質性肺炎が肺がんになることはありません。しかし間質性肺炎には肺がんが合併しやすく、喫煙による肺気腫が合併した間質性肺炎(気腫合併間質性肺炎)ではとくに肺がんの危険が高いとされています。
間質性肺炎と肺がんが合併した場合、肺がんの治療が間質性肺炎を急激に悪化させて致命的になることもあるので、肺がん治療を制限せざるを得ない場合もあります。
これとは別に肺がんの中には間質性肺炎に似た画像所見をしめす肺がんがあり、わかりにくい場合もあります。

肺炎治療後にエックス線にうつるのでしょうか(がんにつながるのでしょうか)。

肺に細菌などの微生物が感染して発生する肺炎と、肺の細胞ががん化して発生する肺がんは異なる病気です。このため肺炎が肺がんに変化していくことはありません。
ただし、肺炎と肺がんが合併していて、画像上は肺炎の影のなかに肺がんがかくれていることがあります。この場合、肺炎の治療のあとで肺がんの影がはっきりしてくることがあります。

大気汚染と肺がん発生には関連があるのでしょうか。その場合、東京都内ではどの地区が危険でしょうか。転居以外の方法で対策や回避方法はありますか。マスクを使用する意味はありますか。

喫煙と並んで肺がん発生の危険因子のひとつとして大気汚染があげられています。なかでも粒子径2.5ミクロン以下の浮遊粒子状物質(PM2.5)が肺がん発生との関連があるとされています。PM2.5は環境基準が設けられていて、現在の速報値は環境省(大気汚染物質広域監視システム【そらまめ君】)のホームページで公表されています。
対策としてのマスクの着用は、ある程度有効と考えられます。ただしマスクの大きさや着用方法を適切に行う必要があります。空気清浄機もありますが、その効果はフィルターの性能など機種によってことなります。

アスベストの吸入による肺がんはありますか。

アスベストは石綿ともよばれる繊維状の鉱物で、断熱性、耐久性などにすぐれるため、建築資材、電気製品、自動車など様々な用途に広く使用されてきました。
アスベストの吸入量と肺がん、中皮腫といった悪性腫瘍の発生との間には相関関係があり、アスベストが発がんに影響すると考えられています。このほかアスベストによる胸膜炎やアスベスト肺などの健康被害が知られています。
2006年に製造、使用などが規制されたものの、アスベスト吸入から発病まで40年前後かかるとされており今後も注意が必要です。

肺がんは、悪性度が高い、治りにくいと聞きましたが、理由はあるのでしょうか(手術がしにくい、抗がん剤がききにくい、進行が早い等々)。

肺がんには急速に進行する悪性度の高いものもあれば、そうでないものもあるため、すべて悪性度が高いというわけではありません。現在、部位別がん死亡の上位をしめていて治りにくいとも言えますが、早い段階で診断し治療を行えば完治も期待できます。このため早い段階で診断できるよう検診を受けたり、肺がんを起こすリスクのあるたばこなどから回避したりする対策が重要です。

一般の肺がんと肺腺がんとの違いについて教えてください。

肺がんは肺を構成する細胞から発生するがんのことです。肺を構成する細胞には多くの種類があります。この中で粘液や分泌液を産生するものを腺細胞とよび、腺細胞ががん化したものが腺癌です。このように肺腺癌とは肺がんのなかのひとつの種類(組織型)であり、肺がんの過半数をしめています。このほか肺がんには、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌といった組織型があります。組織型ごとに肺がんの特徴が少しずつことなり、治療法や経過もことなります。このため治療前にがん組織を採取し、顕微鏡で組織型を確認することが重要です。

肺がんの自覚症状があり受診する方のうち、ステージⅠ、Ⅱの方はどのような症状の訴えが多いのでしょうか。

早い段階の肺がんでは無症状なことも多いですが、進行するにつれて咳、痰、血痰、発熱、呼吸困難、胸痛などの呼吸器症状がみられることが多くなります。しかし、進行した肺がんでも無症状のこともあります。
このため症状の違いは病気の進行度の違いも影響しますが、肺がんの場所の違い(肺の中枢型(肺門型)なのか末梢型(肺野型)なのか)も大きく影響します。

ステージⅠからステージⅣになる期間はどのくらいでしょうか。また、がんになるのにどのくらい潜伏期間はあるのでしょうか。

ステージは肺がんの診断時の広がり具合を示す数字です。手術例などでは術後にステージが変更になる場合もありますが、基本的に診断時の進行度を示す指標なので病気の経過とともにステージが変化するわけではありません。
また肺がんの進行速度は、がん細胞の悪性度などが影響するので、個人差が大きいです。
肺がんの潜伏期間についてはよくわかっていないことも多いですが、アスベストに伴う肺がんの場合、アスベストばく露から肺がん発症まで15~40年の潜伏期間があるとされています。

女性(非喫煙者)の肺がんの原因を教えてください。

肺がん患者を女性と男性にわけて比較すると、女性では男性より腺がんが多い、非喫煙者の割合が多いことなどがわかっています。さらに女性患者を閉経前と閉経後で比較すると肺がんの特徴(分化度)が異なるとの報告があり、女性ホルモンが発がんに影響していると考えられていますが、結論はまだ得られていません。

肺がんステージⅠと診断された場合の腫瘍マーカーの値は、基準値よりも多少は高値を示すのでしょうか。何期くらいから異常値として反応するのでしょうか。また今後、良いマーカーが見つかり、検診に採用される予定はありますでしょうか。

肺がんにおける腫瘍マーカーは、病期にともなって異常値を示す確率(陽性率)が高くなります。陽性率はそれぞれの腫瘍マーカー、肺がんの組織型によって異なりますが、ステージⅠでの陽性率は0~50%で、ステージⅣでは50~80%です。ステージⅣでも100%ではないので、進行した肺がんでも全例で腫瘍マーカーが異常値になるわけではありません。逆に肺がんでないのに陽性になる(偽陽性)場合もあります。このため肺がんの診断における腫瘍マーカーの有用性は限られ、画像検査や病理検査が主役となります。腫瘍マーカーの出番は肺がん検出の目的ではなく、ほかの検査で診断された肺がんの確認、治療効果のモニタリング、術後再発を疑う所見などの補助的役割が推奨されています。
また今後も肺がんにおいて、信頼性、汎用性が高い新たな腫瘍マーカーが出てくることはあまり期待できそうにありません。
なお腫瘍マーカーは臓器ごと、組織型ごとに多くの種類があるので、肺がん以外の他の臓器の悪性腫瘍では診断から有用性が示されているものもあります。

低線量CTの特徴を教えてください。

通常のCT(非低線量CT)検査は胸部X線検査で見えにくい部分の病変や小さな病変も検出できる性能がある一方、放射線被ばく量が多くなるデメリットがありました。
低線量CTは、病変の検出率を下げない画質を維持できる範囲内で最も少ない放射線量で撮影するもので、通常のCTよりも被ばく量を少なくできます。
これまで海外の研究では、低線量CTによる肺がん検診が、肺がんリスクの高い受診者についてのみ有用性が示されています。日本で現在行われている研究で、肺がんリスクの高くない受診者に関しても有用性の有無を検討しており、結果が待たれます。