第21回市民公開講座 質疑応答:講演2

質問内容は、皆様にわかりやすいよう一部内容修正しています

講演2:「前立腺がんの診療 ~診断から治療まで~」

前立腺がんと遺伝の関係はありますか。

遺伝との関係は指摘されています。母方または父方の家系に3世代連続の前立腺がん罹患を認めるなど、複数の第一度近親者(親子・兄弟)が前立腺がんに罹患している場合や、早期発症型(55歳以下)の前立腺がん、他のがん(例、乳がん、卵巣がん、膵がん)の家族歴を有する患者の前立腺がん、などに遺伝的な素因があるといわれています。

夫がダヴィンチ手術をしたのですが、またがんが飛ぶことはあるのですか。

ロボット補助下前立腺全摘をされたものと推察されます。もともと転移がない状況での手術であれば、今後の転移の可能性は低いです。しかし、再発のriskはあります。定期的な採血で腫瘍マーカーのPSAをcheckされているかと思います。上昇がなければ心配ありません。

80歳で前立腺がん検査を全体で16ヶ所したところ、左側に5ヶ所発見され、いずれも低レベル3×3で低リスクと言われました。この状態で、ダヴィンチは可能ですか。また、放射線とどちらが適当な治療方法でしょうか。

手術と放射線治療のどちらが適しているかは一概には答えられません。しかし、80歳でも手術が可能な方はいます。

性欲の回数と、前立腺がんとの関連はありますか。

射精の回数でしょうか。現時点で射精と前立腺がんの関係についての報告はありません。

肺がんとの関連はありますか。

基本的にはありません。

ターゲットバイオプシーなどは、健康保険で受けられるのでしょうか。

健康保険で受けられます。ただし先進医療となりますので、11万円ほどの追加負担が必要になります。

ロボット手術にかかる費用はどれくらいですか。健康保険でまかなえますか。

健康保険でまかなえます。3割負担で45-50万程度+入院費(ベッド+食事)がかかります。

知人が生検した際、今まで経験したどんな治療・手術よりも辛くて、二度とやりたくないと言っていました。生検の痛みは、人によって差があるのでしょうか。生検をしない場合、どのように発見することが出来るのでしょうか。生検なしでの発見は不可能なのでしょうか。

生検をせずに前立腺がんの正確な診断をすることは不可能です。生検の際の痛みについて、個人差はもちろんあります。また麻酔の効きも個人差があります。一般的に全身麻酔で行うことは少ない検査ですが、全身麻酔で検査を行うことも可能です。その場合、検査中の疼痛はありません。

PSAが4.0以下の場合は、前立腺がんの可能性は零ですか(PSAが4.0超となったが、前立腺肥大との診断を受け、薬剤治療の結果、現在は4.0未満となっています)。

PSAが4.0以下でも前立腺がんが見つかる場合があります。前立腺肥大症への治療薬でPSAが低下することもあります。経時的なPSA評価で4.0以下でも上昇傾向が認められるのであれば生検することをお勧めします。

全摘手術を受けてしばらくはPSAが零近くでしたが、数年経過後から徐々に上昇し、1.2位になりましたが、最近は上がったり下がったりしています。転移も考えられるのでしょうか。完治の基準値はあるのでしょうか。

前立腺全摘後にPSAが上昇し続ける場合は、再発の可能性があります。前立腺全摘後PSA>0.2が再発の基準となっております。PSAが1.2程度まで上昇してるのであれば検査を受けていただく必要があります。手術を受けた病院の泌尿器科に受診することをお勧めします。

排尿時に時間がかかりますが、がん以外で考えられる病名とそれの見分け方を教えてください。

排尿時間の遷延は、前立腺がん特有とは言えない症状です。前立腺肥大症や前立腺炎でも同様の症状となります。泌尿器科を受診してPSA検査などを受けていただき判断されることになります。

父親が前立腺がんの場合、娘は乳がんになる可能性があるのでしょうか。

遺伝的な素因が、関係する場合とそうでない場合があります。乳がんと前立腺がんで共通の遺伝子異常の指摘がある症例もありますが、それが全てではありません。つまり、可能性はありますが必ずなるわけでもなく、ほかのがんになる可能性もあります。

前立腺がんは、再発する可能性はありますか。

いずれの治療にせよ再発する可能性はあります。

6年前に全摘手術をしました。3ヶ月毎に定期検診を受けていますが、毎回数値が上昇します。1年に1回は腹部にリュープリンを注射し、数値は下がりますが、また上がり始めます。この状態をどう理解すれば良いでしょうか。

前立腺全摘後のPSA再発の状態にあると思われます。年1回のリュープリン注射でPSAが低下するのであれば、ホルモン感受性前立腺がんの状態と考えられます。前立腺全摘後のPSA再発に対しては救済放射線療法なども可能です。担当医師と相談することをお勧めします。

現在ホルモン治療をしているため、PSAが下がって良くなっています。今後どうなっていくのでしょうか。

PSAが低下しているのであれば、治療が奏功していると考えてよいかと思われます。今後PSAの上昇がなければホルモン療法を継続することになります。間歇的なホルモン療法といって、癌の状況にはよりますが休薬することも可能です。

練馬区の前立腺がん検診の対象者は60歳以上ですが、検診費用が他のがん検診より高額だからでしょうか。40歳ぐらいから検診の項目の1つとしておけば、前立腺がんのステージが低いうちに発見、切除することが出来るのではないでしょうか(現状、60歳以下では、発症率が低いからなのでしょうか)。

検診については各自治体に任されておりますので、何とも言えません。

食の欧米化によって、前立腺がんに最も影響がある食べ物はなんでしょうか。

特定の食品があげられるわけではありません。また食の欧米化の影響の可能性が示唆されたのみで、確定的な報告はまだありません。

前立腺がんは、近年日本でも患者が急激に増えているとのことですが、その原因は、食の欧米化によるものなのでしょうか。または高齢化によるものなのでしょうか。それとも医療技術の進歩や国民の検査認識の向上によるものなのでしょうか。

そのすべてではないかと考えられます。

前立腺がんに限らず、食の欧米化が一因との話をよく聞きますが、牛豚鶏羊は食べない方が「がん予防」という意味では良いのでしょうか。研究データなどありますか。

食の欧米化が影響するとの報告は多くあります。しかし、確定的な報告はありません。

ロボット手術(ダヴィンチ)の安全性について、昨今TVドラマでも取り上げられていますが、腹腔鏡手術等でも執刀医による技量が問われており、貴病院ではそのようなリスクに対して、どのような対策を講じているのでしょうか。

当科における腹腔鏡手術とロボット手術についてはいずれの手術もその手術の専門医が行っております。具体的には、腹腔鏡手術であれば必ずその手術に腹腔鏡手術認定医が入り執刀いたします。ロボット手術においてもサーティフィケート(認定書)を持った人間がコンソール(ロボットを動かす所)に入り手術を行っております。どちらの手術も専門性の高いチームを組み、カンファレンスやフィードバックを行って手術技術の向上を目指しています。

日本における「ロボット手術」の普及について、世界的に観て、日本のロボット手術は進んでいるのでしょうか。それとも遅れているのでしょうか。

日本のロボット手術が世界から遅れているということはありません。

放射線治療時の副作用はありますか。

放射線治療に特有の副作用はあります。しかし、技術の革新により以前より頻度はあきらかに減っています。

前立腺がんの発見は、自覚症状によるものが大半なのでしょうか。有効な検診はありますか。

PSA検診が代表的な検査です。

30代でも前立腺がんになりますか。

可能性はありますが、非常にまれです。

頻尿を続けていると前立腺がんに結びつきますか(なかなか頻尿の治療も続けられません)。

直接の因果関係はありません。ただし頻尿が主訴で受診し前立腺がんが見つかることはよくあります。

監視療法を施行しているうちに思ったよりがんが進行してしまい、患者さんとトラブルになることはないのでしょうか。前立腺がんの場合は、そこまで急には進行しないのでしょうか。

急に進行しないと思われる前立腺がんが監視療法の適応となります。また、1年~1.5年に一度再生検を行い進行の可能性を再評価しています。よって予期せぬ進行はまれです。