第22回市民公開講座 質疑応答:講演1

質問内容は、皆様にわかりやすいよう一部内容修正しています

講演1:「大腸がんの診断と治療 2018」

大腸がんの原因と予防法を教えてください。

いくつかの要因が重なると大腸がんが発生しやすいと言われています。
1.食生活の欧米化(特に牛肉・豚肉・加工肉)
2.肥満
3.飲酒
などがリスクを上げると言われています。日本では近年生活スタイルが変化しており、上記の要因が増えている結果、大腸がんも増加していると考えられています。
逆に、大腸がんのリスクを下げる要因としては、
1.適度な運動
2.野菜や果物の摂取
3.大腸がん検診を受ける
と言われています。是非、当院で大腸がん検診を受けてください。

最初の検体検査で便に血液が混ざっている場合、大腸がんと診断される確率はどれくらいでしょうか。また、大腸がんでない場合、どのような病気の可能性がありますか。健康(問題なし)である確率はどの程度でしょうか。

便潜血陽性の場合には、二次検査を行うと、約2%に大腸がんが見つかります。大腸がん以外では、大腸ポリープ、大腸憩室、痔疾患などが考えられます。

早期発見、早期治療が望ましいと思いますが、早期とはどの程度のスパンで考えたら良いでしょうか。

腹痛や下血、腸閉塞などの大腸がんによる症状がなくても、1~2年に1度程度、自発的に大腸内視鏡検査を受けるとよいでしょう。また、検診などの便潜血検査が陽性の場合には、放置せずに二次検査(注腸検査や大腸内視鏡検査)を受けることをお勧めします。

免疫療法(自由診療)は、どの位効果がみられるのでしょうか。また、治療期間はどの位かかりますか。

免疫療法については、「大腸癌治療ガイドライン2019年版」には記載されていません。大腸がんでは、限られた遺伝子異常が認められた場合に限って、保険診療で免疫チェックポイント阻害薬を使用できます。自由診療で行う場合には、免疫療法を行っている医療機関に直接ご相談ください。

大腸にいくつか憩室があると言われました。これは、いずれがんへとつながるのでしょうか。

憩室が「がん」に移行することはないと考えられています。

オプジーボ治療について詳しく教えてください(大腸がんでも使えるのか、費用等)。

体内の免疫機能にブレーキがかかるのを防ぎ、免疫の活性化を持続させてくれる薬剤が、「免疫チェックポイント阻害薬」です。大腸がん領域では、一部の大腸がんに対して、昨年末からペムブロリズマブ(キイトルーダ)が使用できるようになりました。ニボルマブ(オプジーボ)は、アメリカでは昨年他の薬剤との併用で、一部の大腸がんで承認となりましたが、日本では現時点では未定となっています。

一時的に人工肛門を使用していました。その後、自分の肛門に戻せる人は、どういうタイプ(部位)のがんですか。

「一時的な人工肛門」と説明を受けた場合には、①縫合不全の発生率が高くなる部位(比較的肛門に近い直腸)にがんが存在していること、②縫合不全を発症しやすい病歴(喫煙、糖尿病、ステロイド使用など)を持っていること、などが考えられます。「吻合部」の状態が回復し、肛門括約筋機能が問題なければ、一時的な人工肛門を閉鎖する手術を行い、「自分の肛門に戻せる」と考えられます。

祖父、父、姉と3世代で大腸がんに罹患しているのですが、大腸がんの遺伝子は調べられるのでしょうか。毎年、大腸がんの内視鏡検査を受けていますが、遺伝子があるとしたら、他に何か予防法はありますか。

遺伝性大腸がんの一部は遺伝子が確定しており、一部の疾患では保険診療で調べることは可能です。まずは、専門家の遺伝外来を受診するか、「遺伝カウンセリング」で相談されるのが良いでしょう。

がんの遺伝子と言われているのは、人が持っている遺伝子のことですか。それともがんそのものにも遺伝子があるということですか。

ヒトの遺伝子は約22,000と言われており、その中に、「がんを発症しやすい遺伝子」=「がんの遺伝子」が含まれる場合がある、ということです。

便秘と大腸がんの発症のメカニズムを教えてください。

「便秘は大腸がんのリスクであるかどうか」については以前より議論されております。しかし、結論は出ておらず、現在のところやや否定的(関連無し)と言われています。すでに大腸がんを発症している方の重要な症状として「便秘」があります。これは、管腔状の臓器である大腸の中にがんが占居するため、便が通過しにくくなることにより、物理的に便が出にくい状態=「便秘」といったメカニズムが考えられています。

ロボット手術時の医療費は保険がききますか。おおよその費用を教えてください。

大腸がんのロボット手術に関しては、2018年4月に「腹腔鏡下直腸切除・切断術」対して保険適応が認められました。従って、ロボット手術は腹腔鏡手術とほぼ同じ費用で手術を受けることができ、入院費用も同じです。ただし、ロボット手術の施設基準が取れていない医療機関では、保険を使用することができない場合もあります。

大腸ポリープの何割ぐらいががんに移行しますか。

大腸ポリープの大きさによって異なると言われています。切除した大腸ポリープを調べると、5mm未満では「がん」は稀であり、5~9mmでは約7%、10~19mmでは約25%、20mm以上では約36%とも言われています。

腹腔鏡手術・ロボット手術等、患者サイドで選べるのでしょうか。

ロボット手術は、大腸では直腸疾患に限り保険収載されました。がんの大きさや部位、進行度や既往手術歴などによって手術法の選択が異なりますが、最終的には患者サイドと十分に相談をして治療方針を決定していきます。

腹腔鏡手術の進化型がロボット手術と捉えて良いでしょうか。

ある意味では正しいと考えます。大腸がんに対する「腹腔鏡手術」は、導入されてから四半世紀が経ち、ある程度確立されています。しかし、直腸がんに対して、すべての手術手技を「ロボット手術」だけで行うことは難しい場合が多く、「腹腔鏡手術」の手技も必要になるというのが現状です。

ロボット手術が受けられるのは、ステージで言うと0~Ⅰ期の患者となるのでしょうか。

現在では特にステージで適応を決めてはいません。直腸がんで手術適応となる0~Ⅳまですべてロボット手術の可能性はあります。「ロボット手術」ではまだ経験症例数が少ないため、症例ごとに部位や腫瘍の大きさなどで総合的に判断しています。

ダヴィンチ手術の時、ロボットにどのような指示をするのでしょうか。

残念ながら、現在のところ、音声で指示はできません。「コンソール」と呼ばれるコックピットに備え付けてある操縦ハンドルを術者が握り、手術台から少し離れたところで遠隔操作を行います。

ロボット手術のデメリットや今後の課題等、教えてください。

ロボット手術に慣れるまでは、セッティングや手術そのものの時間が、従来の手術より長いことや、ロボット自体が非常に高価であることがデメリットと言えます。しかし、手術手技の習得(ラーニングカーブ)は腹腔鏡手術よりも早いと言われています。

便検査において、1日目と2日目と2回採取することが多いと思いますが、1回目で少量でも血液が出ていた時はがんを考えた方が良いのでしょうか。また、血液の色が赤い時、黒い時とあると思いますが、どのように考えたら良いでしょうか。

一般に、便潜血検査は2回のうち1度でも陽性であれば、二次検査(注腸検査あるいは大腸内視鏡検査)をお勧めします。一般に、赤い血液は肛門に近い位置の出血、黒い出血は胃や十二指腸に近い位置の出血と言われています。大腸の中でも、新鮮な赤色に近いほど、肛門に近いと考えられます。

昨年、便潜血検査(2日法)したところ、1回陽性と出て内視鏡検査でポリープを切除したが、がん化していないので治療はしませんでした。今年の便潜血検査(2日法)では2回とも陰性でした。がんではないと安心してよろしいでしょうか。

現状は、ひとまずは、安心して良いと思います。しかし、永久的に保障されたわけではなく、今後も定期的な便潜血検査や大腸内視鏡検査は必要です。

便潜血検査(2日法)でずっと陰性だった場合に、実際は陽性だったという確率はどの位でしょうか。痔がある場合、診察を受けた方が良いでしょうか。

そのようなデータは残念ながらありません。しかし、痔疾患がある場合は、陽性に出ることがあります。また、「痔疾患」と思っていても、実際には違うこともありますので、検査は受けた方が良いと考えます。

血便(血の混じった便)と、肛門が切れてしまったことなどによる血の違いを、素人でも区別することはできますか。定期的に便潜血検査を受けていれば、その不安は解消しますか。

その違いを判定するのは難しいので、医療機関を受診することをお勧めします。定期的に便潜血検査を受けて、陰性であればある程度不安は解消されると考えます。裂肛だと思っていても、便潜血陽性であれば大腸内視鏡検査を受けた方が良いと考えます。

がん幹細胞を殺す抗がん剤はあるのでしょうか。がん細胞を殺してもがん幹細胞を殺さないと、やがて再発するのでしょうか。

がん幹細胞についての議論は現在研究中であり、あまり確定的なことは申し上げられません。

大腸がんに効く抗がん剤は、他に転移したがんに対しても、同じように効く抗がん剤と言えるのでしょうか。

大腸がんで肺や肝臓などの他の臓器に転移した病巣(転移巣)は、大腸がんの原発巣と同じような性質を持っていると考えられています。従って、多くの場合、大腸がん(原発巣)に効く抗がん剤は、同様に転移巣にも有効とされています。

大腸内視鏡に不安があるのですが、安心して検査を受けるためにはどのような点に配慮したら良いでしょうか。

検査前の注意事項や、下剤内服の説明などを事前によく聞いて、理解して、実践することが大切です。また、特に大腸内視鏡検査の直前・直後に、無理な予定を組み込まないことも大切です。

大腸内視鏡検査の前処理として、腸の内容を空にするための下剤の服用は良いとして、口から2時間くらいにわたり10分おきくらいに薬剤を飲むのはかなり負担があります。もっと簡便な処理方法は開発、検討されているのでしょうか。

1~2リットルの液体タイプの下剤が一般的ですが、最近では、錠剤タイプの下剤もあります。しかし錠剤タイプの下剤も、比較的多くの水分を同時摂取する必要がありますので、検査前薬について説明の際に、担当医師・看護師とよくご相談ください。

現在3年間隔で大腸内視鏡検査をしていますが、ポリープの有無、または量により(全くポリープのない時もある)次回の検査までの間隔は変わりますか。

ポリープが比較的多く見つかれば、処置・切除したとしても数年間は続けた方が良いと考えます。逆に、2~3年連続でポリープがなければ、2~3年間隔でも良いと思います。ただし、その際も、施行しない年に関しては、簡便にできる便潜血検査は望ましいと考えます。

胃・大腸の内視鏡検査は、同日に1回で受けることは可能なのでしょうか。

可能ではありますが、下剤の内服や排便などの前処置や、鎮静剤の使用、処置をした際の後出血などを考慮すると、別の日に行った方が安全と考えます。

胃に多発するポリープがある場合、大腸にもポリープができやすい傾向にあるのでしょうか。

胃と大腸にポリープが多発発生するような疾患もありますので、一概には言えません。胃や大腸に多発ポリープの際は、もう一つの臓器(大腸や胃)を調べた方が良いと思います。

これだけ大腸がんの治療が進歩しているのに、死亡率が高いのは、大腸がんが転移しやすいからなのでしょうか。それとも、早期発見がしやすいということで、個人の油断や自己判断で発見が遅れてステージが進行してしまってから見つかる人が多いからなのでしょうか。

死亡数が多いのは、おそらく罹患数が多いことが影響していると思われます。 がんと診断されて5年後に生きている5年相対生存率では、大腸がんは72.2%と決して低くはなく、他の食道がん、肝臓がん、肺がん、胆のうがん、胆管がん、膵臓がんなどと比べると、比較的予後が良いがんと言えます。