第23回市民公開講座 質疑応答:講演1

質問内容は、皆様にわかりやすいよう一部内容修正しています

講演1:「食道がんと食道胃接合部がんの治療」

食道がんと接合部がんの進行速度は異なるのでしょうか。

がんの進行速度は個人差が大きく、また通常はがんと診断されてから放置することが稀なためなかなかデータが集まらず、わかっていないというところが正直なところです。

扁平上皮がんと腺がんは、どちらのほうが予後が悪いのでしょうか。

非常に難しい質問です。残念ながら過去の報告でも扁平上皮がんが悪いという報告と、腺がんが悪いという報告がありどちらとも言えません。

ステージⅠ~Ⅱで、放射線治療と化学療法を選んだ場合、化学療法はずっと続けなければいけないのでしょうか。

放射線治療中に2回化学療法を行うのですが、放射線治療が終わった段階でがんが消えたと判断した場合には、ステージIではそのまま化学療法は終了します。ステージIIであれば化学療法を2回追加することが多いです。ですから化学療法をずっと続けることはありません。ただ、放射線療法と化学療法でがんが消えなかった場合には、そのまま化学療法を続けてもがんが消えることはありませんから手術が必要になります。

毎年胃カメラ検査をしていれば、早期発見は可能でしょうか。

早期がんは通常は無症状ですので、早期発見のためには内視鏡検査は必須です。中には発見が非常に難しいタイプもあり絶対とは言えませんが、毎年内視鏡を施行することで早期発見できる可能性は非常に高くなると思います。また内視鏡をする医師にも食道をよく見てくださいと伝えることも大事です。

食道がんを調べる検査は、通常の人間ドックで必然的に検査の対象となっているのでしょうか。それとも希望しなければ検査の対象にならないのでしょうか。

人間ドックでは胃や食道の検査として上部消化管X線検査を行うことが多いかと思います。食道がんや食道胃接合部がんの早期がんを発見するのにはX線検査よりも内視鏡検査のほうが有用ではないかと考えられておりますので、オプション等で内視鏡検査に変更することをお勧めします。

ピロリ菌の感染経路について教えてください。水道水や幼少時の環境、レストランでの食器共用等で感染しますか。

幼少期の井戸水の使用や親から子への口移し等が原因ではないかと推測されていますが、はっきりはわかっておりません。成人になってからの感染は少ないです。ご質問のような水道水の使用やレストランでの食器等で感染する可能性は低いと考えられます。

ピロリ菌は、胃がんの一因と考えられていて、陽性の場合除菌すると聞いていますが、陰性だと腺がんになるリスクがあるのであれば除菌はした方が良いのでしょうか。しない方が良いのでしょうか。

ピロリ菌除菌による胃がん発生抑制効果と、ピロリ菌除菌による食道胃接合部腺がん発生リスク上昇の比較についてですが、例えば2014年度の日本人男性の胃がん発生頻度は年間で10万人中140人です。一方で食道胃接合部腺がんは欧米の各国で年間で10万人に多くても5人程度です。人種等も違いますので、正確な比較ではないのですが、現時点ではピロリ菌除菌の方がメリットが大きいのではないかと思われます。

胃から酸っぱい水が上がってくることがあります。食道がんと関連はあるのでしょうか。

おっしゃっている症状はいわゆる「胃食道逆流症」かと思われます。食道がんとは直結しませんが、少なくとも内服治療の適応はあるかと思います。是非消化器内科を受診してください。

お酒を飲む前にヘパリーゼやウコンを飲むと顔が赤くなりにくいような気がするのですが、これによってアセトアルデヒドがすぐに分解されるのでしょうか。

ウコン、ヘパリーゼ等が肝臓によいとか二日酔い予防に良いとの話がありますが、どのような機序で働くのかはわかっていません。アセトアルデヒドとの関連もわからないと思います。

順天堂医院では、従来食道がんと食道胃接合部がんの外科手術において、開胸、開腹手術が主体と推察しておりますが、胸腔鏡、腹腔鏡による手術は、既に導入あるいは今後導入予定はありますか。

2019年4月からは胸腔鏡腹腔鏡による手術を導入しております。

22年前に結腸がんの外科手術をしました。以後EMR、ESDによる手術も行い、計3回結腸がんの手術を行いました。結腸がん体験者は、食道がんになりやすい報告はあるのでしょうか。また、現在はCFを毎年1回、GFを2年に1回行っていますが、検査のスケジュールはこれでよろしいでしょうか。

まず大腸がんと食道がんとの間に特に関連はありません。大腸がんになった人が食道がんになりやすいわけではありません。次に内視鏡検査に関してですが、上部内視鏡検査の場合には、検査の目的は胃がん食道がんの早期発見かと思います。ピロリ菌に未感染で、かつ飲酒歴、喫煙歴がないのであれば胃がんや食道がんを発生する確率は低いので頻回の内視鏡検査は不要かと思います。

逆流性食道炎を指摘されているので、いつか食道がんになるのでは・・・と心配しています。上部内視鏡での検診は、1~2年ごとに受けています。食道がんになった場合、内視鏡検査で必ず発見できる、と考えても大丈夫でしょうか。見落としされるリスクはどのくらいあるのでしょうか。

まず逆流性食道炎から食道がんになる確率は極めて低いので安心してくださって結構です。一方で、逆流性食道炎からバレット食道になった場合には定期的な内視鏡検査が必要です。最近ではバレット食道から食道がんにはなる確率が以前言われていたほど高くないことが分かっています(年率0.2~0.6%程度)。従って逆流性食道炎からバレット食道にならない限り心配はいりませんし、バレット食道になっても実際に食道がんになる確率は低いといえます。バレット食道と診断されれば定期的な内視鏡検査が推奨されます。そうすればたとえがんになっても早期発見できます。但し必ず早期発見できるとは限りません。注意していても見つけられないがんもあるのです。

胃がんが減少しており、大腸がん、肺がんが増加している原因は何でしょうか。日常生活での注意点を教えてください。

胃がんが減少しているのはピロリ菌の感染率が下がっているためですが、大腸がん、肺がんはそもそも原因がはっきりわかっておりません。ですから、一般的にがんのリスクを下げるといわれていること(例:禁煙する 禁酒する 緑黄色野菜や果物の摂取を意識する 赤みの肉、加工肉を避ける 適度な運動の励行 肥満や糖尿病にならない等)に気を付けるしかないのではないでしょうか。完全な予防法はないと思います。

23年前に胃がん手術(2/3切除)をしました。腸閉塞もしました。胃を切除した人は「逆流性食道炎」になり、それが何年かすると食道がんになりやすいと聞きますが、本当の話でしょうか(現在70歳、たばこは吸わない、お酒はたしなむ程度、父は飲むと赤くなる)。

確かに胃切除後食道がんというのはありますが、基本的には他の食道がんの患者さんと同じように濃厚な飲酒歴、喫煙歴がある患者さんがなります。胃がんの手術を受けたからと言ってお酒も飲まない、タバコも吸わない人は食道がんになる確率は極めて低いと思います。お父さんは、お酒はたしなむ程度ということですが、顔が赤くなりやすくかつ毎日飲むのであれば定期的な内視鏡検査が必要かと思います。胃切除後はアルコールの吸収も良くなってしまいますので量が少ないから大丈夫とは言えないです。

食道胃接合部がんで食べ物の通りが悪くなり、ステントを入れ、はじめは食べられたのですが、だんだんがんが大きくなり、ステントの上部もがんで埋もれて、食事がとりづらい場合は、どのように食事をとれば良いでしょうか。

なかなか厳しい状況です。食事は流動食のようなものをとるか、半消化態栄養剤と言われる補助食品を摂取するしかないかと思います。通過そのものを改善する方法としてはステントの中に更に長いステントをもう一度入れる、ステントインステントという方法があるかと思います。また放射線治療を追加するという方法もあります。

食道がんのオプジーボ治療は、保険適応ではないのでしょうか。

残念ながら現時点(2019年5月現在)では保険収載されておりません。2020年には保険適応になると期待されますが、わかりません。

食道胃接合部がんのオプジーボ治療は、保険適応でしょうか。

食道胃接合部がん(腺がん)については疾患概念があいまいなため、保険適応もあいまいです。食道がんとして治療することもあれば胃がんとして治療することもあります。胃がんとして治療すればオプジーボは保険適応です。ただし、胃がんとして治療する場合、3種類目の抗がん剤(1種類目、2種類目の抗がん剤の効果がなかった場合)として使用可能です。食道胃接合部がんとして診断され、いきなり使用することは現時点ではできません。

日本人(東洋人)と欧米人(西洋人)の飲食習慣による違いは、「扁平上皮がん」と「腺がん」の発生率に影響はあるのでしょうか。

もちろん飲食習慣の違い(欧米人のほうが高脂肪食、赤みの肉食が多い等)もあるかとは思いますが、むしろアセトアルデヒド分解酵素の違い(欧米人はほぼ100%酵素を持っているが日本人の4割は不十分な酵素しかもたない)やピロリ菌感染率の違いなどのほうが発生率に対する影響が大きいのではないかと思います。

先日の報道で「縄文人はお酒に強いDNAだった」との研究結果が出ていましたが、現代の日本人はお酒にあまり強くない遺伝に変化したのはなぜでしょうか。また、その変化に伴って、日本人の食道がん、食道胃接合部がんの発症リスクは上昇していると考えられるでしょうか。

非常に興味深いお話ですが、そちらの方面に関しては全く知識がありません。申し訳ございません。縄文人はお酒に強いDNAだったということですので、それ以降の日本人は強くないという前提かと思います。変化した理由に関してはその番組で説明されているのではないでしょうか?またその変化により日本人の食道がんの発生リスクは上昇したと思われますが、食道胃接合部がんに関してはあまり影響なかったのではないかと思います。

食道がん(1b・転移なし)術後、胃と食道の縫合部が逆流性食道炎になり、15年間PPIを継続服用しています。最近それが潰瘍になり、PPIを15mg~30mg(就寝前のみ服用)に増量しましたが、逆に胃が荒れたので、元の15mgに戻しました。胃カメラ以外に、この潰瘍を観察できる検査はありますか。また、PPIの長期服用の副作用はあるのでしょうか。

食道と胃との吻合部潰瘍のことかと思いますが、残念ながら内視鏡以外には有効な観察方法はないかと思います。PPIの長期副作用に関しては、腸炎や腎機能障害が報告されていますが、実際に問題になることは稀です。

元々逆流性食道炎はあったが、6年前に食道がんが見つかり、食道と胃を1/3ずつ切除しました。術後は、処方薬を服用し、電動ベッドで頭の方が高くなるよう傾斜をつけて寝ているのですが、角度をつけすぎると、身体がずり落ち、逆流に苦しんでいます。医師は「術後は皆そうなんですよ」と言いますが、日によっては朝食も取れない程です。何か他にできることはないでしょうか。(70歳・男性)。

食道がんの術後の逆流であり、おっしゃる通りなかなか対処しにくい問題です。逆流を抑えるためにプロトンポンプ阻害剤(PPI)というものを服用しているのではないかと思いますが、タケキャブ20㎎という薬に代えてみるというのも一つの方法かと思います。タケキャブは強力に胃酸分泌を抑制します。これで症状が改善する患者さんもいるのですが、効果がない人もいらっしゃいます。そうすると、やはり就寝中の体位が一番重要かと思います。電動ベッドでギャッジアップするのは非常に有効ですが確かにずりおちて逆流することがあります。人によってはリクライニングチェアのような形のほうがずれにくいようです。