第23回市民公開講座 質疑応答:講演2

質問内容は、皆様にわかりやすいよう一部内容修正しています

講演2:「がんゲノム医療」とは?

免疫チェックポイント阻害剤に限界はありますか。

免疫チェックポイント阻害剤は期待されていますが、すべての患者さんに効果があるわけではありませんので、残念ながら限界はあります。

遺伝子解析をして薬剤を選んだのに効果がなかった、ということはあるのでしょうか。

分子標的薬は高い治療効果が期待されますが、中には薬剤耐性に関わる遺伝子異常もあるため効かないというケースはあり得ます。

分子標的薬は、抗がん剤と違いますか。遺伝子検査(遺伝子パネル検査)をしないと適応するかどうかはわからないのでしょうか。

分子標的薬と以前からある抗がん剤(あるいは殺細胞効果薬剤とも呼ばれます)の違いは、前者が標的とする分子(蛋白質)の機能を抑える事などを指標に開発されたのに対し、後者は腫瘍細胞の増殖抑制を指標に開発された薬剤です。分子の機能を制御するということは、その分子に異常があることが条件になりますが、講演でもお話ししたコンパニオン診断と呼ばれる方法でも適応があるかわかることがありますので、パネル検査が必須ではないケースもあります。

分子標的薬は、耐性ができて効果がなくなった場合に、再度次世代シークエンサーで解析は可能なのでしょうか。

効果がなくなるということは、薬剤耐性に関わる新たな遺伝子変異が生じた可能性があります。どのような異常が起きたかを知るためには、耐性になった状態の腫瘍細胞を採取して解析すると、その原因がわかる可能性はあります。ただし、今度保険償還される予定のがん遺伝子パネル検査は患者1人につき1回の検査となっています。

がん遺伝子パネル検査は、主治医にやりたい旨を伝えれば良いのでしょうか。

まずは主治医とご相談ください。ただしコンパニオン診断などで、すでに分子標的薬剤の適応があると判断された場合は、それ以上検査が行われてもあまり情報が得られない可能性もありますので、十分に説明を聞かれた方がよろしいかと思います。

がんになってからでないと、がん遺伝子パネル検査はできないのでしょうか。

がん細胞から遺伝子を抽出して解析を行いますので、がんの診断のもと腫瘍検体が提出できることが最低条件になります。

がん遺伝子パネルの種類は、患者が選べるのでしょうか。

NCCオンコパネルもFoundationOneも、標準治療がないあるいは標準治療が終了となった(終了が見込まれるものを含む)固形がん患者となっており、その条件を満たす必要があります。基本的にはこれら条件を満たしたのであれば、患者さんが選べると思いますが、病院によってはどちらかのパネルしか採用していない可能性もあります。主治医とご相談ください。

がん遺伝子パネル検査の結果が出るまでの期間を教えてください。

4-6週間と言われておりますが、まだ開始されてから日がたっていないため、詳細はわかりません。詳細は保険償還された時点で主治医の先生とご相談ください。

がん遺伝子パネル検査は種類があり、それぞれ検査できる遺伝子が違うと思うのですが、自分がどの検査をした方が良いのか、分からないものなのでしょうか。どのように選べばよいのか教えてください。また、がん遺伝子パネル検査1つだけで調べきれなければ、他のパネル検査をした方が良い、ということもあるのでしょうか。

パネル毎に調べる遺伝子の数は異なりますが、薬剤に直接結び付く重要な遺伝子はほぼ重複していると考えられます。また、すでにあなたのドライバー変異(発がんの原因遺伝子)がコンパニオン診断あるいはパネル検査で判明している場合、他のパネル検査で薬剤に結び付く別のドライバー変異が見つかる可能性は低いと思われます。詳細は保険償還された時点で主治医の先生とご相談ください。

がん遺伝子パネル検査で、治験中の薬が効く可能性がある場合、治験を実施している施設はどのように調べたら良いでしょうか。あるいは、治験施設を紹介していただくことは可能でしょうか。

治験情報あるいは治験実施施設への紹介に関しては基本的には主治医から説明があるかと思います。一般の方でも、下記ページなどから国内で行われている治験情報が得られます。
医薬品情報データベース 臨床試験情報
https://www.clinicaltrials.jp/cti-user/common/Top.jsp
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 治験情報の公開
https://www.pmda.go.jp/review-services/trials/0019.html
国内に限らず海外の治験についても調べたい場合は、下記ページに自分の疾患と遺伝子名を入力すると検索できます(ただし英語入力が必要です)
https://clinicaltrials.gov/

偶発的所見があっても患者及びその家族等への告知はしないという条件下でのパネル検査は、可能でしょうか。

がん遺伝子パネル検査を通じて得られた遺伝性腫瘍に関する情報(偶発的所見)については、「知らないでいる権利」も患者さんにはありますので、パネル検査を受けることは可能です。ただし一部の薬剤、例えば乳がんで用いられるPARP阻害剤は、遺伝的素因があることが使用条件になりますので、この薬剤を処方されることで自分がその素因を持っているということが分かってしまうケースもあります。 遺伝的素因についてはセンシティブな問題ですが、家族にとっては、知っていれば健康管理にいかせた可能性のある情報が、知らなされないことによる不利益が生じることもありますので、遺伝カウンセリングをしっかり受けていただいて上で判断されることをお勧めします。

パネル検査が保険償還されれば、高額療養費制度は使用できますか(補助されますか)。

保険償還されれば高額療養費制度で補助されます。

がんの原因は、すべて遺伝子によるものなのでしょうか。

全てと言えるかは難しいですが、これまで判明している発がんのリスク因子(喫煙、飲酒、ウィルス、その他)により、ドライバー変異が生じることが原因と考えられています。

がんゲノム医療で見つかった薬が保険適用外であった場合、患者が自由診療でも治療を希望すれば対応することは可能でしょうか。

2018年11月に行われた第12回患者申出療養評価会議(厚生労働省2018/11/22)で、ご質問のような課題が検討されました。
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000406890.pdf
この中にも書かれていますが、日本ですでに他の疾患で使用されている薬剤については、臨床研究中核拠点病院において、患者申出療養制度という仕組みで使用できるように準備が進められています。

がんゲノム医療が有効ながん種はあるのでしょうか。 

多くのドライバー変異とそれに対応する薬剤が多く開発されているがん種としては肺腺がんが挙げられますが、コンパニオン診断でもわかるものが多いことも確かです。一方、希少がんでは、どのようなドライバー変異があるかわかっていないことから、あらたな治療法が開発されるという期待もある一方、保険で使用できる薬剤がない欠点もあります(ただし、その場合は前の質問のような仕組みも検討されています)。

がんの発症リスクと、がんの多発性体質との関係はあるのでしょうか。

がんは遺伝的要因と環境的要因によって発症します。根底には確かに遺伝的要因がありますが、そこに環境的要因が加わり発がんします。遺伝的要因の強さは、その患者さんにより異なりますが、遺伝的な要因がとても強い患者さん、いわゆる遺伝性腫瘍の患者さんは、すべてのがん患者さんの10%程度と考えられています。遺伝性腫瘍の患者さんは複数の臓器で発がんする可能性があります。一方、喫煙でも、肺がんや食道がん、喉頭がん、膀胱がんなどの複数の臓器の発がんリスクになります。このことから、がんの発症リスクを考える上では遺伝的要因と環境的要因の両方が重要であることをご理解ください。

がんゲノム医療(検査~診断~治療)は、健康保険適用となりますか。

検査~診断については保険適用となります。治療については含まれません。

がん以外の難病と言われる病気についても、遺伝子検査をすることで治療効果があがる可能性があるのでしょうか。

がん以外の難病でも遺伝子の異常で発症するものがあることがわかりつつありますが、治療法が確立しているものと確立していないものがありますので、詳細は主治医にご相談ください。また、がん遺伝子パネル検査はがん以外のいわゆる難病の遺伝的素因を知ることには不向きの検査です。

手術で摘出した検体は、何年前までのものであれば調べられるのでしょうか。

検体から核酸(DNA)を抽出して解析できるか否か判断されるため、保管条件(使用しているホルマリンやホルマリン入っている時間)が悪ければ新しいものでも解析が困難なケースがあります。ちなみに順天堂で行っているがん遺伝子パネル検査(MSK-IMPACT)では、下記のような検体は解析に不適としております。
・脱灰した標本 (骨転移腫瘍や原発性骨腫瘍など)
・中性緩衝ホルマリン以外の緩衝作用のないホルマリンや酸性ホルマリンで固定された
 標本
・ホルマリン固定時間が長い(48 時間を超える)標本
・ホルマリン固定後 6 年以上経過している標本
・過去に受けた放射線治療の照射範囲に含まれていた組織の標本

がんゲノム治療が必要とされる個人の自覚症状は、どのようにわかるのでしょうか。

この検査は手術した検体を用いて行いますので、自覚症状とは特に関連はありません。