第27回市民公開講座 質疑応答:講演1
質問内容は、皆様にわかりやすいよう一部内容修正しています
講演1:「神経内分泌腫瘍とは?~診断と治療~」
- 乳がんからの転移はあるのでしょうか。また、男女の比重はなく、年齢など幅広い罹患なのでしょうか。
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乳がんとは全く別の病気です。男女比や好発年齢は、腫瘍の種類によって異なります。例えば、インスリノーマでは、女性の方が1.4-1.7倍多く、好発年齢は60代とされています。
- 消化管に発症するとのことですが、脳などの神経系には発症しないのでしょうか。神経内分泌腫瘍の神経とはどこをさすのでしょうか。
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神経内分泌腫瘍は、脳の下垂体にも発症します。ですが、"神経"系によらず、神経内分泌細胞という、ホルモンを産生する細胞は全身に存在しており、あらゆる臓器から発症しえます。
- 順天堂医院のNET外来の日時や受診方法について教えていただきたい。
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毎週木曜日午前の、肝・胆・膵外科 三瀬祥弘の外来で行っております。11時までに受診して頂ければ、当日に診察いたします。
- 神経内分泌腫瘍の遺伝的な素因についてご説明いただきたい。症状がない神経内分泌腫瘍もあるのでしょうか。
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遺伝性の神経内分泌腫瘍をともなうものとして、MEN-1(多発性内分泌腫瘍1型)が良く知られています。膵臓の神経内分泌腫瘍の他に、副甲状腺機能亢進症や下垂体腫瘍を伴う病気です。神経内分泌腫瘍には、ホルモンが異常産生されることによって症状がでる機能性のものと、ホルモン症状のない非機能性のものがあります。非機能性のものは、早期発見が難しい場合が多いです。
- ロボット手術のメリットやロボット手術に適した患者について教えていただきたい。
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ロボット手術のメリットは、小さな創で精密な手術ができることです。膵臓の手術は難しく、お腹を大きく開いて外科医が直接操作する開腹手術が主流でした。この10年で腹腔鏡手術が普及しましたが、腹腔鏡手術では創が小さい反面、細かな操作が難しいことが難点でした。ロボット手術は、腹腔鏡手術の欠点を克服し、開腹手術の良さを継承した手術と言えます。 しかし、お腹を開かずに限られたスペースで操作をするため、内臓脂肪の多い患者さんでは手術が難しくなります。また、悪性度の高い腫瘍では、血管を一緒に切り取ったりする拡大手術が必要となり、ロボット手術は今のところ適していません。
- 神経内分泌腫瘍の発症の原因を教えてください。
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神経内分泌腫瘍は、神経内分泌細胞と呼ばれるホルモンを産生する細胞が異常増殖することによって発症します。その原因ははっきりとしていません。
- 良性、悪性の鑑別診断基準について教えていただきたい。
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腫瘍を針などで採取して悪性度を診断します。顕微鏡で腫瘍細胞を観察し、腫瘍の増殖速度を表す指標(Ki-67、核分裂像)で、良悪性を診断します。悪性度の低いものから、G1、G2、G3、NECに分類されます。
- 悪性の場合の予後不良因子、予後改善のための方法について教えていただきたい。
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上記の腫瘍増殖能が高いもの、リンパ節転移を有するものなどが予後不良因子となります。予後改善のために、悪性度や腫瘍の広がりによって局所治療(手術、内視鏡的切除)、または全身治療(薬物、放射線)を行います。
- 神経内分泌腫瘍といわゆる一般に言われるガンとの違いは何でしょうか。また病気の進行における症状の違い、治療や投薬の違いはあるのでしょうか。ガンとはまったくの別のものと考えたほうがよいのでしょうか。
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一般に言われるガンは、発生する場所によって治療法が決まってきます。ですが神経内分泌腫瘍では、同じ場所に発生してもその悪性度によって治療法が大きく変わります。腫瘍が小さくリンパ節転移がないかたでも、悪性度が高ければ手術や内視鏡的切除では治療が難しく、全身治療の適応となります。ですので、神経内分泌腫瘍では場所や病気の広がりだけでなく、悪性度の診断が重要となります。