診療実績

今日、外科学の分野への新しい技術の導入、内視鏡的治療技術の進歩など、目ざましいものがあります。年間約650例の手術を行っていますが、そのうちの約250例が大腸がんを中心とした悪性腫瘍です。

1.手術実績の紹介

外科的治療の原点はやはり外科手術です。
患者さんの体への負担の少ない低侵襲な手術を心掛け、より早い社会復帰に科をあげて努めております。最近は、治療の内容も従来の開腹手術から、内視鏡治療や腹腔鏡手術などの低侵襲な治療へ移行してきています。
年間の手術症例は、約650例です。大腸がん症例は約250例。昨年の腹腔鏡手術は174例、ロボット支援下手術は18例となっております。
また、直腸がんでは機能温存手術を目指し、肛門機能を温存するISR(括約筋間直腸切除術)超低位前方切除術も行っています。一方、下部進行直腸がんに対しては、手術前に放射線化学療法や化学療法を行った後に、腹腔鏡手術や開腹手術を施行し、局所再発や生存率の改善を図っています。

大腸悪性疾患 治療症例数の推移

グラフ:大腸悪性疾患 治療症例数の推移

大腸癌手術症例数の推移

グラフ:大腸癌手術症例数の推移

2.大腸内視鏡検査(Colonoscopy)

外来・入院をあわせた大腸内視鏡検査は、年間約1,700例を行っております。原則として鎮静剤と鎮痛剤を併用し、リラックスした状態で検査を受けていただいています。麻酔ではありませんので、苦痛がまったくないわけではありませんが、少しでも楽に検査を受けていただけるように心掛けています。
さらに、年間 約480例(約760病変)の大腸ポリープ切除などの内視鏡的処置を行い、約40例の大腸がんを含みます。当科での内視鏡治療は、病変を通電して切除するEMR(内視鏡的粘膜切除術:Endoscopic Mucosal Resection)と呼ばれる手技ですが、小さな病変に対しては通電を行わないで切除するコールドポリペクトミー(Cold snare polypectomy)も行っています。また、大きな腫瘍を一括で切除するESD(内視鏡的粘膜下層剥離術:Endoscopic Submucosal Dissection)という治療法も積極的に取り入れています。

大腸ESDが1,000病変を超えました!

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、日本で考案された優れた治療法です。これまで内視鏡では切除できない大きな病変も切除することが可能になりました。しかし、大腸のESDに関しては難易度が高いため、現在では限られた施設でのみ行われています。一般的には、消化器内科や内視鏡科が担当し、外科が大腸ESDに取り組んでいる施設は多くはありません。当科は2006年から大腸ESDを導入し、先進医療を経て保険適応になった今日まで900例以上の大腸ESDを経験することができました。安全を心がけ、これまで穿孔などの偶発症で緊急手術になった例はありません。

大腸ESD

大腸ESD手術件数 年次推移

グラフ:大腸ESD手術件数 年次推移

外科が大腸ESDに取り組む意義は、「腺腫や粘膜内癌で手術になる例を減らし、その分を他の手術例に充てる」という考えです。大腸腺腫や大腸粘膜内癌はリンパ節転移がないため、リンパ節郭清を伴う腸管切除の必要はありません。しかし、大腸ESD導入前は、「内視鏡的に切除が困難・・・」と判断された病変は、安全性を考慮して手術が行われることがありました。大腸ESD導入後は、これまで内視鏡的に難しいとされた病変も切除するようになったため、腺腫や粘膜内癌で手術になる例を減らすことができました。そして、その手術予定を次の患者さんに充て、手術が必要な患者さんに、少しでも早く手術を受けていただくことを心がけています。

グラフ:大腸腺腫、粘膜内癌の手術例

「大腸腺腫や粘膜内癌は、できるだけ手術ではなく内視鏡で治療する」という方針は、当院の消化器内科も共通の認識を持っており、消化器内科と当科を併せると、年間で約200例の大腸ESDの治療を行っています。
「大腸ESDの適応」や「内視鏡的に切除が困難・・・」という症例がございましたら、御紹介していただければ幸いです。また、内視鏡治療の適応から外れる症例に対しても、腹腔鏡手術による治療で迅速に対応致します。

3.腹腔鏡下大腸切除術(Laparoscopic Surgery)

~より低侵襲で、安全な手術をめざして~

腹腔鏡下大腸切除術 手術風景

当科では、大腸がん全体で年間約210例の手術を行っており、その中で腹腔鏡を用いた手術は、年々増加し、昨年は174例の患者さんに手術を行いました。特に、最近では直腸がんの患者さんの約97%に腹腔鏡手術を行っています。
また、大腸がん以外の疾患(小腸疾患や虫垂疾患)に対しても、症例によっては腹腔鏡を用いて治療を行うこともあります。
症例によって一様ではありませんが、腹腔鏡下大腸切除術を受けた患者さんの術後在院期間は7~9日となっており、通常の開腹手術よりも早期の退院が可能です。
大腸がんにはさまざまなステージ(病期)のものがあり、それに対して最適な治療法を選択する必要があります。私たち大腸・肛門外科での腹腔鏡下手術の適応は、以下のようになっております。

腹腔鏡下大腸切除術の手術適応

占居部位
盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸S状部(RS)・
上部直腸(Ra)、下部直腸(Rb)・虫垂・肛門管
深達度 SS(漿膜下層),SE(漿膜表面の露出)までのもの

従来の開腹手術では、大きく腹部に皮膚切開を行っておりました。それと比較して、腹腔鏡下手術では手術創は小さな(3~12mm程度)器具と切除する腸管を取り出す小開腹創で手術を行うため、美容上も優れ、社会復帰も早いものとなります。

4. ヘルニア疾患(Hernia)

当科では、鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなどに代表される、各種ヘルニア疾患に対しても積極的に手術を行っております。手術症例数も年々増加しており、昨年は121例の手術を行っております。手術方法においても腹腔鏡を使用したものから、全身麻酔を行わず、入院期間の短縮が望める局所麻酔下の手術も取り入れております。

鼠径ヘルニア 2018年症例 内訳

グラフ:鼠径ヘルニア 2018年症例 内訳

5. 肛門疾患

痔核(いぼ痔)、痔瘻(あな痔)、裂肛(きれ痔)を中心とした良性の肛門疾患に対しても積極的に治療に取り組んでいます。

痔核(いぼ痔)の治療

まずは軟膏治療などの薬剤治療を行います。薬でよくならないときは手術を考えます。手術には切除する方法と注射療法があります。それぞれの治療の利点、欠点を丁寧にご説明し、患者さんの希望に最も添えるような治療法を相談しながら決めていきます。

痔瘻(あな痔)の治療

痔瘻は基本的に手術を行います。痔瘻の手術は、再発や肛門の締まりが悪くなるといったリスクがあります。痔瘻の場所や深さによって手術法が異なるため、なるべく負担や合併症の少ない治療方法を選んでいきます。

裂肛(きれ痔)の治療

症状が強くないものは軟膏治療などの薬剤治療を行います。薬でよくならないときは手術を考えます。きれ痔を繰り返すうちに肛門が硬く、狭くなるため、肛門狭窄の手術では、肛門を緩める手術を行います。

また、当科では肛門疾患だけでなく消化器疾患全般に精通しており、肛門疾患とそれ以外の疾患との判別を含めた、総合的な診断・治療を行っています。また、その診断に有効な大腸内視鏡検査においても、豊富な実績を持ち合わせています。

【取り扱っている主な疾患】

  • 痔核、痔瘻、裂肛
  • 排便機能障害(便秘、便失禁)
  • 難治性肛門疾患(複雑痔瘻、肛門狭窄)
  • 直腸脱、肛門周囲膿瘍、肛門皮垂、肛門ポリープ、尖圭コンジローマ、膿皮症、肛門がんなど

肛門疾患治療症例数推移

グラフ:肛門疾患治療症例数推移

6. 周術期創部感染対策

SSI(手術部位感染: Surgical site infection)は、手術による切開部に感染が生じる切開部SSIと、腹腔内に感染が生じる臓器/体腔SSIに大きく分類されます。SSIは一旦発生すると入院期間が延長し、患者さんの手術治療に対する満足度が著しく損なわれる原因となります。一般的に大腸の手術では他の部位に対する手術と比較し、高率にSSIが発生すると報告されております。SSIサーベイランスは単なる調査ではなく、積極的にSSIを減少させるための感染対策の活動ですが、当科ではSSIサーベイランスを積極的に実施して、SSI発生率の減少に努めています。

大腸がん手術におけるSSI発生率

グラフ:大腸がん手術におけるSSI発生率