診断部門

CTを用いた画像診断

CTとはComputed Tomography:コンピュータ断層撮影法の略であり、エックス線を使って身体の断面を撮影する検査です。患者様の体の周囲を360度方向から連続的にエックス線を当て、身体を "輪切り"にした断面像を構成します。当院は最新鋭装置を含む6台のCTを所有しており、2021年度は8万件を超える検査を行っています。

放射線科画像診断医が数多くのエビデンスやガイドラインに基づいて綿密に検査計画を立てて検査を行い、質の高いレポートを各診療科に報告するように努めています。また各診療科とカンファレンスを日常的に行い、密なコミュニケーション体制を形成しています。
放射線科17

MRIを用いた画像診断

MRIとはMagnetic Resonance Imagingの略です。強い磁場を用いて行う検査のためCTとは異なり被ばくがありませんが、CTより検査時間が長いという特徴もあります。CT同様にエビデンスやガイドラインに基づいて専門性の高い最新の検査を実施し、質の高い医療を提供しています。

当院では最新鋭機種を含む7台のMRIが稼働しており、2021年度では検査件数が年間4万5000件を超え、本邦において有数の検査数を誇っています。また研究面においては非常に多くの研究業績を挙げて本邦のみならず世界をリードしており、日本医学放射線学会や日本磁気共鳴医学会では中心的な役割を担っています。
放射線科_MRIを用いた画像診断
放射線科対象疾患・治療方法MRI②
放射線科対象疾患・治療方法MRI③

超音波を用いた画像診断

超音波とは人の耳では聞こえないほどの高い周波数の音のことです。超音波は臓器や組織の境界で反射する性質があり、この性質を利用して画像を作成します。検査時間は10分程度であり、部位によっては数秒の息止めのご協力をいただきながらタイミングを合わせて検査をしていきます。音を利用しているため被ばくの心配がなく、また痛みもありません。

当科では腹部臓器に対する腹部超音波検査のほか、甲状腺・乳腺・皮膚腫瘍など体表超音波検査を対象としています。各診療科からの依頼を受け、完全予約制で行っています。
放射線科11

PET-CTを用いた画像診断

PETとは、positron emission tomography(陽電子放出断層撮影)の略であり、放射能を含む薬剤を用いる核医学検査の一種です。放射性薬剤を体内に投与し、特殊なカメラを用いて画像化します。CTやMRIなどの画像検査では胸部・腹部など部位を絞って検査を行いますが、PET検査では全身を一度に調べることができます。

中心としているのはブドウ糖代謝の指標となる18F-FDGという薬剤を用いたFDG-PET検査です。悪性腫瘍や悪性リンパ腫、心サルコイドーシス、大血管炎などに適応があり、代謝の機能の異常から病気を見つけたり、詳しく調べたりすることができます。 薬剤は静脈から注射し、薬剤を全身に行き渡さらせ、1-2時間後に撮影をします。ブドウ糖代謝を利用した検査であるため、正しく検査を行うために、検査前の絶食や血糖管理、薬剤投与後の安静などの必要がありますが、副作用がなく安全な検査です。
放射線科_PET-CTを用いた画像診断

各種放射性医薬品を用いた核医学画像診断

核医学画像診断とは、微量の放射線を出す放射性医薬品を体内に投与し、投与した薬品が臓器や体内組織などに集まる様子を画像化する検査です。形態的な情報ではなく、血流や代謝など機能的変化を画像情報として描出するため、形態上の変化が現れる前の兆候をより早期にとらえることができます。

投与するのは極微量の放射性物質であるため、実際に普通の生活で自然界から受ける1年間の放射線量とほぼ同程度です。また放射性医薬品は、放射線の量そのものが時間とともに減少し、また尿や便から速やかに排泄されます。重篤な副作用の報告も世界的にほとんどなく、安全に行える検査です。

IVR(カテーテルを用いた血管内治療・診断、画像誘導下治療)

放射線科14
血管内治療は患者様の負担が少ない治療法として注目されています。足の付け根から注射を行い、血管内をカテーテルと呼ばれる管を通して目的臓器へアプローチして治療を行います。
特に腎血管筋脂肪腫や子宮筋腫に対する血管内治療は本邦において有数の症例数を誇り、安全で良好な治療成績を得ています。他にも、肝臓をはじめとした癌に対する抗癌剤の血管内治療も積極的に行っています。生活の質を落とさない、効果的な治療法として今後は更に普及すると考えています。

その他、中心静脈用ポート留置術やマンモトームによる乳腺生検、CTガイド下生検やドレナージ術など、診断機器を利用した多種多様な手技や治療も多く施行しています。
近年では腎癌に対する凍結療法などの低侵襲治療も行っており、患者様の様々なニーズに応えた治療を提供しています。

治療部門

放射線治療とは

放射線治療は外科治療・化学療法(抗癌剤治療)と合わせがん治療に対する三本柱の一つです。二人に一人が癌になると言われている現在、様々ながん腫、進行状態に応じて幅広く放射線治療は用いられています。

放射線治療には痛みが少ない、臓器の形態や機能が温存できる、副作用が少なく手術ができない方も治療できる、手術や化学療法と合わせることでより良い治療効果が得られるなどの特徴があります。

当院の特徴

放射線科_当院の特徴

当院は1000床を超える病床を持ち、多くの診療科を有する総合病院です。放射線治療を行う患者さんは併存症を抱えていることも多いため診療科の垣根を越えた横断的な診療が必要であり、当科でも様々な診療科と協力し治療を行っております。高精度治療をはじめとした治療には医師のみならず看護師・治療を専門とした診療放射線技師・医学物理士を含めたチーム医療が重要となっております。当院では様々な診療科とのカンファレンスを行い治療方針の検討を行い、看護師・診療放射線技師・物理士とも親密な連携をとり治療を行っています。
また、様々な最新の放射線治療装置を備え、高精度治療を始めとし疾患に応じた放射線治療が可能となっております。高精度治療が可能になったことにより、従来他院へ紹介しガンマナイフで治療を行っていた転移性脳腫瘍等にも当院で病変へのピンポイント照射を積極的に行っています。

患者さんの負担低減のため、乳癌・前立腺癌等に対し科学的にその有効性と安全性が確認されている少分割照射(通常の放射線治療に比べ通院回数を大幅に減らすことの出来る治療)を積極的に行っています。

治療の流れ

放射線治療の流れとしては下記のようになります。詳細な治療の流れについては治療説明時に行わせて頂きます。
  1. 医師による診察
  2. 放射線治療計画CT
  3. 専用の装置を用いた放射線治療計画
  4. 医学物理士による精度管理
  5. 放射線治療の開始
放射線科13医師による診察
放射線科_治療の流れ01放射線治療計画
放射線科_治療の流れ02放射線治療の開始

当院での取り組み

当院はより良い治療を提供すること、放射線治療を受ける方へ詳細な情報を提供することを目指しております。疾患別の取り組みについてもまた、詳細な取り組みについては疾患別の取り組みについてもご参照ください。

疾患別の取り組み

中枢神経腫瘍(頭蓋内発生の悪性腫瘍及び転移性脳腫瘍)

脳腫瘍は脳またはその周囲に出来る腫瘍です。脳から発生した原発性脳腫瘍と肺癌や乳癌など他の部位の癌が脳に転移した転移性脳腫瘍があります。治療方針は国内外の臨床ガイドラインを踏まえたうえで、脳神経外科や各診療科の医師と常に連携をとり、病気のタイプや病状、治療の目的に合わせて最適な治療を提供します。病気のサイズが大きい時はIMRT(強度変調放射線治療)という高精度治療により患者さんに負担の少ない治療を提供しています。また、少数かつ小さな病変の時にはSRT(定位放射線治療)が非常に有効な治療であり、当科では最新の治療機器(Varian社製TrueBeam、および島津製作所製SyncTrac FX4による骨照合システム)を用いより高精度な治療を行っています。また当院ではSRTの際にはダブルシェルという特殊な固定具(お面)を使用することで、ガンマナイフ治療で用いられる事の多い頭部へのピン固定を用いることなく、患者さんに負担の少ないかつ高精度な治療を提供しています。

頭頸部悪性腫瘍(上・中・下咽頭癌、耳下腺癌等)

頭頸部がんは頭を除く肩から上方に出来るがんを指し、顔面から首にかけてのがんになります。腫瘍が大きくなると、呼吸がしにくくなる、食事ができなくなる、声が出なくなるなどの症状が起こり、生命に関わる状態に直結する部位になります。

治療に関しては、耳鼻咽喉・頭頸科の医師と常に連携をとり、病気のタイプや病状、治療の目的に合わせて最適な治療を提供します。手術不能または手術を希望されない場合の標準治療は化学放射線療法です。当院では放射線治療による副作用を減らすため、専用の治療機器(Accuray社製Tomotherapy)を用いてIMRT(強度変調放射線治療)という高精度治療を行っております。またIMRTに関して、有害事象低減目的の臨床試験にも参加しており患者さんに安全で負担の少ない治療を開発し提供することを目指しています。

肺・縦隔悪性腫瘍

日本において肺癌の患者さんは非常に多く、かつ増加傾向にあります。手術が行えない局所進行期の患者さんの標準治療(もっとも良い治療効果が見込まれる治療)は化学放射線治療です。当院では呼吸器内科及び呼吸器外科の医師と共に化学放射線療法を行っております。最新の治療及び知見をもとに迅速で確実な治療が出来るよう努めております。そして肺癌のみならず胸腺癌や中皮腫等の縦隔悪性腫瘍も多くご紹介頂いており、多くの治療を行っております。
近年、小さい肺癌・転移性肺腫瘍に対してはSBRT(体幹部定位放射線治療)が注目されており、当科では最新の治療機器(Varian社製TrueBeam、および島津製作所製SyncTrac FX4)を用いて体への負担が少ない治療を行っております。

乳癌

日本において女性のがん罹患率1位は乳癌です。乳癌において放射線治療は手術を行った後の治療として非常に多く用いられています。当科では、国内外で推奨されている少分割照射(かつての通常分割照射と比較し短い期間で治療が完了する)を用いて、患者さんの生活とがん治療の両立を目指した治療を実施しています。左乳房への照射の際には心臓の線量を下げるため深吸気時照射(DIBH)を用いた照射技術を確立し日々の診療で実施しています。

消化器悪性腫瘍(食道癌、大腸癌、肝癌、膵癌等)

消化器内科/消化器外科の先生と緊密に連携を取って診療を行っております。 手術が行えない食道癌に対しては根治を目指した化学放射線療法もしくは放射線治療を実施しています。
また、直腸癌に対しては骨盤内再発を減らすために術前化学放射線療法を実施しています。
肝細胞癌、転移性肝腫瘍に対しては積極的に体幹部定位放射線治療を実施しています。当科では最新の治療機器(Varian社製TrueBeam、および島津製作所製SyncTrac FX4)を用い、副作用がより少なく、より高精度な放射線治療を目指しています。
その他、腫瘍による疼痛、出血や通過障害に対しても積極的に緩和的放射線治療を実施しています。

婦人科悪性腫瘍(子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌等)

婦人科の医師と緊密に連携を取って診療を行っております。
子宮頸癌に対して根治を目指した化学放射線療法もしくは放射線治療に加えて密封小線源治療を実施しています。当科では3次元画像誘導密封小線源治療により子宮頸癌に対して治療効果がより高く、副作用のより少ない放射線治療を目指しています。
子宮体癌や卵巣癌に対しては、再発後の治療や腫瘍による疼痛や出血に対して緩和的放射線治療を実施しています。転移の個数が少ない場合(オリゴ転移)にも積極的に病巣のコントロールを目指した放射線治療を実施しています。

泌尿器悪性腫瘍(前立腺癌、膀胱癌、尿管癌、腎癌等)

前立腺癌に対して根治を目指した外部放射線治療や密封小線源治療を実施しています。当科では強度変調放射線治療(Varian社製TrueBeam、およびAccuray社製Tomotherapy)により前立腺癌に対して治療効果がより高く、副作用のより少ない放射線治療を目指しています。
膀胱癌に対して膀胱温存を目指した化学放射線療法もしくは放射線治療を実施しています。
尿管癌や腎癌に対して放射線治療を行うことは多くありませんが、再発後の治療や腫瘍による疼痛や出血に対して積極的に緩和的放射線治療を実施しています。
いずれの治療もホルモン療法や抗がん剤等を併用する場合が多く泌尿器科の先生と緊密な連携のもと治療を実施しています。

血液疾患(悪性リンパ腫、造血幹細胞移植前全身照射等)

血液悪性疾患に対し、放射線治療は根治を目指す治療から症状緩和治療どの段階においても重要な役割を担っています。
悪性リンパ腫に対しては最新のPET-CTを用いた診断及びそれに基づき病巣部に絞った照射(ISRT)を実施しています。
また、骨髄移植の前処置としての全身照射も実施しています。いずれの治療も血液内科との連携が重要な病気であるため緊密な連携の上で治療を実施しています。

緩和的放射線治療

近年癌の治療の進歩により癌の治療を行いながらもお仕事等を行っている患者さんも増えてきています。その中でしびれ・疼痛などの病気による症状を緩和することが大切です。当院では放射線治療で転移性骨腫瘍の疼痛軽減や転移性脳腫瘍に対する治療、腫瘍による出血への治療等症状を緩和するための治療を行っております。国内外の診療ガイドラインを踏まえ、患者さんの通院負担をなるべく減らすべく短期間での照射も積極的に行っております。特に骨転移による痛みに対しては、WHOや国際的な診療ガイドラインが推奨している積極的に単回照射(8グレイ)を行っています。

またキャンサーボード(腫瘍の治療に係わる医師による治療方針検討会)も定期的に行っており、複数の診療科、他職種で最適な治療を提供できる体制を整えています。 転移性脳腫瘍に対しては最新の機器による高精度照射(定位照射)等の最新の治療を行っており、正常な脳組織に負担が少ない治療を提供できる体制を整えています。
他の医療機関におかかりの肩でも医療連携を通じで、少ない外来通院回数で初診~照射までを完了することを目指した取り組みも行っています。

甲状腺眼症、ケロイド等良性疾患に対する放射線治療

一般に放射線治療は悪性腫瘍に対し多く用いられる治療法ですが、一部の良性疾患(甲状腺眼症やケロイド等)の症状改善目的にも用いられています。当科では糖尿病内分泌内科や形成外科等院内の他診療科およびご紹介頂いている病院・医院の先生の協力の上治療に取り組んでいます。ケロイドの放射線治療に関しては手術後早期の治療が必要であり、他診療科や紹介頂いた病院・医院とも緊密な連携を取り治療を行っています。治療に必要な通院回数等は病気の種類等により変わりますのでご相談ください。