子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術 詳細説明
【適応】
《臨床症状》
- 月経過多
- 月経痛(月経困難症)
- 過多月経による貧血
- 周囲臓器への圧迫症状(頻尿、便秘)
- (不妊)
- (不育症)
《対症療法》
- 開腹手術(子宮全摘術、筋腫核出術)
- 内視鏡手術(腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術)
- 薬物療法
- 子宮動脈塞栓術
【治療のながれ 詳細】
① 《受診》
- 婦人科、放射線科を受診
② 《MRI》
- 治療前に、MRIおよび造影剤を用いない MR Angiography(MR血管撮影)で、子宮筋腫および子宮動脈の走行を確認します。
③ 《UAE適応の決定》
- MR画像や臨床症状により決定
④ 《入院 (UAE前日)》
- 入院後、麻酔科医によりUAE当日に使用する硬膜外麻酔のチューブを背中から留置します。
⑤ 《UAE》
[ 治療の方法・手順 ]
右(左)足の付け根の部分からカテーテルを挿入します。
- まずカテーテルを挿入する部位を清潔に消毒し、術野が清潔に保てるように、頸からつま先を覆うように布をかけます。
- 次にカテーテルを挿入する部位に局所麻酔を行います。使う麻酔は歯医者さんで使用するものと種類は同じですが、皮膚や皮下の組織に注射をするので、その時に痛みを感じます。麻酔が効いてくると痛みは消失します。
- 鼡径部の皮膚を数㎜程度切開し、注射針で大腿動脈を穿刺します。
- 直径約2㎜の太さのカテーテルを大腿動脈から腹部大動脈にかけて挿入し、骨盤の動脈を撮影して両側子宮動脈を確認します。
- 次に右または左の子宮動脈にまでカテーテルを進めます。カテーテルの操作は、違和感はありますが通常痛みを伴いません。
- カテーテルを子宮動脈内まで挿入した後、直径約1㎜の太さのマイクロカテーテルを子宮動脈上行枝もしくはその近傍まで挿入して、塞栓物質を注入していきます。子宮動脈の血流が停滞するまで塞栓物質を投与し子宮動脈の血流が停滞した時点で治療を終えます。
- 次いで反対側の子宮動脈にカテーテルおよびマイクロカテーテルを挿入し、同様の治療を行います。
治療中にほとんどの方が、下腹部に違和感や痛みが生じますが、当科では下腹部に痛みの徴候が出る前から、点滴やあらかじめ挿入していた硬膜外麻酔チューブから鎮痛剤を投与するため、痛みの程度が軽減します。右と左の子宮動脈に注入する塞栓物質の量は、治療中に画面を見ながら動脈の塞栓、停滞の状態をみて決定しています。なお、まれに卵巣動脈が筋腫を栄養にしている場合があり、その場合は卵巣動脈からも塞栓物質を注入して治療を行います。
治療が終了したらカテーテルを抜去し、足の付け根の部分を約10分間用手的に圧迫します。
大腿部の穿刺部位を4時間程度圧迫止血後、トイレに行ったり歩いたりすることができます。
[ 副反応 ]
*よく見られるもの
- 下腹部痛:術後1-2時間後がもっとも強く、鎮静剤・硬膜外麻酔で対処します
- 発熱
- 骨盤内の感染など
*稀に見られるもの
- 穿刺部の血腫(たんこぶ)
- 膀胱・直腸、坐骨神経障害:子宮動脈以外の血管に塞栓物質が入った場合に起こることがあります
- 卵巣機能低下:卵巣動脈も塞栓した場合に起こります
- 肺塞栓症
- 動脈解離 など
⑥ 《退院 (1週間)》
- 副反応が見られず特に問題がなければ、およそ1週間で退院となります。
⑦ 《1ヵ月後診察》
- 提携する婦人科を受診していただき、症状改善や副反応の有無を確認します。
⑧ 《3、6、12ヵ月後診察》
- 症状改善の確認とともにMRIを行い、筋腫がどの程度縮小したかを確認します。