第4回 「放射線診断専門医とは」

掲載日:2012.08.06
桑鶴良平 (放射線診断学講座 教授)

最近お会いした当講座OBの先生に、「放射線科って何するの」と未だに医師会で訊かれるのだがもっと啓蒙が必要なのでは、とのご意見を戴いた。
ご指摘の通りである。
こういったご指摘は長年開業されている大先輩の先生方に多い。CTもMRIも無かった時代に卒業された先生方は、放射線科医が画像診断を行っていることを実際にご覧になったことがないため、実感が湧かないのだと思われる。画像センターに検査依頼をして返ってくるレポートの多くが放射線科診断専門医によるものだということは、おそらく認識されていないと思う。大学に紹介して帰ってくる画像診断レポートも放射線科診断専門医により作成され、主治医の先生のダブルチェックを受けてから返却されているのだが、主治医の先生だけが読影していると思われているのであろう。
放射線科医に対しては、医師でさえこの程度の認識なので、一般の国民や実習に回ってくる前の医学生には、業務内容が更に想像できないようだ。未だに放射線科診断専門医と診療放射線技師の区別がつかずにX線写真を撮影していると思っている方もおられる。
放射線科治療専門医は、放射線を用いて特にがんの治療をするということで近年の認知度向上は著しいが、放射線科診断専門医は各科診療の陰に隠れがちである。どちらかと言えば縁の下の力持ちのような役割が多い。
実際は、毎日大量のCT、MRIなどの画像検査の読影をしてレポートを書いている。その量は年々増加しており、一検査のCTやMRIの画像の枚数が500枚を超えることもしばしばある。そのような膨大な画像を丹念に読影し、レポートを書いて返却している。診療に貢献しているのだ。ご自分の専門領域はご自分で診断できると豪語する臨床の先生方も、ご自分の専門領域以外については、放射線科診断専門医のレポートを頼りにして下さっている。ご自分の専門領域でも、画像に関しては我々のレポートを信頼して下さる先生も数多くいらっしゃる。画像診断専門医は、中央部門の一員として各科横断的に画像診断レポートを書き、日常の各科診療の一部となっていることを強調したい。そして画像診断が診療の決め手となっている疾患が少なからず存在する事も付け加えたい。
近年の画像診断を用いた低侵襲診療(IVR)は、益々その有効性を増している。低侵襲に治療することにより様々なメリットが得られるが、我々の施行している低侵襲診療については、別の機会に詳細に述べたいと思う。
お陰様で、当院の画像診断件数、IVR件数は共に豊富であり、今後も画像診断、IVRは日常診療で益々必要性が高まり、それに応えていきたいと思っている。
一方で、こういった事実を世間にアピールできていないのは、私共、大学に在籍するものの怠慢であると猛省している。
現在、ホームページのリニューアルを行っており、近々に私共の行っている診療を順に公開し、放射線科診断専門医についてアピールをしていく予定である。