第5回 「IVR(低侵襲治療)の将来」
掲載日:2012.11.21
桑鶴良平 (放射線診断学講座 教授)
近年入局してくる男性医師の多くがIVR(低侵襲治療)に携わりたいと希望する。大変うれしいことである。2012年6月中旬から念願のIVR-CTが稼働し、毎日IVRが施行可能な体制も整えた。CTで治療部位を確認しながら治療を行えるため、導入後4ヵ月が経過した現在、治療効果の更なる向上に確かな手ごたえを感じている。
当科のIVRはここ3年で飛躍的に質の向上と量の増加が得られた。今年は新たな機器の導入により、更に精度を増し対象疾患も増加している。近い将来に先進医療を含めた新たな手技の導入も予定している。
放射線科画像診断学の診療は質の高い画像を作成し、その読影診断をすることと、画像機器を用いてIVR(低侵襲治療)を行うことの2本柱からなっており、3年前に当科に赴任した時は、各科からもっと当科に治療を依頼して戴きたい患者さんが多く存在すると感じた。施設を変わりIVRの普及に努めた2度の経験では、それを普及するには3年近くはかかると思われたので、拙速にならないように体制を整えながら院内広報活動に努めここまで来ている。お陰様でいくつかの分野では日本でも有数のIVR施行施設となった。
リンパ脈管筋腫症患者さんに合併する腎血管筋脂肪腫の予防的動脈塞栓術は、元来症例が少ない疾患だが、約2年で20例を超える患者さんの治療を行った。遠方から治療を受けに来られる患者さんもおられ、学会発表や論文で比較すると、日本でも治療症例の多い施設の1つと思われる。我々の施行している方法による治療効果も今までの発表と比較して良好である。
内臓動脈瘤の治療も着実に件数が増加している。特に複雑型の腎動脈瘤の治療は独自の治療法で成果が得られている。
肝動脈塞栓術も年間100例を超え、今年度は更に増加すると思われる。他のがんに対する化学動脈塞栓術も増えていくと予想される。
こういった治療は今後益々その需要が高まり増加していくと思われ、それに携わりたいと思って入局してくれる研修医の皆さんは、男性、女性を問わず大歓迎である。
安全で、低侵襲かつ効果的な治療法を提供していくことは、患者さんの利益に繋がり、我々の使命でもある。今後、多くのIVR専門医を育てて、低侵襲治療の発展に貢献していきたいと思っている。