第6回 「女性放射線科画像診断医の将来」

掲載日:2013.03.06
桑鶴良平 (放射線診断学講座 教授)

近年、当科に入局する女性医師の比率が増加傾向にある。放射線科画像診断の領域は、年齢による体力の衰え、自身や周囲の生活や社会環境が変わっても、種々の変化に合わせて長く続けられる仕事である。特に出産・育児に直面する女性医師が、研修や業務の中断を最小限にして復帰し、長く続けていける分野だと、入局勧誘の時に強調して伝えている。
結婚して出産し、育児をしながら業務を続ける女性には、現状では医師として1人前になり、社会貢献していく道のりに大きなハンディキャップがある。そのため勤務が断続し、研修医として充分な研修や専門医取得後の更なる実力向上・維持が困難なことも多い。厚労省でもこの点について長年認識しており、改善しようとする動きが活発になっている。私自身、女性医師の研修・業務の継続を何とか支援したいと思い、ここ数年色々と考え準備してきた。
放射線科にはそういった取り組みに際し幾つかの利点がある。まず、画像診断は、急を要する検査はその場で結果を伝える一方で、それ以外の検査は可及的速やかに画像診断結果を返すように努力すれば、読影する時間帯や場所の制限がないという特徴がある。ローテーションを組めば、昼でも夜でも休日でも個々の生活スタイルに合わせて読影することができる。
第二に、何といっても上記のような読影法を可能にした、遠隔画像診断システムの急速な発展がある。セキュリティに気をつけて施行すれば、画像診断は検査を施行した施設に限らずにネットワークを介して自宅などの異なる場所で行うことが可能で、育児を行っている(女性)医師が自宅で施行可能である。2時間おきの授乳の合間に自宅で画像を読影することが可能なのである。そして、自宅読影の日を設けることにより、研修、勤務が途切れることなく継続的に行える。
ビジネスとしての遠隔画像診断は既に実用に入って久しいが、大学などの施設で、施設内で行われた画像検査を常勤医が遠隔画像診断するというシステムはまだ少なく、女性医師の研修、勤務継続を妨げる一因となっている。
今まで当科では該当者がいなかったが、その時に備えて大学で施行した画像検査の遠隔画像診断の準備を行ってきた。今回、該当者が現れ本人の希望もあり、大学上層部とも相談し理解・快諾を得て、産休・育休時に研修のために大学附属病院で施行した画像検査の自宅読影を行うことになった。
本来は、可能であれば産休、育休取得は画像診断専門医を取得してからが良いというアドバイスもしている。それは、ただ画像診断するだけでは画像の成り立ちや検査法の進歩についていけず、現場に居て実際に画像検査を行うことが診断能力の向上に必須だからである。特に専門医になるために種々の指導を受ける必要があり、現場で直接に経験することが必要である。しかし、「あくまで可能であれば、」の話で、決して強制ではなく、個々の事情に応じて臨機応変に対応するつもりである。可能になったら画像検査現場に戻り、研修を続ければよい。
産休、育休、そして育児を行いながら女性医師が研修や勤務を継続していくには、職場のシステムや環境づくりだけでなく、該当者自身の努力や職場の仲間への配慮、感謝が必要であることは、医学生や研修医にも日々伝えている。
女性医師が結婚、出産に際して日常診療から離れることが無いような制度を整えるのは私の責任と思っており、是非そういった道を用意するべく、種々の対策を考えている。
従って女性医師の入局はいつでもwelcomeである。