平成21年入局 井上達郎 「画像診断、IVR、QOL」
皆さんは『放射線科医』と聞いてどのような仕事をイメージするでしょうか。医学生、看護師、研修医、他科の医師など、医療従事者の方や、一般の方々に聞いてみたところ、①よくわからない、②レントゲン(やCT、MRIなど)を撮る人、③画像診断医、④放射線治療医というイメージが主のようです。一般の方は①や②という人が多いのですが、実際に患者さんと接する機会が少ないというのは事実なので仕方ないかもしれません。研修医や他科の医師はさすがに③や④、或いは両方とも答えてくれる方が多いですが、医学生さんや放射線科のない小さな病院の看護師さんなどはやはり①や②という人もいるようです。ここまででお分かりの通り、放射線科医の仕事は画像診断や放射線治療となります。
私は画像診断を生業としていこうと決めた4年目の(医師としては6年目の)放射線科医ですので、ここでは現時点で私が感じている画像診断の3種類の魅力について、皆さんと共有したいと思います。
まずは仕事の面での魅力です。最も重要なことは、様々な分野の正常解剖や疾患を勉強することですが、これは放射線科以外ではなかなか機会がありません。画像診断医は分野の別なく全身の画像検査に対して正確な診断を行い、紹介科や治療方針の選択に対して助言することができます。もちろん、画像診断専門医という肩書が必要で、私はまだ取得していないので上級医への確認は必須ですが、それでもたくさんの先生が相談しに来てくれます。
もう一つ仕事面での魅力は、画像診断医も治療をするということです。ただし放射線治療ではありません。interventional radiology (IVR: 治療に介入する放射線医学)といいますが、たとえばvascular (血管系の) IVRとして悪性腫瘍に対する動注化学塞栓療法 (TACE)、動脈瘤や出血に対する動脈塞栓術、良性腫瘍のサイズ縮小のための塞栓術、non-vascular (非血管系の) IVRとして、CTガイド下生検による診断、圧迫骨折に対する椎体形成術など、これもまた様々な分野で活躍できます。詳しく書くときりがありませんが、その侵襲性の低さと奏効率の高さは医師、患者さん双方に大変歓迎されています。
次に研究面ですが、放射線科は比較的新しい分野なので、可能性も広大です。画像診断装置の機能向上や、IVR領域の活躍できる分野の拡大により、多方向から研究材料が集められます。具体的には当科では、臨床研究に加えて基礎研究面で再生医療について、放射線科的立場からIVRに生かすことができると期待して研究しているところです。夢のある研究ではありませんか!個人的には組織の病理を自分の目で見て、画像所見との対比を勉強したいとも思っています。何を勉強するかは自由です!
最後に、生活面です。これは科の選択に欠かせないという人もいるのではないでしょうか。そう、QOLです。当院では放射線科に病棟はないので、当直がない限り基本的に休日は休日です(緊急のIVRの依頼はありますが)。そして東京での生活は経済的に負担がありますが、現在は新入局員は全員有給、あるいはそれと遜色ない収入を約束されます。休日は研修や研究に励む一方で、各々が思い思いのプライベートの時間を過ごす時間もあります。臨床、教育、研究の仕事も大事ですが、自分の時間や家族との時間も大切にしたいという方にはとても適している環境ではないでしょうか。
今まで述べた事から、放射線科画像診断学の魅力の一部でも皆さんにわかっていただければ幸いです。興味がわいた方はもちろん、方向性に迷っている方も一度は当科に見学に来て、ご自身でこの魅力を体感していただきたいと思っています。まったく興味のない方も、画像診断の不要な科は存在しないので、ぜひ勉強しに来ていただきたいと思います。注射がうまくなりますよ。2か月研修すれば超音波もじっくり勉強できますよ。