専門研修プログラム

はじめに

1895年にエックス線が発見されて以来、130年余りの年月が経ちました。
 放射線医学はより広く診断や治療に活用されており、もはや現代医療の中心的な役割を担っており不可欠なものとなっています。
 放射線診断部門では、放射線を用いた検査に代表されるCTの他、MRIや核医学検査、超音波検査など、幅広いモダリティを扱っています。またIVR（カテーテルを用いた血管内治療などの低侵襲治療）も広く行っております。放射線治療部門では、高度な技術を用いたより精密な照射による治療法を選択出来るようになっており、根治照射から緩和照射まで幅広く行っています。
 我が国では放射線科医がまだまだ不足しており、各種診断装置・治療装置の普及に追いつかないのが現状です。これは逆に、我々放射線科医にとって活躍のチャンスが多いということを意味しています。
 画像診断やIVRに少しでも興味のある方や、がんの最先端医療の担い手となっている放射線治療に携わってみたい方は、是非一度見学にいらしてください。心から歓迎いたします。

放射線科入局後の教育カリキュラム

順天堂大学医学部附属順天堂医院は、日本専門医機構、日本医学放射線学会、日本放射線腫瘍学会、日本IVR学会、日本核医学会、日本超音波医学会の認定施設であり、これらの学会の専門医、認定医の取得を目指します。

専門研修

• 順天堂大学放射線医学講座は、順天堂大学医学部附属順天堂医院（本院）、順天堂大学医学部附属浦安病院、順天堂大学医学部附属静岡病院を基幹施設とし、その他連携する附属病院や関連病院と共に「日本専門医機構認定放射線科領域専門研修プログラム」を展開しています。卒後3年目からの入局に加え、中途入局者も募集しています。
• 放射線科専門研修（3年間）は、熟練した指導医のもとで、放射線医学（放射線診断学、放射線治療学）に関する技能と知識を修得するための研修を行います。共通カリキュラム：本郷（本院）（一般、神経、治療、IVR）、浦安、静岡、練馬、江東区高齢者医療センターの附属病院を3ヵ月～6ヵ月単位でローテーションします。それぞれ特色のある附属病院をローテーションすることで、症例や検査内容の偏りなく研修できます。
• 放射線科専門研修修了後（入局4年目の夏）に「放射線科専門医」を受験します。
• 放射線科専門医試験合格後、各自希望の専攻（subspeciality）を選択し更に2年間の研修を行った後、「放射線科診断専門医試験」または「放射線科治療専門医試験」を受験します。これに合格すると「放射線科診断専門医」または「放射線科治療専門医」を取得できます。
• その後は指導医の他、更なる専門医・認定医を取得することができます。

※それぞれの研修期間に多少の延長・短縮は起こり得ます。

大学院

• 入局1年目（卒後3年目）から入学することができます。初期臨床研修中や、入局後の専門研修中に入学することも可能です。
• 入学時に研究テーマと指導教官を決定し、卒業に至るまで指導を受けます。定期的なカンファレンスを行い、研究の進行状況を把握します。研究成果を段階的に学会・研究会などで発表し、研究を着実に進めていきます。大学院4年生までに指導教官の指導のもと、研究論文を完成させ、学位申請を行います。
• 専門研修と併せて履修可能です。
• 研究活動と同時に臨床面でもリーダーシップをとるべく研鑽させ、大学院修了後の指導者・教員としての資質を獲得させるよう努めます。

※研究テーマや専攻により、それぞれの研修期間に多少の延長・短縮が起こり得ます。

大学院は以下のコースに分かれています。

○ 神経放射線診断学コース（指導：青木教授）

中枢神経系はCT, MRIの臨床応用が最初に始まったことからも分かるように、技術の応用がまずこの分野からはじまることが多いです。CT, MRIによる精緻な解剖情報から機能局在により脳の機能にせまるだけでなく、functional MRIや核医学検査により直接脳機能の研究も行えます。そのため、高次脳機能研究での役割は大きいです。臨床研究での種々の疾患の画像解析のみならず、画像を用いた脳科学としての研究が広く行えるのがこのコースの特徴です。とくにMRIの拡散を用いた臨床研究では世界的にも第一線の水準で、東京大学、日本大学、東邦大学、大阪大学、千葉大学、九州大学、国立精神神経センター、放医研、都立長寿医療センターなど多くの施設と人的交流や共同研究を行っています。また、順天堂大学附属病院の豊富で多彩な疾患を経験することで、神経関係の臨床スキルも得られます。

現在の主たる研究テーマは、以下の通りです。

1. 拡散テンソル画像を用いた中枢神経系疾患の研究
2. 3TMRIを用いた非造影での脳血流状態の可視化
3. HOP-MRAを用いた頭蓋内微小血管検出力の検討
4. HOP-MRAを用いた頭蓋内微小感染性動脈瘤検出力の検討
5. 『Time-SLIP 法を用いた非造影MRA による脊髄血管奇形の検出方法の確立と診断精度の検討
6. パーキンソン病及び類縁疾患が疑われる患者に対する3TMRI ASL法を用いた脳血流状態の評価（retrospective study）
7. 認知症およびその関連疾患の3T-MRIによる画像統計解析
8. ミエリンマップを含むSynthetic MRIによる脳疾患の病態解明と新たなる診断バイオマーカーの開発
9. ドパミントランスポーターイメージ、脳MRIによるパーキンソン病及び類縁疾患の病態解明
10. 装置バージョンアップ前後の精度及び性能評価におけるボランティア撮像
11. 頭部外傷経験がもたらす脳微細構造や脳老廃物排泄機能の変化の検討
12. 日本人eスポーツ（League of Legends）トッププレイヤーの脳の構造的接続性に関する研究
13. 脳MRIデータベースを用いた精神・神経疾患病態解析
14. MRI検査受診者におけるeGFR値の調査
15. 特発性正常圧水頭症のMRIを用いた定量解析
16. エックス線CT検査に関する医療被ばく実態調査及び線量評価
17. 脳神経疾患に対するMRI検査後に各種撮像法を算出する新たな方法（Synthetic MRI）の検証
18. CT・MRI検査と患者アウトカムの関連の解析：後ろ向き観察研究
19. ドパミントランスポーターイメージによるパーキンソン病及び類縁疾患の鑑別と病態解明　
20. 磁気共鳴画像法(Magnetic resonance imaging)で得られた脳画像と臨床評価尺度のデータベース構築と多施設による共同運用（prospective study）
21. 磁気共鳴画像法(Magnetic resonance imaging)で得られた脳画像と臨床評価尺度のデータベース構築と多施設による共同運用（retrospective study）
22. 3Dプリンティングを用いた冠動脈血流予測モデルの研究（後方視的研究）　
23. 人工知能を用いた画像診断補助の研究 (後ろ向き観察研究)　
24. 次世代拡散MRIとミエリンマップによる脊髄微細構造の描出と病態解析　
25. 画像診断ナショナルデータベース実現のための開発研究　
26. 各種診断支援ソフトウェアの学習および性能改善に関する研究（多施設共同研究）　
27. 胸部レントゲン写真での気胸検出における人工知能の有用性の研究
28. 脳動脈疾患患者に対する、サイレント・スキャンultra-short TE MRIの有用性評価（後方視的検討）　
29. 先端的MRIと人工知能によるパーキンソン病マクロ神経回路異常の解明　
30. 前立腺MRI 解析における人工知能の有用性の研究(後ろ向き観察研究)　
31. 脳MRIデータベースを用いた精神疾患病態解析
32. 構造的・機能的MRIを用いたアスリート脳の可塑的変化の縦断的追跡研究
33. EOB造影MRIとSubtype and Stage Inference (SuStaIn)解析による肝線維化及び肝細胞癌発生予測マーカーの解明
34. 最先端MRIシーケンスによる上腹部領域の新たなイメージングバイオマーカーの検討
35. Comprehensive liver CT（包括的肝臓CT）による肝動脈・門脈血流の定量評価と治療に伴う変化の検討

○ 一般放射線診断学コース（指導：桑鶴教授）

解剖学的構築の把握を重視し、病理所見との対比をつぶさに行う、臨床画像診断の真髄に迫るような研究に取り組みます。
現在の主たる研究テーマは、以下の通りです。

臨床研究

1. 腹部非造影MRA開発　特に肝動脈描出能について
2. 腹部非造影MRA開発　特に腎動脈描出能改善について
3. 子宮動脈　非造影MRAと血管造影における描出能の比較検討
4. 子宮動脈の描出能の1.5Tと3.0Tによる比較
5. アジア人の子宮動脈の分岐パターンの分析
6. 子宮動脈塞栓術の有用性の検討、特に水腫瘍変性を伴った子宮筋腫に対する有用性について
7. MRIによる閉経時期予測の検討
8. 子宮筋腫と肉腫のMRIによる鑑別について
9. 腎血管筋脂肪腫の破裂パターンの分析
10. 腎血管筋脂肪腫に対する動脈塞栓術の有用性の検討
11. 散発性、リンパ脈管筋腫症合併、結節性硬化症合併腎血管筋脂肪腫の動脈塞栓術の適応および再発の違いの検討
12. 腎機能の経時的変化に関するデータベース研究
13. めまいに対する画像診断の有用性に関するデータベース研究
14. 外来患者の転倒リスク因子のデータベース研究
15. 癌に対する血管内治療の有用性の検討
16. 有痛性骨腫瘍に対する血管内治療（緩和治療）の有用性の検討
17. IVR（血管内治療）後の非造影MRAの有用性の検討（特に腎動脈）
18. 早期膵癌の画像診断の研究
19. 3TMRIによる乳腺画像診断の有用性の検討
20. 病理組織AIを用いた、大腸がん予後、抗腫瘍剤に対する反応性の検討

基礎研究

1. μCT血管造影法を用いた脂肪組織幹細胞による血管新生効果の3次元解析
2. その他、脂肪組織幹細胞を用いた研究

○ 放射線腫瘍医コース（指導：鹿間教授）

本コースの目的は放射線腫瘍学の専門医としての論理的思考法を習得し、放射線腫瘍学の発展に寄与する研究者を育成する事です。腫瘍学や病理学・放射線物理・生物学的素養を培い、視野の広い人材育成をめざします。

現在の主たる研究テーマは、以下の通りです。

1. 転移性脳腫瘍に対する定位照射
2. 原発性脳腫瘍における最適な強度変調放射線治療の開発
3. 局所進行頭頸部がんに対する化学放射線療法
4. 小型肺腫瘍に対する呼吸性移動を考慮した画像誘導下体幹部定位放射線治療
5. 食道癌に対する化学放射線療法
6. 乳房接線照射における深吸気時照射
7. 乳房温存療法における超短期照射
8. 肝腫瘍に対する体幹部定位放射線治療
9. 脊椎転移、副腎転移への体幹部定位放射線治療
10. 前立腺癌に対する画像誘導下強度変調放射線療法
11. 在宅ケア中進行期がん患者への緩和照射の普及
12. 緩和照射の質の評価
13. デジタルデバイスを用いたがん患者の経過観察法の開発
14. オリゴ転移に対する放射線治療の最適化
15. スペーサーを用いた婦人科画像誘導小線源治療
16. Mixed Reality技術を用いた次世代型小線源治療補助システムの開発

○ 医学物理士コース（指導:鹿閒教授）

1. 現在の主たる研究テーマは、以下の通りです。
2. TLDシートを用いた線量分布測定
3. 4次元Cone Beam CTの画像再構成と臨床応用に関する研究
4. モンテカルロ計算を用いた医用画像の定量的画質解析
5. 放射線治療における不確かさの解析 5. 治療計画、検証の自動化