頭頸部がん:最近の診断・治療の進歩

NBI(Narrow Band Image)の導入

NBIとは狭帯域光法を用いた電子内視鏡システムで、表在扁平上皮がんの検出に有用とされています。Brownish areaと呼ばれる褐色調の領域と、IPCL(intra-epithelial papillary capillary loop:上皮乳頭内ループ状毛細血管)の変化のいずれも認めた場合にはがんである可能性が非常に高いとされています。本システムを使用することにより上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で早期の咽頭がんが発見されるケースが増えてきています。

声門上表在がんの一例

PET(Positron Emission Tomography)の導入

PET検査はがん細胞が正常細胞と比較し多くのブドウ糖を取り込むという性質を利用して行う検査です。ブドウ糖とよく似た構造をもったFDG(フルオロデオキシグルコース)に18F(フッ素18)という放射性物質を付けた薬を静脈注射し、薬が集まった部分を検出し画像化することで、腫瘍や炎症、脳や心臓の疾患および機能評価を行うことができます。頭頸部がん診断にも非常に有用で治療前評価、転移再発の診断に広く用いられるようになりました。

中咽頭がん(舌根)

しかしFDG-PETは治療後の炎症にも集積するため、放射線治療後の残存あるいは再発診断は困難であったり、もともと糖代謝が活発な脳と近接する頭蓋底病変の診断が困難であったりという欠点があります。炎症の影響を受けにくいとされるPET検査としてコリンあるいはメチオニンといった新しいPET薬剤の研究も進められています。

Human Papilloma Virus(HPV)関連中咽頭がん

頭頸部がんは全がんの5%を占め、従来から飲酒、喫煙が重要なリスクファクターと考えられていましたが、近年注目されたこととしては、HPV関連中咽頭がんがあります。HPVの扁桃陰窩への感染が契機となりますが、oral sexの経験やパートナーが多いほどハイリスクとされて、独立したリスク因子となることがわかっています。HPV関連中咽頭がんは従来からの中咽頭がんと比較し治療方法に関わらず予後良好とされています。したがって侵襲の少ない治療により制御できる可能性があり、治療強度を小さくし有害事象を抑えたオーダーメイド個別化治療が可能かどうかの研究がなされています。

超選択的動注療法

局所進行頭頸部がん症例や眼球・喉頭など臓器温存症例を対象として行われます。根治治療としては放射線との併用で行うことになります。がんを養う動脈に抗がん剤(主に使用される薬剤はシスプラチン、ドセタキセルです。)を注入し、治療効果を高めるだけでなく、全身の合併症を軽減できるという利点もあります。超選択的動注療法により、がん組織内の抗がん剤濃度は通常の点滴法と比べ5倍以上になることが知られており、かつ1週間のインターバルで治療できることから高い抗腫瘍効果が得られます。

右涙嚢進行がん(扁平上皮がん)

中下咽頭・喉頭がんに対する経口的手術

頭頸部外科領域の低侵襲手術として近年発展してきました。TOVS(Transoral Video Surgery)やTLM(Transoral Laser Microsurgery)です。これらの術式は手術侵襲が小さく、良好な機能を温存しながら根治性も劣らないとされています。主に中下咽頭がん、喉頭がんのT1,T2に対して適応があります。近年経口的ロボット支援手術(Transoral Robotic Surgery:TORS)が海外で承認され、3D画像と自由度の高いロボットアームにより安全かつ確実な操作が行える利点があります。日本でも徐々に行っている施設が増加しており、当院でも本年度より本術式を導入しました。詳細はロボット支援下・咽頭手術の項を参照して下さい。現在多施設臨床研究が行われています。

免疫療法

頭頸部がんに対する新たな薬物治療として免疫チェックポイント阻害薬による免疫療法が挙げられます。がん細胞は免疫細胞からの攻撃を逃避するためPD-L1という蛋白質を出し、これが免疫細胞のPD-1と結合すると免疫細胞の働きが抑制されるということが近年昭らかになりました。抗PD-1抗体であるニボルマブは免疫細胞のPD-1に結合しPD-L1との結合を阻害し効果を発揮する薬剤で、プラチナ製剤による治療歴を有する再発転移頭頸部扁平上皮がん患者に対して有効性が認められ、治療効果、予後の向上が期待されています。