喉頭癌

喉頭癌とは

喉頭は気管の入り口にあり、発声や誤嚥を防ぐ機能をつかさどっている臓器です。喉頭癌は同部位にできた癌で発生部位(亜部位)により声門上癌、声門癌、および声門下癌に分けられます。

喉頭癌の臨床的特徴

喉頭癌は頭頸部悪性腫瘍の中で最も多く、全体の約15%程度を占めます。病理組織はほとんどが扁平上皮癌で、腺癌などの組織型は極めてまれです。60~70歳代に多く、性差は10:1と男性に著しく多い疾患です。また、喫煙がリスクファクターとなります。亜部位では声門癌が最も多く約65%程度を占め、ついで声門上癌の約30%と続き、声門下癌は数%しかありません。亜部位ごとに少しずつ症状や進展様式・予後などに違いがあり、それぞれに対応したアプローチが必要となります。

声門上癌

声門上癌では咽喉頭の異物感や嚥下痛が初発症状になる事が多いのですが、早期の症状に乏しく医療機関への受診が遅れがちになります。下方に進展すれば嗄声をきたすようになりますが、この時点ではかなり進行した状態と言えます。声門上腔ではリンパ網が比較的よく発達しており、リンパ節転移は比較的早期に認められます。以上の事より、予後は声門癌より劣ることとなります。

声門癌

初発症状は嗄声が多く、比較的早期に症状が出現するため初期の段階で診断がつきやすい癌です。癌の進行とともに嗄声の程度も増悪し、さらに放置すれば喘鳴や呼吸困難を訴えるようになります。時として呼吸苦で受診され、緊急で気管切開をするようなケースもあります。声門部はリンパ管網が少なく、リンパ節の転移は比較的進行した状態になってから認められます。以上の事より予後は比較的良好な悪性腫瘍と言えます。

声門下癌

声門下癌は無症状に進行し声門部に進展して初めて嗄声を来たします。嗄声の他には咳嗽や喉頭違和感が症状として認められますが、進行した状態で診断にいたるケースが多く認められます。声門上癌と同様にリンパ管網が比較的発達しており、リンパ節への転移も早期に認められます(特に気管傍へ転移は頻度が高くなります)。予後は声門癌と比較し、明らかに劣ります。

診断

嗄声や咽喉頭異常感を訴えた場合には本疾患を疑って診療を進めます。その場合、喉頭ファイバーにて喉頭を十分に観察します。声門上部や声帯に白板状の変化や隆起性病変、潰瘍病変などを認める場合には強く疑い、声帯運動の制限や固定を認めた場合にはより可能性は高くなります。腫瘍が疑われる場合には生検による組織診(腫瘍の一部の採取)が必要になります。生検を行う場合には喉頭ファイバー下に浸潤麻酔などを使用して行いますが反射でむせこんでしまって、うまく採取できない場合もあります。その場合には入院して全身麻酔下に生検を行う場合もあります。画像検査ではCTやMRIを行い癌の大きさと広がりやリンパ節転移の有無を精査します。

治療

喉頭は発声という重要な機能を果たしているので、常に根治性と機能温存との両面より治療法を選択しなくてはなりません。
早期癌に対しては、放射線治療により良好な予後と音声の温存が得られます。またレーザーを用いた経口的切除は放射線治療に比べ治療後の音声は劣るものの短期間で治療が終了できるため積極的に行っています。声帯を温存する喉頭部分切除術なども行われますが術後に誤嚥のリスクを伴うため、ご高齢の方には難しいことが多いです。

一方、腫瘍が大きく進行した癌では手術療法が中心となります。その場合、喉頭全摘術といって声帯を切除する必要があり術後に声を失うことになります。声帯を摘出してしまうと基本的にはお話をすることは不可能となりますが、近年はボイスプロステーシスといって発声機能をとりもどす方法も行われるようになってきています。当科でも本方法をとりいれ多くの症例で施行しています。本方法を行うことによりほとんどの症例では音声によるコミュニケーションを回復できるようになっています。音声の質はやはり声帯の発声に比べると劣り、また自己管理も必要などのデメリットもありますが、以前と比べコミュニケーションがとれるようになったことは大きな進歩と思われます。