経皮的冠動脈形成術(PTCA)・経皮的冠動脈インターベンション(PCI)

順天堂医院では年間約1400件の冠動脈造影および約550件の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行しており、都内でも有数の症例数となっています。緊急PCIは年間約120例で、心肺停止など重篤な症例に対しても、人工呼吸管理、大動脈内バルーンパンピング(IABP)、 経皮的心肺補助装置(PCPS)などの循環補助下でPCIを施行し、救命にあたっております。

冠動脈内ステント留置

病変形態や動脈の蛇行の程度により、アプローチの変更はありますが、当院のPCIは左橈骨動脈アプローチを主体として施行するため、術後の長時間の臥床安静を避けることができます。病変部の治療に際しては、病変の位置や形態を考慮し、薬剤溶出性ステント(DES)の種類を選択したり、患者様の背景などによっては従来型の金属ステント(BMS)を選択したりと、きめ細やかな治療を行っています。更に、全国的な治験に参加し、新型DESの留置や、吸収型ステントの留置も行っています。

ステント留置模式図

図:ステントの原理模式図
出典:インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス(トーアエイヨー)

薬剤コーティングバルーン(DCB)

ステント治療において、BMSでは20-30%、DESでは10%前後の再狭窄を起こすことが知られています。最近までは再狭窄を起こしたステント内に更にDESを重ねて留置する治療法を行っていましたが、当院では2014年より再狭窄抑制薬剤をコーテングしたバルーン(DCB)を使用した治療を積極的に使用しています。この治療法ではステント内の金属量が増えないことや、治療部側枝の血流低下を避けることができると考えています。

ロータブレーター

高度石灰化では、バルーンが通過しなかったり、通過したとしても十分な拡張が得られずステント留置が行えないことがあります。当院でこのような症例に対し、高速(15-20万回転/分)で回転して、石灰化病変を削るロータブレーターを積極的に使用しています。ロータブレーターで削り取られた組織片は理論上赤血球より小さく破砕されるため、血管の末梢で根詰まりしないとされていますが、当施設では全例で手技による血流低下を防ぐ薬剤(シグマート)を投与することで、no-reflowやslow flowといった末梢塞栓による合併症を未然に防いでおります。

写真:治療前、ロータブレータ(矢印)、ステント留置後

慢性完全閉塞病変(CTO)の治療

長期に渡り閉塞した血管はワイヤーやバルーンの通過が非常に困難となっており、治療が難しくなっています。このような治療困難症例を関連施設や他院よりご紹介いただくことが多く、CTOに対するPCIも当院では多数施行しています。当院では順行性のワイヤー通過が困難である場合は、積極的な逆行性アプローチを試み、8~9割と高いCTO治療成功率に達しています。