経皮的血管形成術

歩くと足が重くなることはありませんか?

1.閉塞性動脈硬化症とはなんでしょうか?

閉塞性動脈硬化症(ASO: arterial sclerosis obliterans)は、下肢の動脈硬化が原因でおこる症状で、歩くと足への血流が不足してくるため足が痛くなったりしびれたりします。この症状は休むとよくなるため間欠性跛行と言われます。進行すると、じっとしていても足が痛くなる安静時疼痛やさらに重症になると皮膚に潰瘍、壊死を生じ、ついには下肢切断に至る重症下肢虚血(CLI: critical limb ischemia)という状態になります。喫煙、糖尿病、高血圧症、高コレステロール血症、慢性腎臓病等が危険因子といわれています。動脈硬化は下肢のみに生じるわけではないため近年では全身の末梢血管疾患(PAD: peripheral artery disease)と同義とされています。

2.放置してもよいのでしょうか?

この疾患の10年後の生存率は約50%です。一方で慢性のCLIの予後は極めて不良で発症1年以内の死亡率は20%です。この死亡率は毎年持続するため5年後の生存率は40%となります。この生存率は進行性大腸ガンと同じです。
症状からみた疫学調査ではPADは全人口の3-10%とばらつきがありますが70歳以上に限ると15-20%に上昇していました。まれな疾患ではなく放置してはいけない疾患と言えます。ただし脊柱管狭窄症などの整形外科疾患でも同様の症状が起こります。また糖尿病で神経障害を伴う場合はPADがあっても安静時疼痛などの症状を訴えないこともあります。さらに重症になると動かなくなるため跛行症状は訴えなくなります。すなわち症状だけで判断することが困難な疾患とも言えます。したがって症状がある人はもちろんですが、無症状でも危険因子をもつ65歳以上の方は一度病院で検査を受けることをお勧めします。

3.どのような検査方法があるのでしょうか?

精度の高い客観的な評価としてはABI(Ankle brachial pressure:足関節上腕血圧比)が重要です。上肢の血圧に対する下肢の血圧の比率は正常では1.1ですが0.9以下になるとPADの可能性が高いとされます。

  • ABIを用いた調査では症状のない患者さんは有症状の患者さんの3〜4倍存在しているとされています。無症状であっても健常人と比べると予後が悪いこと
  • 死因の70〜80%は心血管系死亡であることがわかっているため危険因子である基礎疾患の治療をしっかりと行っていく必要があります

4.PADが疑われたらどうしますか?

PADが疑われた場合には、CT検査やMRAなどを行います。(図1)治療すべき血管があればカテーテル検査を行って治療方針を決定します。冠動脈疾患の合併率が高いため一般的には冠動脈CT、頸動脈エコーなどの全身の血管検査も行い心臓カテーテル検査も行うことが多いです。

図:CTアンギオ 腸骨動脈閉塞
(図1)CTアンギオ 腸骨動脈閉塞

5.治療方法はどのようなものがありますか?

血管内治療(ステント、バルーン)、バイパス手術(自己静脈グラフト、人工血管)、内科治療などを考慮します。末梢動脈疾患に対する血管内治療は、治療対象領域により目的と治療方法・治療成績が大きく異なります。

図2:各領域図、図3:図1症例のカテーテル造影。 左:治療前 右:ステント治療後

それぞれの領域ごとの治療ですが腸骨大腿動脈領域では、ステント留置とバイパス治療の成績とほぼ同等であるため、一般的には(図3)のようにステント治療が行われます。浅大腿動脈領域では狭窄の距離が短い場合、血管内治療は良好な治療成績ですが長い閉塞病変ではバイパス(自家静脈グラフト)に比べて良好ではありません。理由として閉塞病変の治療に対するバルーン治療では血管の解離が生じ綺麗にしあがらないこと、浅大腿動脈が可動性に富むため長くステントを留置した場合は破損などが生じ再狭窄の原因となることなどが考えられています。閉塞した長い病変に対してはバイパス術を考慮すべきですし血管内治療を行う場合でも治療成績は落ちますがバルーン治療のみで一度治療を終えることもあります。当院ではその際に通常のバルーンだけでなくNSE(ノンスリップエレメント®)やAGS(アンギオスカルプト®)などの血管に対して解離を最小限に抑えて亀裂を入れるスコアリングバルーンを使用する事もあります。
(図4)また最近は高度に進んだ動脈硬化症に対してcrosser®という血管の石灰を破砕する治療も行っております。膝窩動脈以下領域の治療目的は、足にできた傷・潰瘍のケアや下肢切断の回避が目的です。そのため成績については治療部位の開存率ではなく、治療した患側肢の救肢率や切断回避率で表されます。急速に病状が進行する場合は救肢のためにバルーン治療を緊急で行うことが一般的です。

図4:左・バルーン拡張術、真ん中・バルーン、右・ステント

6.患者さんへのお願い

閉塞性動脈硬化症は全身の血管疾患でありトータルケアが重要です。治療により症状が良くなるだけではなく、今後起こりうる血管疾患の予後も改善しうることが可能です。また当院では重症下肢虚血の患者様にはフットケアチームで治療を取り組んでおります。血行再建術はもちろんのこと血行再建術の困難な症例、他に治療方法のない患者様には当院形成外科と協力のもとに、末梢血幹細胞移植による再生治療という先進医療も行っておりますのでまずはご相談下さい。