SHD (Stractual Heart Disease) へのカテーテル治療

経皮的心房中隔欠損閉鎖術

先天性心疾患の約7%を占めるとされている心房中隔欠損症(ASD: Atrial Septal Defect)に対するカテーテル閉鎖術(経皮的心房中隔欠損閉鎖術)は、2016年末までに国内で8300例以上の症例で行われており、2017年時点で国内62施設82人の術者が認定を受けており、治療を受けることが可能となっています。

2005年に日本国内でAmplatzer Septal Occluder(ASO)の輸入承認が得られ、2006年4月から保険償還されて使用されていましたが、2016年よりFigulla Flex-Ⅱ(FF-Ⅱ)が保険償還となったことで、より多くの症例でカテーテルによる治療を行うことが出来るようになっています。両者にそれぞれ特徴があり、当院では、ASDの形態やサイズ・心房中隔長や周囲のリムの状態を見て使い分けています。
当院では2013年よりこの治療を開始しており、従来からの外科治療と異なり、より低侵襲な治療で欠損孔閉鎖が可能となっています。

国内での治療による死亡例は無く、これまでに行われた症例のうち、脱落やerosion(心臓周囲へのデバイス圧排に伴う出血)などで、レスキュー手術となった症例も僅か36例と、安全かつ有効な治療法として広く認知されています。

画像:(ASO ; SJM社)(FF-Ⅱ;Occlutech社

ASDの病態

新生児期小児期での肺体血流比(Qp/Qs)高値例では、早期に右心不全から肺高血圧へと移行するため、Eisenmenger化(左→右シャントは減少して右→左シャントへ移行)する前に外科的修復を受けることが多い。小児例でも左→右への短絡量が少なければ、学童期を待って修復(多くは経皮的に閉鎖栓を用いて修復)をすることが可能です。
また、成人例の多くは生下時より欠損孔があるため、日常生活の不都合を感じていないことが多いのが特徴です。成人例の一部の方々は、小児期より欠損孔の開存を知らされていることもあるが、気づかれずに成人を迎えていることも多く、健診時の心電図異常や胸部レントゲンの異常で初めて指摘されることもしばしばです。
小児期の左→右短絡が少量であっても、長期の右房・右室容量負荷により、右心系の拡大が生じると、欠損孔の拡大に伴う短絡量の増大が見られるようになり、Qp/Qsの上昇を認めるようになります。また、心房負荷に伴い上室性期外収縮が頻発したり、心房細動へと移行することがあり、心房細動例では抗凝固療法が終生必要となります。ASDが原因の場合は、まず心房細動のカテーテルアブレーション後に、Septal Occludeを用いて欠損孔を閉鎖することで心房細動の再発の可能性は極めて低くなります。
また、このような時期を経てなお放置すれば、将来的には肺高血圧症から右心不全へと発展して、予後不良となる可能性があるため注意が必要です。

カテーテル閉鎖術の適応基準

  1. 二次孔心房中隔欠損
  2. 欠損孔の径が38mm以下の患者
  3. Qp/Qsが1.5以上、または容量負荷による右室の拡張がある
  4. 欠損孔辺縁から冠静脈洞、房室弁、右上肺静脈までの距離が5mm以上

当院では、ASDの疑いで紹介された患者様は、経胸壁心臓超音波検査および経食道心臓超音波を行って欠損孔の有無・欠損孔周囲のリムの測定・心房中隔のサイズ測定などを検討し、カテーテルによる治療が適しているのか、外科手術が適しているのかを総合的に判断して対応させて頂いております。

閉鎖栓(Septal Occluder)を用いた治療例

実際に当院で行われた症例を提示します。
症例は、60代男性で自覚症状は無し。
30代で検診の際に心電図異常と聴診上のⅡ音固定性分裂・収縮期雑音(LevineⅠ/Ⅵ)により、ASDが疑われて他院でカテーテル検査施行歴がある。その際にASD手術適応と言われたが、自覚症状もないため経過観察を希望され、未治療であった。
その後、60代となって血圧軽度上昇を指摘された際に近医で心臓超音波を施行され、再度カテーテル検査を勧められて他院へ紹介入院。その際にQp/Qs 3.24と著明高値のため、経皮的心房中隔欠損閉鎖術の目的で、当院へ紹介となった。
当院初診時、自覚症状はないが心電図上の不完全右脚ブロック所見(Figure 1 左)、胸部X-P上の心拡大と肺動脈陰影の拡大・増強を認めた。(Figure 2 左),
また、当院でのTTE(経胸壁心臓超音波)上のQp/Qsは、2.0であった。

閉鎖栓(ASO)を用いた治療例(無症状の60歳男性)

ECG(Figure. 1)
波形画像:ECG(Figure. 1)術前、術後6ヶ月
胸部X線 (Figure 2)
胸部X線画像(Figure. 2) 左:術前(CTR55%)、右:術後6ヶ月(CTR49%)

TEE(経食道心臓超音波)では、心房中隔欠損孔20×24mmの二次孔欠損型ASDを認め、Aorticリムは一部欠損しており最大部位も4mmと薄かったが、他の欠損孔周囲のリム径は十分であると判断された。(Figure 4 左)
術中の、サイジングバルーンによるstop flowは、24mmで得られ(Figure 3 左)、24mmのASOデバイスを留置しようとしたが、Aortic リムが広範に薄いことにより留置が困難であったため、最終的にはハウスドルフシースを使用して25mmサイズのASOが留置可能であった。(Figure 3 右)

サイジングバルーンによる計測とASO留置(Figure 3)

サイジングバルーンによる計測とASO留置(Figure 3)
術中TEE 所見(Figure 4)
術中TEE 所見(Figure 4)

術中のTEEではデバイスが全周のリムを十分に挟んでいること、L→R shuntの消失とデバイスの心臓周囲への圧排が無いことを確認し、wiggleにより脱落のリスクが無いことを確認後にデリバリーケーブルからreleaseした。

術後経過は良好で、自覚症状は術前に認めなかったが、運動耐用能が自覚的にも著明に上がっており、術後6カ月のfollow upの心電図では不完全右脚ブロックの消失(Figure 1右)と、胸部X-P上の心陰影の縮小を認めた。(Figure 2右

経皮的心房中隔欠損閉鎖術

先天性心疾患の約10%に認めるとされている動脈管開存症(PDA: Patent Ductal Arteriosus)に対するカテーテル閉鎖術(経皮的動脈管閉鎖術)は、2008年12月にAmplatzer Duct Occluder(ADO)が国内で承認され、2009年より治療が開始となっており、2016年末までに国内で1580例以上の症例で行われています。2017年時点で国内57施設67人の術者が認定を受けており、治療を受けることが可能となっています。

画像:図 ADO ; SJM社

PDAの病態

PDAは胎生期に臍帯血が大動脈へと流れるための重要な役割を示していたが、生後呼吸を開始するとともに、肺動脈圧の低下から閉鎖に至るはずの動脈管が持続的に開存しているもので、早産の特に低出生体重児に多く認められ、女児に2倍多いと報告されている。
他の心臓奇形を合併することも多く、PDAのサイズや他の心血管の病態が全身への影響を決定する。PDAの大動脈→肺動脈の短絡量が多いと肺高血圧を生じて肺血管床の障害が起こり肺血管抵抗が上昇、やがて右心負荷を生じて右心不全に陥る。また、心房負荷の増加で不整脈を生じたり、弁膜症同様にシャント部に感染性血管炎を生じると重篤である。

カテーテル閉鎖術の適応基準

  1. 動脈管の最小径が2mm以上、12mm以下であること
      2.0mm未満 - コイル閉鎖
      2.0mm~12mm - AMPLATZER動脈管オクルーダー
      12mm以上 - デバイス以外の手段による閉鎖
  2. 肺血管抵抗(PVR) 8 単位未満、
      もしくは肺体血管抵抗比(Rp/Rs) 0.4 未満

当院では、PDAで紹介された患者様は、経胸壁心臓超音波による心負荷の評価に加えて、造影CTスキャンを行って形態およびPDAサイズの評価を事前に行い、カテーテルによる治療が適しているのか、外科手術が適しているのかを総合的に判断して対応させて頂いております。また、既に肺血管抵抗の高くなった症例では、サイズ・形態に関わらず外科的修復の適応となりますので、心臓血管外科での修復を依頼します。

閉鎖栓(Duct Occluder)を用いた治療例

日齢19で心雑音指摘され、経胸壁心臓超音波でPDAを指摘されていた患者。
1歳時に当院紹介され、心臓カテーテル検査の結果、Qp/Qs 2.5と高値を認め、閉鎖術の適応と診断。術前に心不全徴候を認め、ラシックス・アルダクトンなどの利尿薬を開始して、心不全コントロール後に待機的ADO留置術を行った。

画像:術前大動脈造影: 肺動脈が動脈管を介して造影されている。
画像:ADO留置後: 術前の造影では動脈管径は4.3mmであったが、8/6mm deviceの留置でも閉鎖は不十分で、同device回収後に10/8mm deviceを再留置した