シェーグレン症候群Sjögren's syndrome,SjS

疾患概念・病態

1933年、スウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレン博士が乾燥性角結膜炎、耳下腺腫脹、関節炎を呈する患者群を報告したことにちなみ、このような一連の病態はSjSと呼ばれることとなった。
主に涙腺、唾液腺といった外分泌腺が標的となることを特徴とする全身性自己免疫性疾患の一型であり、リンパ球浸潤が腺組織の障害することで、腺分泌能の低下、眼と口腔内の乾燥症を来す。多彩な自己抗体や高γグロブリン血症の出現などの免疫学的異常を認め、病態の経過中は涙腺、唾液腺のみならず、全身の臓器や粘膜表面に障害を及ぼし得る。
他の自己免疫疾患との合併も多く、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎、混合性結合組織病などと合併する二次性(続発性)SjSと、これらの合併のない一次性(原発性)SjSとに分類される。さらに一次性SjSは病変が涙腺、唾液腺に限局する腺型と、病変が肺・腎臓・膵臓・皮膚・血液・末梢神経など全身臓器に及ぶ腺外型に分けられる。
病像の本態は唾液腺や涙腺といった腺組織へのリンパ球浸潤にあるとされている。浸潤細胞は主にCD4+T細胞からなるがCD8+T細胞も存在している。腺組織に浸潤したリンパ球より活性化された上皮細胞は細胞死を増加させ、このアポトーシス細胞表面に発現した抗SS-A/Ro抗体や抗SS-B/La抗体の発現亢進によりさらに自己免疫反応が活性化されることで、腺細胞の破壊がより進行すると考えられている。近年、異常なアポトーシス、サイトカインバランスとToll様受容体(Toll-like receptor, TLR)の活性化、小血管周囲のリンパ球浸潤がSjSの症状発現前に既に局所組織に存在していることが報告されている。病変組織においてB細胞はより進行した病期部位において認められる。全身性に認められる多彩な自己抗体産生とポリクローナルな高ガンマグロブリン血症といったSjSの病態にはB細胞の活性化が関連しているとされ、こういった全身所見を認める場合悪性リンパ腫発現のリスクが高まるとされている。SjSがリンパ増殖性疾患とも称される所以である。
徐々にSjSの組織学的病態の理解はすすんでいるが、腺細胞に対する細胞浸潤や抗SS-A/Ro抗体や抗SS-B/La抗体、リウマトイド因子(rheumatoid factor, RF)などの多彩な自己抗体産生が病態形成にどのような役割を担っているのかは未だ完全には解明されていない。発病の誘因としてHLAをはじめとした遺伝的背景に加え、女性ホルモンの関与、ヒトT細胞型白血病ウイルスⅠ型(human T-cell leukemia virus type 1, HTLV-1)やC型肝炎ウイルス、Epstein-Barrウイルス(EBV)などのウイルス感染といった環境要因が考えられている。

疫学

2011年の厚生労働省患者調査によるSjSのために病院を受診した1年間の患者数は約9,000人、患者総数は約10万人とされている。有病率は欧米では白人に多く、成人女性の0.6〜4.8%とされており、潜在的な患者数を含めると本邦にも原発性、続発性のSjSを合わせて10~30万人の患者が存在するとも言われている。自己免疫疾患の中でも一次性SjSは特に性差が大きいとされ、その男女比は報告にもよるが1:9~1:20と圧倒的に女性に多い。発症年齢は40〜60歳代が多いが小児から高齢者までその幅は広い。
前述の通り原発性SjSの発症に遺伝的要素が関わっていると考えられており、SjSが家族内で発症する率は2.2%、他の膠原病が発症する率は8.8%と厚生省(当時)特定疾患難病の疫学調査研究班(平成6年)で報告がなされている。
続発性SjSは全身性エリテマトーデスの6.5~19%、関節リウマチの4~31%、強皮症の14~20.5%、原発性胆汁性肝硬変の1.8~35%、甲状腺機能低下症(Grave's病)の1.8~14%に合併するとされている。

診断・鑑別診断

診断は1999年の厚生労働省の改訂診断基準(表1)を用いることが多い。診断基準4項目のうちいずれか2項目が陽性であればSjSと診断する。
海外においては2002年の米国・ヨーロッパ分類(American-European Consensus Group, AECG)基準、2012年に提唱されたアメリカリウマチ学会(American College of Rheumatology, ACR)主導のシェーグレン国際登録ネットワーク診断基準(Sjögren's International Collaborative Clinical Allians, SICCA)が診断に用いられている(表2、3)。
AECG基準は自覚症状の項目があることが特徴であり、組織検査あるいは血液学的検査のいずれかが陽性でなければ診断に至らないようになっている。SICCA基準では、RFと抗核抗体を含めた血清学的検査、組織検査、眼科検査の3項目中2項目で診断可能となっている。簡潔ではあるが、画像検査を検討に含めていない点や乾燥性角結膜炎の評価方法が一般化されていない点が問題と指摘されることもある。AECG基準や本邦の基準における唾液分泌量検査は室温や体調、心理状況などの環境により結果が修飾されうることに注意する。口唇小唾液腺生検は必ずしも診断に必要ではないが、血清学的検査が陰性でもSjSを疑う場合や腺外症状としての臓器合併症からSjSの存在が疑われる場合には検討すべきである。
本邦においては1999年厚生労働省改訂診断基準が感度、特異度ともに最もすぐれていると報告されているが、国際的評価としてはこれらの3つの基準間で大きな差はなく、どの診断基準を用いるのが妥当かというコンセンサスの形成には至っていない。
乾燥症状については、高齢者では加齢による乾燥症や、抗コリン作動薬(ムスカリン受容体遮断薬)、抗うつ薬などの副作用による乾燥症を鑑別する。また、サルコイドーシス、リンパ腫、ヘモクロマトーシス、アミロイドーシスなど、涙腺、涙液腺組織に炎症を起こす疾患や、頭頸部に放射線照射をうけている患者では乾燥症状を引き起こすことがある。
また、各種自己抗体は合併し得る様々な膠原病などでも陽性となるため、それのみでは鑑別は困難である。特に関節リウマチや全身性エリテマトーデスとの鑑別は、困難な場合も多い。IgG4関連疾患の一型であるMikulicz病も鑑別にあげられる。

臨床症状

以下のような症状に注意が必要である。

  • 腺病変
    1. 乾燥性角結膜炎:約70~90%で出現。眼の異物感、羞明、眼脂などが多い。
    2. 口腔乾燥症:約75~90%で出現。乾燥物の嚥下困難、発声困難、口腔灼熱感、味覚変化、齲歯の増加など。
    3. 唾液腺腫脹、耳下腺腫脹、涙腺腫脹:約30%で唾液腺の腫脹を自覚。耳下腺腫脹は両側性無痛性のことが多いが急性の場合には疼痛と腫脹、発熱を伴う。
    4. その他の乾燥症:約26%で膣乾燥が生じるとの報告もある。また、約55%に皮膚乾燥による掻痒感を認める。
  • 腺外病変
    1. 全身症状:50%ほどに易疲労感が自覚される。10~30%ほどに37度台の発熱を認めるほか、発汗異常も認める。
    2. 関節炎:移動性、多発性の非びらん性関節炎を30〜60%に認め、早期リウマチとの鑑別が難しい場合もある。
    3. 骨格筋症状:20%ほどに筋痛、筋力低下、筋脱力感などが認められることがある。筋脱力感を認めた場合は間質性腎炎に起因する尿細管性アシドーシスによる低カリウム血症性ミオパチーも考慮すべきである。
    4. 皮膚症状:約20%に環状紅斑を認める。特徴的な所見であり顔面、上肢、背部に好発する。15%ほどで高γグロブリン血症に伴う紫斑、下肢の網状皮斑や点状出血を認める。凍瘡様皮疹、日光過敏、浸潤性紅斑などがみられることがある。SjSでは複数の薬剤に対してアレルギーを起こすことが多く、薬疹が出ることもある。
    5. 呼吸器症状:40~70%になんらかの呼吸器病変が認められる。気道粘膜、気管支腺の委縮による気道の乾燥や気道過敏性などにより、乾性咳嗽、慢性気管支炎、嗄声などがみられることもある。胸部高分解能CT(high-resolution CT, HRCT)では約34~67%に間質性肺炎を認め、画像上の分類ではNSIP(nonspecific interstitial pneumonia)パターンが多く(60%)、LIP(lymphoid interstitial pneumonia)パターンは少ない。
    6. 消化器症状:胃液の分泌低下による萎縮性胃炎を50%ほどで認める。唾液腺分泌低下による嚥下障害や胸やけなどの逆流性食道炎症状もみられる。胃のMALT(mucosal-associated lymphoid tissue)リンパ腫の発生頻度も高い。食道蠕動不全が36~90%で認められるとの報告もある。
    7. 肝障害・膵病変:6~16%に肝障害がみられる。原発性胆汁性肝硬変が5%前後に認められ、原発性胆汁性肝硬変の70%程度にSjSが認められる。自己免疫性肝炎を認めることもある。慢性膵炎は5〜20%に合併すると報告されているが、近年IgG4関連疾患としての自己免疫性膵炎はSjSの合併とは異なる病態と考えられている。
    8. 腎障害:25%ほどで尿所見異常、腎機能障害を認め、15%ほどに腎間質へのリンパ球浸潤による間質性腎炎を認める。5%ほどに遠位尿細管性アシドーシスをきたし、低カリウム血症による四肢脱力を起こすことがある。また約7%に糸球体腎炎を認める。
    9. 神経障害:約10~20%に末梢神経障害が認められ、感覚失調性ニューロパチー、有痛性感覚性ニューロパチー、多発性単神経炎、三叉神経炎の頻度が高い。中枢神経障害では痙攣、無菌性髄膜炎、多発性脳梗塞、横断性脊髄炎、多発性硬化症類似の症状がみられることがある。また抗アクアポリン4抗体陽性の視神経脊髄炎の合併例(neuromyelitis optica(NMO)spectrum disorder)も報告されている。
    10. 甲状腺機能障害:抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体、抗マイクロゾーム抗体、抗サイログロブリン抗体といった甲状腺に対する自己抗体の陽性率は約17~36%とされており、慢性甲状腺炎と診断される症例の頻度は約25%である。全身倦怠感の訴えが強い場合は合併を考慮する。
    11. 血管系:一次性SjSの約30~35%にレイノー現象が観察される。そのような症例では関節炎の合併が多い。血管炎は約5%に認められ、主に中・小血管を侵す。
    12. 血液疾患:骨髄障害に伴い、約30~60%に貧血、リンパ球優位の白血球減少、約10%に血小板減少を認める。多クローン性の高γグロブリン血症(60~80%)やクリオグロブリン血症(5~10%)も認められる。約30%に全身のリンパ節腫脹を認める。悪性リンパ腫の発生頻度は健常者の44倍、SjSの約5%に発症するという報告もある。好発部位は唾液腺、頸部リンパ節である。主にB細胞リンパ腫であるが、MALTリンパ腫の出現も報告されている。
    13. その他:一次性SjSでは自然流産、早産、不当軽量児出産の頻度が有意に高い。一次性SjSの50%、二次性SjSの67%では胎児機能不全のため急速遂娩(帝王切開や鉗子分娩)を必要とするとの報告があり、自己抗体の存在による胎盤の血管炎や免疫複合体の沈着による胎盤の組織障害に基づく胎盤機能低下が考えられている。また、母体IgGは胎盤を通じて胎児に移行することから、質量52kDaの抗原と反応する抗SS-A/Ro抗体、および抗SS-B/La抗体は新生児ループス(neonatal lupus erythematosus, NLE)と密接に関わると考えられている。
      NLEではループス様皮疹(顔面、四肢、体幹の輪状紅斑)、白血球減少、血小板減少症などのSLE様の症状などの多彩な臨床像を呈するが、その中でも先天性完全房室ブロックは、胎児に対し恒久的かつ致死的な病態であるため注意が必要である。同一妊婦が先天性完全房室ブロック児を反復出産するリスクは15~18%程度である。妊娠、出産、産褥期において抗SS-A抗体やSS-B抗体価が上昇することは偶発的な場合を除いて無いとされる。

検査所見

血液所見として白血球減少(30~60%)、血小板減少(10%以下)、赤沈亢進、高γグロブリン血症(60~80%)を認めることがある。血小板減少の中には特発性血小板減少性紫斑病の合併する症例もある。
クリオグロブリンも5~10%と比較的高率に検出される。抗核抗体は80〜90%で陽性となり、染色型は斑紋型(speckled pattern)が多い。抗SS-A/Ro抗体は一次性SjSの約50~70%、抗SS-B/La抗体は約20〜35%に認められる。抗SS-B/La抗体は一次性SjSに特異性が高い。
SS-A抗原は細胞質にも存在し蛋白合成を調節する低分子リボ核蛋白(ribonucleoprotein, RNP)で,4つの低分子hYRNA(hY1、hY2、hY3、hY5) と60kDa または52kDa 蛋白から構成される複合体である。
一方SS-B抗原はhYRNA、tRNA 前駆体、プレ5Sr RNA 、プレU6 snRNA、Epstein-Barr virus-encoded small RNAs (EBERs)、adenoviral VA (viral associated) RNAなどの低分子RNA と結合しうる細胞核内の48kDa蛋白で,RNA polymerase Ⅲ の転写を調整する。SS-B抗原はhYRNA を介しSS-A抗原と複合体を形成することが報告されており、SS-B抗原の多くは細胞核内に存在するが、SS-A抗原が存在する細胞質内からも検出される。抗SS-B/La抗体陽性例では、ほぼ抗SS-A/Ro抗体も検出されるが、その理由はこのような両抗原の分布と分子性状によると考えられている。他にもSjSにおいてRFは約70~80%の症例で陽性となる。また、抗CCP抗体は一次性SjSにおいて5.2~18%で陽性となる。
尿検査としては尿細管性アシドーシス合併例において尿pHが高くなり、尿中βマイクログロブリンの上昇を認める。
涙腺機能検査、眼科的検索では乾燥性角結膜炎、表層性びらん、角膜潰瘍を認める。涙液分泌の評価試験としてシャーマーテストがあり、Whatman濾紙を下眼瞼耳側に静置し、5分で5mm以下の涙液分泌所見を陽性としている。涙液分泌低下の結果生じる乾燥性角結膜炎の評価染色検査としてはローズベンガルテスト、リサミングリーン、蛍光色素試験がある。細隙灯顕微鏡で眼裂部、下方球結膜の染色を観察する。
唾液腺機能評価としてはガムテスト、サクソンテストがある。ガムテストはガムを10分間噛んで分泌された唾液量を測定する検査である。10ml以下は分泌低下と判定する。サクソンテストはガーゼを口に含んで2分後の重さを測定する検査である。増加が2g以下は分泌低下と判定する。
唾液腺造影は造影剤をStenon管より注入し耳下腺を造影する検査である。腺組織の破壊が進むと特徴的なapple tree像を認める。近年はより侵襲の少ない検査として99mTcO4を用いた唾液腺シンチが行われている。唾液腺シンチでは、軽症例では耳下腺、顎下腺への集積が著明にみられるが高度の唾液腺障害例ではむしろ集積は殆どみられない。口唇小唾液腺の生検は、そのリンパ球浸潤が耳下腺、顎下腺の病理所見に近似するため診断に有用である。
外分泌腺の乾燥症状のみならず、全身状態を含めた活動指標としてこれまでSjögren syndrome disease activity index(SSDAI)、Sjögren' Systemic Clinical Activity Index(SCAI)などが提唱されてきたが、その複雑さなどから世界におけるこれらの指標の使用は限定的であった。欧州リウマチ学会(European League against Rheumatism, EULAR)が2010年に発表したEULAR Sjögren's syndrome disease activity index(ESSDAI)は、全般的、リンパ節腫脹、外分泌腺病変、関節症状、皮膚症状、肺病変、腎病変、筋病変、末梢神経病変、中枢神経病変、血液病変、免疫学的変化の12のカテゴリー別に活動性評価を行い、点数を総和して計算するものである(表4)。簡便さ、全身の所見を網羅していることから優れた指標であるとされ、同じくEULARが提唱するSjS患者の乾燥、倦怠感、疼痛といった自覚症状をスコア化するEULAR SS Patient Reported Index (ESSPRI)(表5)とともに今後広く使用がなされていくであろうと考えられている。

治療

全身症状の有無が治療選択の基準となる。

腺症状

1)眼球乾燥

涙液の補充に人工涙液や種々の点眼薬を用いる。点眼液中の防腐剤は点眼後の刺激となる場合があり、重症度に応じて防腐剤非含有点眼剤を使うことが望ましい。角膜上皮の再生促進のためにヒアルロン酸やビタミンA、コンドロイチン、フィブロネクチンなどを含んだ点眼液を考慮する。ムチン産生促進剤であるジクアホソルナトリウム点眼、レバミピド懸濁点眼が使用されることもある。自己血清点眼薬は血清中の上皮成長因子やビタミンなどが角膜保護に有効であるとされていることから使用されることがある。また、低力価ステロイド点眼薬を短期間使用することもある。
涙の蒸発を防ぐ目的でドライアイ眼鏡(ゴーグル)を使用することもある。重症例では鼻涙管開口部をゴム製プラグで閉じる涙点プラグや、手術で涙点をふさぐ涙点縫合、涙点焼灼なども、涙液の排出を抑えるという点で有効である。
欧米ではシクロスポリン点眼の有効性を示した報告や抗CD20抗体であるリツキシマブの有効性を示した報告もある。またドライマウス治療薬に保険適応となっているセビメリン塩酸塩水和物は、ドライアイに対する有効性も報告されている。

2)口腔乾燥

ドライマウスに対して飲水やうがいをすることは有効であるが効果時間は短い。人工唾液や2%メチルセルロースは乾燥症に対し効果がある。
また唾液分泌促進薬として、副交感神経刺激薬(コリン作動薬)の一種でムスカリン性アセチルコリン受容体(M3型)を刺激するセビメリン塩酸塩水和物、非選択的ムスカリン受容体刺激薬であるピロカルピン塩酸塩がある。
口腔乾燥に対する有効性は高い(約60%)が消化器症状、発汗などの副作用が約30%にみられる。少量より投与開始し副作用発現を観察するのが望ましい。使用に当たっては重篤な虚血性心疾患、気管支喘息及び慢性閉塞性肺疾患、消化管及び膀胱頸部に閉塞のある患者、てんかん、パーキンソニズム又はパーキンソン病の患者、虹彩炎の患者には使用禁忌であり注意が必要である。アネトールトリチオンは利胆剤であるが、唾液分泌促進作用がある。しかし有効率は29%とセビメリン塩酸塩水和物には劣り、尿着色、腹鳴などの副作用が生じることがある。塩酸ブロムヘキシジンや漢方薬の一部もある程度の効果が認められる。
口腔乾燥は齲歯を来しやすいため、口腔内を清潔に保つよう心がける必要がある。口腔内環境を改善させるために、乾燥食品、香辛料、アルコール飲料の忌避、禁煙が重要である。

3)唾液腺の腫脹

発熱、リンパ節腫脹とともに反復性の唾液腺の腫脹、疼痛をきたすことがある。短期間のステロイド(プレドニゾロン(prednisolone, PSL)換算10~20mg)投与で改善する。持続する場合は悪性リンパ腫の存在にも留意する。

腺外症状

比較的軽度の全身症状、すなわち発熱、関節痛に対してはまずは非ステロイド系抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs, NSAIDs)で対処するが、効果不十分の場合は少量の副腎皮質ステロイドも考慮する。軽微な症状に対してはPSL換算で5〜15mg/日を用いることで十分な効果が認められる。
進行性の間質性肺炎、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、血管炎性皮膚病変、神経障害、高γグロブリン血症やクリオグロブリン血症にともなう高粘調度症候群、他の活動性の膠原病を合併する場合は中等度以上のステロイド(PSL換算で30〜60mg/日)や免疫抑制剤のアザチオプリンが適応となる場合がある。シクロフォスファミドの有効例もあるが腎毒性、悪性リンパ腫の続発を考慮する必要がある。合併し得る原発性胆汁性肝硬変の治療はウルソデオキシコール酸が中心であるが、自己免疫性肝炎の治療ではステロイドが中心となる。
SjSに伴うニューロパチーの治療として確立されたものはない。中等度以上のステロイド投与や免疫グロブリン大量静注療法の他、血漿交換療法、免疫抑制剤、インターフェロンα、D-ペニシラミンが有効だったとの報告がある。
胎児予後に大きな影響を与える先天性完全房室ブロックについては、抗SS-A抗体陽性、抗SS-B抗体陽性妊婦を対象とし胎盤通過性のあるデキサメタゾン投与による胎児房室ブロックの発症予防が検討されたが、予防効果は認めなかったとされている。また、現在のところ経母体的なガンマグロブリン投与による胎児房室ブロックの抑制効果も認められていない。
抗SS-A/Ro抗体陽性、抗SS-B/La抗体陽性の母体15名に血漿交換療法を施行して抗体除去による胎児房室ブロックの発症予防を試みた報告では、全例で生児を得て新生児ループスの発症は認めず、14例で抗体価の減少を認めていたものの、抗体価の減少を認めなかった母体から出生した1児で完全房室ブロックの出現を認めていた。
経母体的なデキサメタゾンとβ刺激薬投与の胎児治療としての有効性が報告されているが、房室ブロックの発症率低下自体には関与しないとされている。ステロイドによる抗SS-A/Ro抗体および抗SS-B/La抗体の抗体価の減少、それにより惹起される心筋障害や心内膜線維弾性症の合併を抑制することが期待されるが、経母体的ステロイド薬投与が長期及ぶことで母体の耐糖能異常、胎児の発育遅延や生後の発達遅延などの副作用が懸念される。β刺激薬の母体投与は胎児心拍数を増加させることで胎児心不全や胎児水腫の改善が期待できるが、この治療が児の長期予後を改善するか否かはエビデンスに乏しく、こうした治療についてのコンセンサスは現在のところ得られていない。

生物製剤の有効性報告

重症例や続発するB細胞リンパ腫に対して抗CD20抗体であるリツキシマブが有効であったとの報告や、抗CD22抗体であるエプラツズマブ、CTLA4-Igであるアバタセプトが有効であったとの報告もある。また抗BAFF(B cell activating factor belonging to the tumor necrosis factor family)抗体であるベリムマブはESSDAI、ESSPRIを改善したが腺機能の改善は無いと報告され、インフリキシマブ、エタネルセプトといったTNF-α阻害薬(tumor necrosis factor-α inhibitor)についても病態改善は乏しいとされている。他に、抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブについてもSjSに対する有効性の検討が進められている。

予後

予後は比較的良好で10~20年後に重症化する頻度は5%ほどと低いとされている。診断確定時の平均年齢およそ49.7歳のSjS患者547名を35年間にわたってフォローした検討では、診断確定時からの平均生存期間は約33.7年であり、診断時の腺外病変、とりわけ血管炎とリンパ増殖性疾患の存在が予後悪化因子であった。臓器病変を伴わなければ生命予後は悪くないが、臓器病変の合併について定期的な全身検索が必要である。
特徴的な腺病変のために口腔環境の悪化、角膜の障害が予想されるため、適切な口腔ケアや点眼を指導する。具体的には齲歯、歯周病の予防のため摂食後の適切な歯磨きを励行すること、乾燥食品、香辛料、過度のアルコール摂取を控えること、喫煙環境を避けること、パソコンなどの機器類使用による眼の酷使を避けること、低湿度環境を避けることなどである。
良好な生命予後に反して、乾燥症状の自覚、倦怠感や筋痛、関節痛などの全身症状の存在により生活の質(Quality of Life, QOL)は必ずしも良好とはいえない。臓器病変、リンパ腫を合併した場合はそれらにより生命予後も左右される。

表1 シェーグレン症候群 厚生労働省改定診断基準(1999年)
表2 米国・ヨーロッパ分類(AECG)基準
表3 2012年シェーグレン国際登録ネットワーク診断基準(SICCA)
表4 The EULAR Sjögren's syndrome disease activity index(ESSDAI)
表5 The EULAR SS Patient Reported Index(ESSPRI)