成人発症スティル病adult onset Still's disease, AOSD

疾患概念・病態

1897年に小児科医であるStillが小児の慢性関節炎の中で発熱・皮疹・リンパ節腫脹・脾腫などの全身症状を呈する例を記載し、1971年にBywatersが小児のスティル病に類似した臨床所見を示す成人例を成人発症スティル病として報告した。
原因はいまだに不明であるが、細菌やウィルスなどの感染症がきっかけになることや、また炎症を引き起こすサイトカインが深く関与していることが報告されており、高サイトカイン血症が病気の中心とも考えられている。

疫学

厚生労働省による全国調査では、約1,100人の患者がいると予想されている。男女比は1:2で、発症年齢は20歳台から40歳台といった比較的若年層に多くみられるが、まれに高齢発症の例も存在する。

臨床症状

発熱:弛張熱という高熱を呈する。短時間で39度を超えるスパイク熱が特徴で、このような熱が1週間以上持続する。
皮疹:サーモンピンク疹といった定型的な皮疹が特徴で発熱と一致して出現・消褪を繰り返す。
咽頭痛:発熱と一致して強い喉の痛みがみられることがある。
関節痛:単一の関節炎から多発性の関節炎がみられ、関節リウマチとの鑑別が必要になる。
リンパ節腫脹:本疾患でよくみられ、両側の頸部に痛みを伴った腫れがみられる。また約半分の症例に肝臓と脾臓の腫脹を認める。

検査所見

好中球優位の白血球の上昇、CRP上昇、フェリチン高値がみられる。フェリチンの上昇は本疾患に関し特徴的であるが、本疾患を特定するものではないため注意が必要となる。またリウマトイド因子(Rheumatoid Factor, RF)と抗核抗体(anti-nuclear antibody, ANA)の陰性も本疾患を支持する所見である。

診断・鑑別診断

山口の診断基準(1992)が用いられる(表1)。
本症の診断は特徴的な臨床所見が少ないので除外診断が必須である。当院では他疾患の除外による正確な診断と、その後の加療を目的に入院での精査加療を原則行うようにしている。除外が必要な項目は以下の通り。

感染症

血液検査で白血球上昇を認めるため感染症の鑑別が必要となる。細菌感染が疑われる場合には各種培養を行い抗生剤の投与を行う。その他、ウィルス感染(主にパルボウィルスやEBウィルス)や真菌など各種感染症の鑑別が必要である。

悪性腫瘍

特に悪性リンパ腫の鑑別が重要である。表在リンパ節の腫脹が認められる場合にはリンパ節生検を積極的に検討する必要がある。

膠原病

主に血管炎症候群(結節性多発動脈炎や悪性関節リウマチなど)の鑑別が重要になる。その他、全身性エリテマトーデスも主要な鑑別疾患となる。

治療

副腎皮質ステロイドによる治療が中心であり、初期投与量はプレドニゾロン(prednisolone, PSL)換算30mg/日で開始することが多いが、活動性の高い症例や臓器合併症を伴う症例ではPSL換算1mg/kg/日で治療を開始する。
副腎皮質ステロイド単剤で治療抵抗性を呈する場合には免疫抑制剤の併用を積極的に行う。メトトレキサート(methotrexate, MTX)、シクロスポリン(cyclosporine A, CyA)が有効であるが、それでもコントロールがつかない場合には抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ)を投与することもある。

予後・合併症

軽症例から中等症例では副腎皮質ステロイドの反応性が良好であれば一般的に予後は良好である。難治例も多く存在するが、ステロイドパルスと免疫抑制剤の併用によりコントロールがつけば予後は良好である。
合併症としては免疫抑制療法による感染症が主にあげられるが、本疾患自体にマクロファージ活性化症候群(macrophage activation syndrome, MAS)をしばしば合併することがある。その際にはステロイドパルス療法、CyAの併用ならびに単純血漿交換療法などの、サイトカインストームと呼ばれる異常な免疫システムを是正する治療が必要となる。当院ではこれらの治療を積極的かつ迅速に取り入れることによって良好な治療成績が得られている。

表 AOSDの分類基準:山口の基準(1992)

大項目
発熱
関節痛(2週間)
典型的皮疹
白血球増加(10000/μl以上)および好中球増加(80%以上)
小項目
咽頭痛
リンパ節腫脹あるいは脾腫
肝機能異常
リウマトイド因子陰性および抗核抗体陰性

大項目2項目以上を含む計5項目以上で診断
除外項目:感染症、悪性腫瘍、他の膠原病