皮膚筋炎・多発性筋炎

疾患概念・病態

多発性筋炎・皮膚筋炎(polymyositis, PM/dermatomyositis, DM)は、主に大腿や上腕などの四肢近位筋、さらに体幹や頚部の筋肉を中心とした横紋筋に持続的な炎症を引き起こし、同部位の筋肉痛や筋力低下を来たす疾患である。患者血清からは抗Jo-1抗体を始めとした多彩な自己抗体が検出され、その病態形成には免疫機能の異常が大きく関与することから、膠原病に分類されている。臨床的には筋症状のみ呈する場合をPM、ゴットロン徴候やヘリオトロープ疹、関節伸側の落屑性紅斑など、特徴的な皮膚症状を伴う場合をDMとしている。
PM/DMは筋肉や皮膚症状以外に、悪性腫瘍や間質性肺炎(interstitial pneumonia, IP)の合併が高率であり、これらは生命予後を左右する大きな要因となる。特にDMにおいて、その傾向が強くみられるため注意を要する。筋症状が典型的な症例では、血液検査において血清クレアチンキナーゼ(creatine kinase, CK)やクレアチン、ミオグロビン、アルドラーゼ(aldolase, ALD)などの筋原酵素が上昇を示すことがほとんどであるが、amyopathic DMなど、皮膚症状や肺病変が著明で筋症状に乏しく、筋原酵素の上昇が見られない症例も存在する。
抗Jo-1抗体はPM/DMに特異性が高い自己抗体であり、本抗体の測定は診断に有用であるが、その陽性率は20%前後と決して高いものではない。近年、本抗体以外にも多数の筋炎特異的自己抗体(myositis-specific autoantibodies, MSAs)が同定されている。これらの抗体の中には関節症状や筋症状、皮膚症状、肺合併症、悪性腫瘍などの臨床症状と関連するものも多く存在し、一部は実臨床においても活用されている。
PM/DMの診断および治療方針の決定には、これらの血液所見の他、MRI(magnetic resonance imaging)や筋電図、筋生検と筋症状や皮膚症状などの臨床症状を総合的に判断することが重要である。治療の中心は副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬であり、大量γ-グロブリン療法なども適応となることがある。なお、本疾患は国の定める「指定難病」に認定されている。

疫学

PM/DMは女性に多く発症し、男女比は概ね1:2~3である。あらゆる年齢層に発症しうるが、全身性エリテマトーデスや混合性結合組織病が20~30歳代に好発する一方で、PM/DMは35~64歳に発症のピークが見られる。さらに5~14歳の小児期での発症も多く見られ、好発年齢としては二峰性の分布を呈する。2009年度の厚生労働省特定疾患治療研究事業における臨床調査個人票からの解析では、罹患患者数は約17,000名と推定される。

診断・鑑別診断

PM/DMの診断には、1975年に提唱されたBohanおよびPeterの診断基準(表1)が臨床の場で多く用いられている。本邦では1992年に厚労省自己免疫疾患調査研究班により、PM/DMの診断基準が提唱・改定されている(表2)。現在は、これらを用いることが多いが、本診断基準のみでは、他の筋疾患などを完全に除外することは困難であり、新たな分類基準の作成も検討されている。
PM/DMと診断するにあたり、鑑別すべき代表的な疾患として、重症筋無力症、筋ジストロフィー、リウマチ性多発筋痛症、周期性四肢麻痺、ギラン・バレー症候群、薬剤性筋炎、ステロイドミオパチーやウィルス感染症などがあげられる。しかしこれらの疾患では、前述したMSAsが検出されることはなく、近位筋優位の症状でないことが多く、炎症所見に乏しい疾患や神経原生の疾患では、筋力低下を示すものの、筋肉痛の自覚が少なく筋原性酵素の上昇が乏しい。さらに肺合併症も一般的に稀である。これらの臨床所見は、PM/DMを否定しうる一助となり、筋症状以外にそれぞれの疾患に特徴的な所見が得られることにより、多くはPM/DMと鑑別が可能である。

臨床症状

PM/DMは横紋筋を炎症の主座とする疾患であるが、関節や皮膚を始め、肺や心臓にも病変がおよぶことがある。なかでもIPは、患者の生命予後を左右しうる重篤な合併症である。
筋症状としては主に、上下肢の近位筋、咽頭・喉頭筋群が好発部位である。同部位の筋肉痛および筋力低下が主たる自覚症状であり、両手の挙上困難、しゃがみ立ち困難を訴えることが多い。さらに頚部の筋肉に炎症がおよぶと、嚥下障害や構音障害を呈することがある。まれに呼吸筋の筋力低下により、呼吸不全が出現することや心筋炎の併発から、心筋伝道障害や不整脈などが見られることもある。したがって、胸部痛や胸部不快感などの訴えがある場合には、心筋病変などにも留意する。
DMに特徴的な皮膚症状として、手指関節部の背側に出現するゴットロン徴候として知られる角化性紅斑や、両眼瞼部の浮腫を伴う赤紫色のヘリオトロープ疹が代表的である。肘や膝関節伸側にみられる落屑を伴う紅斑も特徴的である。
この他、両手第1、2指にみられる機械工の手(mechanic's hand)と呼ばれる角化性皮疹や、頚部から前胸部にV状にみられる落屑を伴う紅斑(V sign)、両肩から肩甲骨上部に出現するshawl signなども典型的な皮疹である。
皮疹の他、関節炎は発症早期にみられることが多いが、関節リウマチのような骨破壊や特徴的な変形を来たすことは稀である。レイノー現象は本疾患に特徴的ではないが、高率に出現する。
この他の臓器病変として、IPは患者の生命予後を左右しうる重篤な合併症で、PM/DMの初発症状ともなりうる。病理組織像では、非特異性間質性肺炎(non-specific interstitial pneumonia, NSIP)が高頻度であるが、びまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage, DAD)の所見を呈し、急速に進行する症例も見られるため注意が必要である。また、前述した如く、悪性腫瘍の合併が特にDMで高頻度にみられ、なかでも皮膚症状が難治性であったり、掻痒感が強度である症例においてより高率である。悪性腫瘍の部位としては、胃癌、肺癌、乳癌、悪性リンパ腫などであり、特徴的な分布は示さない。

検査所見

筋症状が著明である症例では、血液検査で血清CKやクレアチン、ミオグロビン、ALDなどの筋原酵素の上昇を示す。肝逸脱酵素であるasparate aminotransferase(AST)やalanine aminotransferase(ALT)も筋原酵素であるため、肝機能障害を除外することも重要である。なお、筋肉からの逸脱により、血清および尿中のクレアチニンは上昇し、尿クレアチン係数は高値となる。
PM/DMから特異的に検出される自己抗体として、抗Jo-1抗体があげられる。本抗体はPM/DMに対して特異性が極めて高く、前述した診断基準の一項目として取り入れられている。しかしその陽性率は20%前後であるため、本抗体が検出されなくともPM/DMを否定することは出来ない。本抗体の対応抗原は細胞質に存在するアミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl tRNA synthetase, ARS)のひとつであるヒスチジルtRNA合成酵素である。
近年、他のARSに対する複数の自己抗体が同定され様々な検討が行われており、これらの抗体が陽性の群では陰性例に比し、関節炎やIP、皮膚病変などにおいて臨床的な特徴が見られ、抗ARS抗体症候群として分類されている。
この他に陽性率は低いが、難治性症例で検出される抗SRP抗体、clinically amyopathic dermatomyositis(CADM)で特異的に見られる抗CADM-140抗体、shawl signとの関連が報告されている抗Mi-2抗体、強皮症とのオーバラップで検出されやすい抗PM-Scl抗体や抗Ku抗体などが知られている。しかしこれらの自己抗体はいずれも保険未収載で、測定できる施設も限定される。
筋電図では、安静時に線維性攣縮、positive sawtoothed potentialを示し、随意収縮では、complex polyphasic short durationを認める。さらに機械的な刺激を加えると、pseudomyotonic potentialsなど筋原性変化を主とした所見を得る。
MRI(magnetic resonance imaging)も有用な検査であり、選択的脂肪抑制法であるSTIR法では筋肉の炎症部位に一致して高信号を示す。これらの検査は診断のみならず、治療効果の判定においても有用である。
やや侵襲性の高い検査となるが、筋生検はPM/DMの診断において重要な検査となる。臨床的にPMとDMは皮膚症状の有無により区別されるが、筋生検を行うとPMでは、炎症部位の筋線維の壊死所見とCD8陽性T細胞の浸潤がみられる。一方でDMでは 筋束周囲の壊死像と血管周囲へのCD4陽性T細胞を呈することが多いとされる。しかし組織所見のみでPMとDMを区別することは不可能であり、実際の臨床症状を考慮して診断することが必要である。

治療

PM/DMは免疫機能の異常を根本とする疾患であるため、他の膠原病と同様に副腎皮質ステロイドが治療の中心となる。筋症状や肺病変の程度により、プレドニゾロン換算で体重当たり0.5mgから1.0mgのステロイドを用いる。
反応に乏しい場合や、IPを始めとした肺病変が難治性で進行が急速である場合はメチルプレドニゾロンを用いたステロイドパルス療法のほか、シクロスポリンやタクロリムス、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤も併用される。さらに難治例には大量γ-グロブリン療法も行われている。

予後

肺病変や悪性腫瘍などの合併の有無により、予後は大きく左右される。悪性腫瘍を有する場合は、その治療が最も優先されるべきである。筋症状の約90%は副腎皮質ステロイドが有効であるが、難治例では早期に免疫抑制剤などによる治療を検討すべきである。
炎症が鎮静化しても筋力低下などの症状が残存する場合は、日常生活動作の改善を目標にした理学療法なども積極的に考慮すべきである。

表1 Bohan & Peterの診断基準

  • ①四肢近位筋、頚部屈筋の対称性筋力低下
  • ②筋原性酵素の上昇
  • ③筋電図で筋原性の変化
  • ④筋生検で筋線維の壊死や変性、萎縮所見、炎症細胞の浸潤
  • ⑤ヘリオトロープ疹やゴットロン徴候、関節伸側の落屑性紅斑など

表2 診断基準(厚生労働省自己免疫疾患調査研究班 1992年)

  • ①皮膚症状
    • (a)ヘリオトロープ疹
    • (b)ゴットロン徴候
    • (c)四肢伸側の紅斑
  • ②上肢または下肢の近位筋の筋力低下
  • ③筋肉の自発痛または把握痛
  • ④血清中の筋原性酵素の上昇
  • ⑤筋電図における筋原性変化
  • ⑥骨破壊を伴わない関節炎または関節痛
  • ⑦全身性炎症所見(発熱やCRPの 上昇または赤沈亢進)
  • ⑧抗Jo-1 抗体陽性
  • ⑨筋生検で筋線維の変性および細胞浸潤

①の(a)~(c)の1 項目以上を満たし、経過中に②~⑨の項目中4項目以上を満たすものを「皮膚筋炎」とし②~⑨の項目中4項目以上を満たすものを「多発性筋炎」とする。