混合性結合組織病mixed connective tissue disease, MCTD

疾患概念・病態

MCTDは1972年、Sharpらによって全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus, SLE)、強皮症(systemic sclerosis, SSc)および多発性筋炎(polymyositis, PM)などの臨床像を併せ持ち、高力価の抗U1-RNP抗体を特徴とする独立した疾患単位として報告された。本症は比較的少量の副腎皮質ステロイドに良く反応し、予後良好の疾患とされている。しかし、肺高血圧症など予後不良の病態も認められ、治療上の問題となっている。
これに対して、抗U1-RNP抗体陰性で、二つ以上の膠原病の特徴的臨床像や免疫学的所見を有し、それぞれの疾患の診断基準を満たす群がいわゆる重複症候群として区別されている。
ただ単に抗U1-RNP抗体の有無や、他の膠原病の診断基準を満たすか満たさないかで重複症候群とMCTDを区別することは必ずしも適切ではないとの議論もある。しかし、MCTDでは抗U1-RNP抗体に相関して高率に出現するレイノー現象、指・手背腫脹、さらに肺高血圧症などの特異な病態を認め、加えて独自の遺伝的背景の存在、独自の免疫学的所見、さらに予後の相違なども認められ、現在のところ一つの疾患単位として考えるのが妥当とされている。

MCTDの原因は不明であるが、U1-RNPの70kDa蛋白とマウスレトロウイルスならびにインフルエンザBウイルス関連蛋白などとの間に分子相同性が確認され、その部位が共通のエピトープとなっていることから、ウイルス感染の本症への関与が示唆されたこともある。
一方、KellyらはU1-RNPの構成成分であるU1-RNAはToll like receptor (TLR)-7を介して樹状細胞におけるtype I インターフェロンを誘導し、その分化を誘導することを明らかにし、U1-RNAが内在性のアジュバントとして自己免疫の病態の誘導に重要な役割を有している可能性を論じている。
抗U1-RNP抗体は、in vitro の実験系でU1-RNPの細胞内機能であるmRNA前駆体のスプライシングを抑制することが知られているが、抗U1 RNP抗体自体の病因的意義は不明である。

疫学

平成20年の厚生労働省個人調査票を基準とした調査では全国で約8,600人の登録が確認されている。男女比は1:16〜19と圧倒的に女性が多い。発症年齢は20〜50歳に多く、特に31〜40歳台にピークがある。また、膠原病の家族発症も8.5%に認められている。

診断・鑑別診断

抗U1 -RNP抗体陽性を確認し、厚生省研究班によって提唱された診断の手引きを用いて診断する(表1)。重複症候群の鑑別には抗U1-RNP抗体とともにSScとPMの重複症状に相関する抗KuやPM-SCl抗体などの血清学的所見が参考になる。

臨床症状

MCTDに見られる臨床症状を表2に示す。各疾患の臨床像が混在するが、一般に軽症型が多い。初発症状としてはレイノー現象が最も高率で、それに手指のこわばり、浮腫が続く。全身症状では発熱、全身倦怠感、易疲労性、体重減少などが認められ、活動期に出現する事も多い。
局所症状として最も高率に認められるものはレイノー現象で、ほぼ全例に認められ、80〜90%の症例に認められるソーセージ様手指や手背の腫脹と共に本症を特徴づける所見となっている。手指硬化や先端硬化症も出現するが、一般に典型的なSScより程度は軽い。その他の皮膚症状としてSLEおよび皮膚筋炎(dermatomyositis, DM)に認められる皮疹も頻度は低いが出現する。
多発性関節痛はほぼ全例、関節炎は60〜70%の症例に認められる。関節リウマチ(rheumatoid arthritis, RA)様の骨破壊性関節炎は約7%の症例に認められるが、欧米では約30%と高く、RAもMCTDのスペクトラムの一つと考えられている。
近位筋を中心に筋力低下や筋痛などの筋症状も高率に認められ、筋系酵素が上昇する。
消化器病変では食道下部2/3の拡張や蠕動運動不全が70%の症例に出現する。時に難治性の食道潰瘍を併発する症例を認める。他の消化管障害として小腸拡張や大腸偽憩室などが認められる事があり、このため下痢や便秘などを訴える症例がいる。
肺病変として間質性肺炎(interstitial pneumonia, IP)が30〜50%以上の症例に出現する。しかし、SScのように著明な線維化を認める症例の頻度は30%以下である。
一方、肺動脈性高血圧症(pulmonary arterial hypertension, PAH)の出現頻度は10〜12%以下と低いものの、比較的予後良好とされるこの疾患の死因の50%以上を占め、難治性の経過をとる。呼吸困難、胸痛、および血痰などの症状に加え、聴診上、Ⅱ音の肺動脈成分の増強、および分裂、肺動脈弁領域の駆出性雑音を認める。進行例では胸部X線写真にて左第2弓の突出、末梢血管影の減弱、右室肥大などの所見を認める。心電図では肺性P、右軸偏位右室肥大などの所見が認められる。これらに加え、心臓超音波検査が有用な情報を提供し、確定診断のために右心カテーテルが行われる。また、PAHは肺の繊維化の程度とは相関しないが、nail foldの毛細血管の拡張像が肺高血圧症とよく相関するとされている。  その他の肺病変としては10〜15%の症例に胸膜炎がみられる。また、心外膜炎も10〜30%の症例に認められる。
蛋白尿や尿細胞円柱などは10〜25%の症例に出現するが、本症の腎症は副腎皮質ステロイドによく反応し、一般に軽症の経過をとる。
中枢神経症状としては無菌性髄膜炎 、精神症状、痙攀発作などSLEと同様の障害が報告されている。特に無菌性髄膜炎につてはイブプロフェンの副作用として認められることがある。末梢神経障害としては三叉神経痛がしばしば認められ、難治性の経過をとる。
その他、活動期にリンパ節腫張が約30%の症例に認められる。シェーグレン症候群(Sjögren's syndrome,SjS)は30〜50%と比較的高率に認められ、消化器病変として原発性胆汁性肝硬変の合併も報告されている。

検査所見

  1. 血清学的検査:抗U1-RNP抗体は診断の必須項目で全例陽性となる。蛍光抗体間接法にて斑紋型の染色像を認め、その同定には二重免疫拡散法(double immunodiffusion, DID)もしくは酵素免疫法(enzyme immunoassay, EIA)が用いられる。受身赤血球凝集反応(passive hemmaglutination, PHA)ではRnase感受性ENA(可溶性核抗原)抗体として検出される。その抗体価は低いものの抗二本鎖DNA抗体もしばしば陽性となる。リウマトイド因子の陽性率も高く、高γグロブリン血症が認められる。関節炎や漿膜炎に関連しCRPが上昇する。
  2. 血液生化学的検査:赤沈の亢進、白血球減少、血小板減少および貧血がしばしば認められるが溶血性貧血はまれである。筋炎が存在する場合には筋系酵素が上昇する。PAHではBNP、IPではKL-6が上昇する。
  3. その他の検査所見:胸部X線写真ではIPのすりガラス状陰影、胸膜炎による胸水貯溜などの所見、さらにPAHでは左第2弓の突出などの所見が得られる。PAHでは心電図における肺性P、右軸偏位、右室肥大などの所見が得られる。心臓超音波では肺動脈弁のa dip・e-f slopeの減少、右室流出路、右心室、右心房の拡張が認められる。ドップラー法によるPA圧の測定は非観血的検査として有用である。
    肺機能検査ではIP・肺線維症に関連して拘束性障害(%VCの低下)および拡散障害(%DLcoの低下)が認められる。%VCの低下に対し、%DLcoが著明に低下している際はPAHを疑う。消化管造影では食道の拡張、 loop徴候および大腸憩室などの所見がSSc様所見として見られる。

治療

MCTDの治療は病態および重症度によって異なる(表3)。
レイノー現象および関節痛などの症状を認め、臓器病変を有さない軽症例では循環改善剤や非ステロイド系抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs, NSAIDs)を投与し、経過を見る。
発熱、リンパ節腫脹などの全身症状に加え、著明な関節炎や臓器障害が出現した場合には副腎皮質ステロイド剤による治療を行う。投与量は個々の症例が有する病態の重症度に応じて決定し、重症例に対しては体重1kgあたりプレドニゾロン換算で1mgを目処に投与する。
肺高血圧症に対しては、抗凝固療法、プロスタグランジン製剤による肺血管拡張療法が行なわれる。これらの薬剤の他、近年、プロスタサイクリン徐放製剤、持続点滴製剤(エポプロステノール)に加えて、エンドセリン受容体拮抗薬(ボセンタン、マシテンタン、アンブリセンタン)、PDE-5阻害薬(シルデナフィル、タダラフィル)など、いくつかの薬剤が使用できるようになった。ボセンタンはエンドセリン-A(ET-A)およびエンドセリン-B(ET-B)受容体に対してエンドセリン-1と拮抗し、肺血管の収縮を抑制、肺血管抵抗を減らす。アンブリセンタンはET-A受容体を選択的に強く阻害し、ボセンタンに比べ、肝機能障害を起こすリスクが低いとされている。
PDE-5阻害薬は血管拡張作用を有するcGMPを賦活化し、勃起不全治療薬として開発されたが肺血管の拡張効果も認め、肺血管抵抗および肺動脈圧の低下、心拍出量の増加をもたらす。

予後

SLEおよび PM様症状は治療に反応して軽快するがSSc様所見が遷延化して残る。
死因としては肺高血圧症、呼吸不全、心不全などが高率となっている。MCTDの予後は良好と報告されていたが、肺高血圧症などの病態は予後不良で問題となっている。死亡症例の特徴としてはその半数以上がSLEとSScの診断基準を同時に満たす重複例で、SLEもしくはSSc単独型のMCTDはそれらに比較し、予後良好とされている。

表1 混合性結合組織病診断の手引き(1996年改訂版)

表1 混合性結合組織病診断の手引き(1996年改訂版)

表3 混合性結合組織病における治療の基本

Ⅰ 一般的な治療

  1. ステロイド療法
    1. 一般的使用法
      初回プレドニゾロン(prednisolone, PSL)換算30mg/日(小児では1〜2mg/kg/日)を投与し2〜4週維持する。その後、5mgずつ2〜3週間隔で減量する。5〜10 mg/日を維持量とし、4〜5年維持する。
    2. ステロイドを使わない場合、あるいは少量のステロイドで経過を見る場合
      レイノー現象、関節痛など軽度の自他覚所見のみの場合には、ステロイドを使わない。関節炎などの炎症所見が明らかな場合、初回PSL換算10〜20mg/日を投与し、漸減して経過を観察する。
    3. 大量のステロイド薬を必要とする場合
      下記の所見がある場合は、初回よりPSL換算40〜60mg/日を投与する。
      重症筋炎、心膜炎、胸膜炎、無菌性髄膜炎、肺高血圧症、間質性肺炎、ネフローゼ型腎症
    4. ステロイド療法の治療目標
      1. ステロイドを減量する指標
        1. 臨床症状:発熱、関節炎、筋炎、紅斑、リンパ節腫脹、心膜炎、胸膜炎、無菌性髄膜炎など
        2. 検査所見:赤沈亢進、筋原性酵素上昇、血小板減少、溶血性貧血、高γグロブリン血症、抗DNA抗体価、低補体価、尿蛋白、尿円柱など
      2. 下記の所見は治療に抵抗性を示す.
        1. 臨床症状:レイノー現象、ネフローゼ型腎症、手指腫脹、皮膚硬化、肺線維症、肺高血圧症など
        2. 検査所見:呼吸機能検査低下、食道機能低下、抗核抗体価、抗U1-RNP抗体価など
  2. 血管拡張薬
    レイノー現象に伴う著明なしびれ感、痛みおよび指尖潰瘍などを伴う症例には、カルシウム括抗薬やプロスタグランジン製剤を使用する。
    肺高血圧症を認める症例に対しても、同様の治療を実施する。
  3. 非ステロイド系抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs, NSAIDs)
    ステロイド薬の少量維持症例において、関節炎(痛)が再燃する症例に対しては、各種のNSAIDsを使用する。
  4. 免疫抑制薬
    ステロイドに対する反応が悪い場合や、ステロイドが副作用などで使えない場合などに、免疫抑制薬や免疫調節薬の使用を考慮する。
    筋炎に対してはメトトレキサート、アザチオブリン、シクロホスファミド、腎炎および血管炎に対してはシクロホスファミドおよびアザチオブリンが用いられる。

Ⅱ 肺高血圧症に対する治療

  • 急性増悪にはステロイド大量投与もしくはパルス療法
  • 慢性期はベラプロスト120ug/日、エポプレステノールナトリウムの持続的静注など
  • 心不全があればフロセミド40mg/日、ジゴキシン0.25〜0.5mg/日

(厚生省特定疾患混合性結合組織病調査研究班の治療指針より改変)