全身性エリテマトーデス
(Systemic Lupus Erythematosus, SLE)

概要・病因

全身性エリテマトーデス(SLE)は、本来は細菌やウイルスなどの外敵から身を守るための免疫系が、何らかの原因で自分の細胞に対する抗体をつくってしまい、自分で自分を攻撃してしまう病気(自己免疫疾患)です。自己抗体(自分に対する抗体)や免疫複合体(抗原と抗体が反応してできる結合体)ができるのが特徴で、それにより全身の皮膚、関節、血管、腎臓などが侵されてしまいます。1万人に1人くらいが発病し、とくに子供を産むことができる年齢20~40代の女性に多く、男女比1対10で圧倒的に女性に多い病気です。
根本的な原因はまだよくわかっていませんが、50以上の遺伝子の複数の遺伝的要因が関与していると思われます。これは、一卵性双生児でのSLE発症の一致率が(約25~60%程度)高いことからも裏づけられます。こうした遺伝的背景のうえに感染症や紫外線、妊娠・出産・ある種の薬剤などが関与している可能性が考えられています。なお、遺伝に関しては正確な統計はありませんが、一般の人の発症頻度よりも高いと考えられています。

症状

発熱、だるさ、関節の痛み、食欲不振、体重減少、皮膚の症状などがみられます。おもな症状の特徴を以下に示します。

皮膚症状

蝶型紅斑という頬から鼻にかけてできる赤く、少し盛り上がっている紅い発疹で、蝶が羽を広げた形に似ているものが特徴的ですが、全員が出るわけではありません。
他にも顔面、耳、首、頭などにできる円形の紅斑がみられることがあります。特に頭にできた場合、その部位の脱毛は治りにくいので、早めの治療が必要です。手のひら、手指、足の裏などにできる"しもやけ"のような発疹も特有な症状です。

口内炎

口や鼻に痛みに浅い潰瘍で痛みのないものが特徴的ですが、痛みを伴うこともあります。

日光過敏症

海水浴、日光浴など、強い紫外線を受けたあとに、皮膚に発疹、水ぶくれができ、発熱を伴うこともあります。

関節痛

手指や肘、膝、などの大きな関節にはれや痛みがでることがあります。関節リウマチと間違えられることもありますが、日によって場所がかわり、リウマチのように骨の破壊を伴うことはほとんどありません。

腎臓の症状

蛋白尿や尿に赤血球、白血球、円柱(蛋白がゲル化して円柱状に固まったもの)が出てくるのが特徴です。
糸球体腎炎(ループス腎炎)と呼ばれる腎臓の障害がある場合は、治療を早めにする必要があります。進行すると多量の蛋白尿や足のむくみが出るネフローゼ症候群や腎不全となって透析が必要になる場合もあります。

神経の症状

うつ状態・妄想などの精神症状やけいれん、脳血管障害がみられることがあります。

血液の異常・血栓症

貧血、白血球減少、リンパ球減少、血小板減少などの血液の異常もよくみられます。

流早産

何回も流産を繰り返す方は抗リン脂質抗体という抗体が原因となっている場合があります。

その他

眼、心臓、肺、消化管(胃・腸)、肝臓、膀胱などに症状が出る人もいます。

検査

血液検査、尿検査は重要で、胸部レントゲン、心電図などで全身の状態の経過を見ていく必要があります。
血液検査では、免疫グロブリン、補体、自己抗体(抗DNA抗体など)の経過も重要です。特に、抗DNA抗体と補体はSLEの増悪を反映します(抗DNA抗体は上昇し、補体は低下します。)一般的な炎症のマーカーであるCRPは、SLEではあまり上昇しないため、これの上昇時は感染やその他の病態も考える必要があります。
蛋白尿や血尿などの腎臓の症状がみられる場合、腎臓内科と協力して、詳しい腎臓の検査(腎生検など)をすることがあります。ほかにも、異常が疑われる臓器に対して、心臓超音波やMRI検査などの各種検査が必要となる場合があります。

治療

自分を攻撃してしまう、過剰な免疫を抑える治療をします。治療の中心は副腎皮質ステロイドを用いますが、重症度、病気の広がり方、体重などにより、薬の種類や量を決めていきます。
一人ひとり治療も様々ですが、治療法の飛躍的な進歩に伴い予後は改善しており、数十年もこの病気と付き合っている患者さんも増えてきています。5年生存率は、1950年代は50%とされていましたが、現在では95%以上にまで改善しています。主治医と協力してしっかりコントロールしていくことが重要です。

・副腎皮質ステロイド

一般的な第一選択薬は副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン®やリンデロン®)です。副腎皮質ステロイドは腎臓の上にある副腎皮質という場所から出ているホルモンです。プレドニゾロン5mg(錠剤1錠ぶん)くらいが自分自身の副腎が作っている、一日の量です。
治療により症状が軽快し、検査データの改善が確認されればステロイドの減量を開始しますが、急激な減量は症状の再発の危険があるため、慎重にゆっくりと行います。目安としては、2~4週間ごとに投与量の10%を超えない範囲で減量します。症状の悪化、再発を防ぐため、現在状況が良くても、プレドニゾロン1日5~10mgや免疫抑制薬・調整薬を長期間にわたって飲み続ける方が多いですが、個々の患者さんによって異なります。

・ステロイドパルス療法

症状が重篤な時に使われます。副腎皮質ステロイドを3日間、点滴で大量に投与する治療法です。口から飲むより早く効き、効果も高く、副作用も比較的少ないとされています。パルス後はプレドニゾロンの内服薬に切り替え、症状やデータをみながら減量していきます。

・免疫調整薬/免疫抑制薬

ヒドロキシクロロキン(プラケニル®)が免疫調整薬として2015年に我が国でも承認され、皮膚症状や倦怠感などの全身症状での軽減に効果が認められています。この薬は定期的な眼科受診が必要で、眼の状態を確認しながら服用する事が大切です。
副腎皮質ステロイドの効果が不十分の場合や、重症の場合、早めの減量を必要とする場合などに、免疫抑制薬が使用されます。
アザチオプリン(イムラン®、アザニン®)、シクロフォスファミド(エンドキサン®)、タクロリムス(プログラフ®)、サイクロスポリンA(ネオーラル®)、ミゾリビン(ブレディニン®)、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®)などです。
これらの薬の中には、妊娠に影響したり、催奇形性があるものもあり、主治医と相談して薬を選んでいく必要があります。

免疫抑制治療時の注意事項

こうした免疫を抑える治療には気を付けなくてはならないこともあります。
特にステロイドの内服量が多い間は、ニューモシスチス肺炎などの日和見(ひよりみ)感染症に気をつける必要があります。抗生物質の一種であるST合剤(バクタ®)の内服などで予防します。
骨粗鬆症はほぼ必発で、プレドニゾロン1日5mg程度であっても進行するため、活性型ビタミンD製剤やビスフォスホネート製剤、抗RANKL抗体、副甲状腺ホルモン製剤などによる予防や治療が必要です。

血栓に対する治療

血栓を作りやすい抗リン脂質抗体症候群を合併している方や、ステロイド大量投与中の方などには、小児用バファリン、ワーファリンなどの血液をサラサラにするお薬を併用することで、血栓の予防を必要とする場合があります。

日常生活における注意点

SLEの増悪(ぞうあく)因子と考えられる、紫外線、感染症を避け予防することが大切です。長時間の直射日光は避け、帽子、長袖の服、日焼け止めをしっかりと使うようにして下さい。マスクの着用や手洗い、うがいなどの一般的な感染予防も大切です。また、持続的なストレスや睡眠不足も病気の悪化につながる可能性があるため、体調がすぐれない時は十分に休息をとることも重要です。
また、感染症を起こした場合でも、決して副腎皮質ステロイドを中止してはいけません。これは、長期間にわたる副腎皮質ステロイドの内服のために副腎皮質のストレス反応が十分に起きにくくなっているため、中止すると副腎不全を起こしてショック状態になる危険があるからです。
緊急の災害時などでも副腎皮質ステロイドは継続できるように、普段から少し余分に持っておいたほうがいいでしょう。
また、血圧を正常に保つことも重要です。自宅でも血圧を測定することを心がけましょう。その他、体重やコレステロール、血糖についてもしっかりコントロールし、増えすぎないように注意しましょう。

妊娠・出産・手術について

プレドニゾロンを1日20mg以下でSLEの疾患活動性がコントロールされていれば、妊娠・出産が可能です。しかし、分娩後に増悪することが多いので、分娩時よりステロイドを一時的に増量します。手術が必要な場合も、分娩と同様にステロイドを一時的に増量します。