脊椎関節炎(特に強直性脊椎炎)
(ankylosing spondylitis, AS)

概要・病因

強直性脊椎炎は脊椎(首から腰までの背骨)、付着部(筋肉が骨に付く場所)などに炎症おこす慢性炎症性の疾患です。強直という名の通り骨と骨がくっついてしまうことからこの名前がついていますが、必ずしも全ての患者さんが強直をきたしてしまうわけではなく、2割程度と言われています。同じように脊椎や付着部に炎症を起こす疾患のグループである脊椎関節炎の中の代表的な疾患であり(図1)、このグループには皮膚の病気である乾癬に伴う関節炎(乾癬性関節炎)やある種の感染症(消化管や泌尿生殖器)の後に関節に炎症を起こす反応性関節炎、クローン病や潰瘍性大腸炎といった腸炎に伴う関節炎、眼の病気であるぶどう膜炎に伴う関節炎などが含まれています。そしてこの脊椎関節炎は、その他にも共通する特徴があり、特にHLA-B27という特殊な遺伝子の型を持っている方の割合が多いと言われています(※HLAとはヒト白血球抗原といって、血液型と同じようにその人が持っている細胞の型で、移植の際に型が一致するかどうかなどを見たりするのに用いられます)。中でも強直性脊椎炎の方ではこのHLA-B27を持っている人が8~9割と多いことが知られています。しかし日本人でこのHLA-B27を持っているのは0.3%程度と非常に少ないため、この病気も日本では稀と言われています。男女比は3:1程度とやや男性に多く、10歳代~30歳代に発症することがほとんどです。

脊椎関節炎(SpA)
図1:脊椎関節炎

症状

筋骨格系の症状としては、首~背中~腰の痛み、臀部の痛みが多く、末梢(特に下肢)の関節にも痛みが出ることもあります。腰背部の痛みは、ストレッチなどの運動で軽快、安静や同じ姿勢で悪化、夜から明け方にかけて痛みが強くなり、通常40歳未満に出現する、などの特徴があります(炎症性腰背部痛と言います)。また付着部(筋肉が骨に付く部分)の痛みも特徴的です。特にアキレス腱が踵に付く部分や足の裏の腱が踵に付く部分などによくみられます。稀に手指や足趾が全体にソーセージ様に腫れることもあります(指趾炎)。背中や腰の痛みは良くなったり悪くなったりを繰り返しますが、一般的な痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬・・ロキソニン、ボルタレン、セレコックスなど)が比較的よく効くことが多いようです。

筋骨格系以外の症状としては、目の病気であるぶどう膜炎がよく見られます。眼の充血や痛み、眩しさ、見えにくさを訴える方が多いようです(このような症状があれば早めに眼科を受診しましょう)。また皮膚の病気の乾癬(ガサガサと皮膚のカスがついたようなピンク色の皮疹、フケが多くなったり爪が変形したりします)や腸炎(潰瘍性大腸炎やクローン病など。腹痛や下痢、粘血便などがみられたりもします)なども併発することがあります。

検査

強直性脊椎炎に特異的な検査(ある検査所見が陽性であればこの疾患であると診断出来る検査)はありません。脊椎や関節、付着部に炎症が起こるため炎症反応(CRPや赤沈)が陽性、亢進しますが、これも必ずしも全ての患者さんで見られるとは限らず、またこの数値が必ずしも疾患活動性を反映するとも限りません。古くから強直性脊椎炎はHLA-B27と高い関連があることが示されています。HLAとはヒト白血球抗原といって、血液型と同じようにその人が持っている細胞の型で、移植の際に型が一致するかどうかなどを見たりするのに用いられます。このうちB27という型が関連しているのです。強直性脊椎炎患者さんの8~9割の方で陽性と言われていますが、このB27が陽性の人が全てこの病気になるわけではなく、その中の1割弱しか発症しません。なので、B27陽性=強直性脊椎炎ではないということに注意する必要があります。陰性だからと言って強直性脊椎炎ではないとも言えず、陽性だからといって強直性脊椎炎ではない方もいます。

・画像検査

強直性脊椎炎は脊椎が強直する病気ではありますが、全ての患者さんで強直するわけではなく約2割程度と言われています。ただ、中でも仙腸関節という骨盤の部分の関節に早期から変化が現れるため、この仙腸関節のレントゲン写真を撮って評価を行います。ただし仙腸関節のレントゲンを読影することは非常に難しく、熟練した医師でも読み間違えることがあります。特にレントゲンの変化が軽度である場合は難しいため、レントゲン以外のMRIやトモシンセシス、CTなどでも評価をすることが必要となることもあります。それ以外の頚椎~胸椎~腰椎や股関節、踵骨の付着部の変化を見ることも重要です。脊椎が強直してしまう病気なので、患者さんは非常に恐怖を抱いて、頻繁に検査をすることを希望する方もいらっしゃいますが、レントゲンの変化はそれほど急激に進行しないため2年に1度程度で良いとされています。MRIでは脊椎や仙腸関節の強直やびらん(虫食い)だけでなく、炎症が起こっているかどうかも見ることができます。

診断

強直性脊椎炎の診断は、1984年に作られた改訂ニューヨーク基準というチェック項目を用いて行います(図2)。このチェック項目には仙腸関節のレントゲン所見が含まれていますが、このレントゲン所見は早期の患者さんでは認められないことがあります。最近では早期の患者さんを診断するためにMRIなども使われるようになってきました。

強直性脊椎炎の改定ニューヨーク基準
図2:強直性脊椎炎の改定ニューヨーク基準(1984)

・薬物療法

強直性脊椎炎の治療の目標は2つあります。1つは痛みをコントロールすること。もう1つは強直を防ぐことです。
通常一番始めに使用される薬剤は鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬=NSAIDとも言います)。よく使われる鎮痛剤としては、ボルタレン®、ロキソニン®、セレコックス®、ナイキサン®などがあります。鎮痛剤は、文字通り痛みを抑える薬ですが、この強直性脊椎炎という病気では、痛みを抑えるだけでなく、骨が強直することを防ぐという効果もあると言われています。特に炎症反応であるCRPが高い患者さんではしっかり内服したほうが良いようであり、痛みがあるときには我慢せず鎮痛剤を飲むようにしましょう。でも、痛みがまったくなく、血液検査でCRPも陰性の方では、鎮痛剤は自己判断で減らしたり辞めたりしても問題ありません。鎮痛剤はどれも腎臓に負担がかかったり、胃に負担がかかったりします。胃の痛みがあれば胃カメラ検査などを、また定期的に血液検査を受けましょう。

鎮痛剤を使っても痛みがコントロールされない場合は治療を強化する必要があります。痛みの部位が膝などの末梢の関節の場合は、関節リウマチで使われる薬(アザルフィジン®)が使われることもあります。アザルフィジンの効果が現れるのはゆっくり(3ヶ月以上)なので、ゆっくり効果を待つ必要があります。飲み始めて効果がないからと言って辞めてはいけません。副作用としては、皮疹(飲み始めてすぐに出ることが多いようです)、肝機能障害などがあります。
痛みの部位が首~背中~腰、臀部などの背骨にある場合は、生物学的製剤の使用を考慮します。生物学的製剤とは、人間の体の中に存在する物質を制御することによって病気を抑える薬剤で、強直性脊椎炎の治療としては、TNF阻害薬(TNFという炎症の物質を中和する薬)があります。現在日本で使用可能なTNF阻害薬にはレミケード®とヒュミラ®があります。この薬は炎症を起こす物質を中和する治療であり、この病気を根本的に治すというものではなく、また強直してしまった背骨を動くようにしてくれるものでもありません。しかし、今までの治療でもコントロールできない患者さんの症状を速やかに、劇的に改善するとされています。しかしすべての患者さんに有効というわけではありません。約5割弱の患者さんでは著効、概ね7割の患者さんでは有効性が認められます。また症状を抑えるだけではなく、長期に使用することで骨が強直するのを抑えられる可能性もあると言われています。しかし鎮痛剤でコントロールされていれば生物学的製剤を使用する必要はありません。生物学的製剤の副作用としては、感染症が重要です。肺炎を含む様々な感染症が起こりやすいため、使用する前には、感染症の検査を行います。特に、生物学的製剤の使用により結核が発症することがあるため、事前に結核の検査(血液検査やツベルクリン反応、胸のレントゲンやCTなど)を行います。またB型肝炎やC型肝炎、真菌感染症の検査(血液検査)も行います。生物学的製剤投与中は、うがいや手洗いなど感染症予防に努め、発熱などの症状があれば速やかに医療機関を受信する必要があります。また生物学的製剤は高額な治療であり、健康保険が適応されても月に4万円ほどの医療費負担がかかります。後述の医療券(国の指定難病申請で認定されると発行されます)を使用することで自己負担が少なく抑えられるため、主治医に相談してみてください。

・運動療法

強直性脊椎炎の治療では、薬物療法だけでなく運動療法も重要です。もともと強直性脊椎炎に伴う腰痛は安静で悪化しストレッチなどの運動で軽減するという特徴があります。強直性脊椎炎の方は姿勢が前かがみになることがおおいため、背中の柔軟性を維持するためにも背骨を前後・左右に曲げたり伸ばしたり、ねじったりといったストレッチをするようにしましょう。また股関節の動きも悪くなることが多いため、足を左右に大きく広げる柔軟体操や前後に広げるストレッチも良いと思います。どのストレッチも患者さんの状態によってできるものとできないものがあります。運動療法を行う前には主治医にやってもよいかどうか確認してからにしましょう。

・手術療法

強直性脊椎炎患者さんの中には手術が必要なこともあります。
強直性脊椎炎では股関節に障害をきたし、場合によっては人工関節の手術が必要になることもあります。手術をすることにより日常生活の行動範囲が広がり、疼痛も改善されるため日常生活や就労に支障をきたすような方は手術を考慮しても良いかもしれません。ただし、人工関節には耐用年数(15~20年)もあるため、主治医とよく相談してみてください。また、脊椎が強く前かがみになったまま強直した場合には、脊椎の角度を伸ばす手術をすることもあります。しかし、脊椎の手術は非常に侵襲が強く、近くに脊髄神経も走っているため、リスクの高い手術であり、もちろん背骨が動くようになる手術でもないので、手術をすることによるメリットとデメリットをよく考えた上で、主治医とよく相談した上で決めてください。

強直性脊椎炎の方のうち、脊椎が広範囲に強直している場合には軽い衝撃で骨折を起こすことがあります。強直性脊椎炎の炎症により骨自体が弱くなるとともに、強直していることで柔軟性がないため、衝撃を緩和することができないためです。ちょっとした転倒や交通事故などでもしびれや麻痺が有るようであればすぐに救急車で病院を受診し骨折がないかどうかを確認する必要があります。もしも骨折があった場合には、やはり手術が必要となります。

どの手術も、高度な専門性が必要なものであり、また手術をする際の麻酔や、手術時の体位などについても工夫が必要です。できれば経験が豊富な病院で行うことが望ましいでしょう。

医療福祉サービス

強直性脊椎炎は、平成27年7月から、国の指定難病となりました。強直性脊椎炎のうち、一定の基準(重症度)を満たしていれば、国に申請することにより医療券が取得でき、治療費の助成を受けることができます。具体的には、薬や検査などの医療費が3割負担から2割負担に軽減されたり、高額な治療の際に自己負担額が減額されたり(収入によってその額はかわります)します。申請するための書類は指定医の資格を持った医師だけですので、予め医療機関に確認をしておく必要があります。詳しくは、市区町村の福祉課に相談してみてください。

身体障害者手帳というものもあります。強直性脊椎炎患者さんでは、肢体不自由という身体障害のうち、主に体幹機能障害が問題になります。脊椎の強直などにより座位が困難、座位や立位保持が困難などの場合には障害の基準を満たすかもしれません。また、人工股関節などの手術をした際にも障害の基準を満たします。身体障害者手帳の診断書も、作成資格を持った認定医だけが作成できます。

関連情報

強直性脊椎炎は、日本では非常に稀な疾患です。そのためあまり患者さん同士の情報交換もできず、この病気の正しい情報を取得することもできない状況がありました。しかし、現在、「AS友の会」という強直性脊椎炎の患者会があり、そこでは強直性脊椎炎に関する情報を知ることができます。病気についてのこと、治療のこと、日常生活や運動療法のことなどや、患者さん同士の掲示板でのコミュニケーション、年に1回の患者会での情報交換などもあるので、是非ご利用ください。

また、順天堂大学では、1993年から整形外科・スポーツ診療科で強直性脊椎炎の専門外来が、2008年から膠原病内科でも脊椎関節炎の専門外来を開設しており、おそらく日本で最も多くの強直性脊椎炎患者さんの診療にあたっています。両科とも外来は非常に混雑しておりますが、必要な際にはご相談ください。(現在、整形外科井上医師の外来は初診患者さんをとっていないため、膠原病内科へ。受診の際には、できれば診療情報提供書(紹介状)をご持参ください)

膠原病内科

専門外来名担当医師名備考
脊椎関節炎外来 多田 久里守 毎週火曜日午後

整形外科・スポーツ診療科

専門外来名担当医師名備考
強直性脊椎炎外来 井上 久 第1、3、4火曜日午後
第1土曜日午前