胸腺腫、重症筋無力症

胸腺は胸骨の裏側にあり、左右の両葉からなる一対の器官です。胸腺は、胎生期に最も発達していますが、思春期以降は次第に退縮し、成人では大部分が脂肪に置き換わるっています。その胸腺が腫瘍化したものが胸腺腫です。
呼吸器外科学会学術調査によると、呼吸器外科学会認定施設115施設において、1990年から5年間に治療した胸腺腫の患者さんは1,082人でした。当院においては、1964年より胸腺腫の手術に取り組んでおり、現在まで約200人の患者さんを手術しています。
胸腺腫は基本的には悪性腫瘍と考えられ、胸腺腫の治療における第一選択は、外科的手術で、完全に切除しないと必ず再発します。当科では胸骨正中切開による胸腺腫・遺残胸腺組織・周囲の脂肪組織を一塊として切除する拡大胸腺全摘術という手術法を用いています。術後病理結果にて腫瘍が他の臓器に浸潤している場合は、放射線治療を追加します。予後は浸潤の程度によりますが、完全切除がなされれば、一般的に良好です。前出の呼吸器外科学会学術調査によると、胸腺腫全体の5年生存率は94.8%でした。現在、もっともよく用いられている胸腺腫の臨床病期分類は正岡分類であり、治療方針や予後の判定に有用とされています。前出の呼吸器外科学会学術調査の報告によると正岡分類病期別の5年生存率は、I期100%、II期98.3%、III期89.2%、IVa期73.1%、IVb期63.5%でした。
胸腺腫には、種々の自己免疫性疾患が合併することが知られています。頻度の高いものは重症筋無力症、低ガンマグロブリン血症、赤芽球ろうです。胸腺腫に合併する頻度は、前出の呼吸器外科学会学術調査によると、それぞれ24.7%、2.6%、0.65%でした。
胸腺腫のない重症筋無力症もありますが、その60~90%に過形成(胸腺肥大)がみられます。重症筋無力症は胸腺腫を合併する場合と胸腺過形成の場合がありますがいずれも、胸腺の完全摘出が必要ですので、胸骨正中切開が不可欠と考えています。80~90%の症例で重症筋無力症の症状が軽快するといわれています。当科では、脳神経内科と連携をとって取り組んでおり、症例数は日本でもトップレベルの施設です。

CT画像
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