患者さんへ

2007年1月
低侵襲医療外科学講座
呼吸器外科研究室

私達は、大学病院ですが、研究のために低侵襲医療を行っているのではありません。患者さんの幸せのために行っているのです。私達の行っている低侵襲外科治療の目標は、単なる傷の小さい痛みのない手術ではありません。安全かつ確実かつ低侵襲な医療であります。つまり、患者さんを危険な状況には絶対にしません。病気を確実に治します。それでいて患者さんの身体に優しく、今までやってこられた生活や仕事になるべく早く復帰できる手術です。したがって、がんは治ったが寝たきりや在宅酸素療法になってしまったとか、非常に小さな傷しか残らず元気だがすぐにがんが再発してしまったとか、手術中や手術後に不安心配をおかけするような事態だけには絶対にしてはならないというのが私達全員共通のコンセプトです。
ところでInformed consent(IC)とはアメリカで起こった1957年の医療ミス事件の判決文の中で最初に使われた言葉であり法的な側面から成立しました。その後Jay Katzが「対話」の必要性を訴え、1980年代のアメリカ大統領諮問委員会の公開審議の結果、その報告書にスローガンとして登場したのが「決断の共有」(Shared decision making)であります。それによって患者さんの満足度や、治療効果を向上させるという臨床的な意味でのICの大切さが証明されつつあります。ところが現在の日本では、いまだに医療側の一方的な説明と同意に基づく治療が行われています。各施設個々の基準においてさまざまな術式が、情報開示されることなく、一方的に行われているのが実情であります。
当院においては、患者さんおよびご家族に対して、当院の最近の手術成績をすべて情報開示し、さらに代表的な施設の公表された手術成績を情報提供し、Second opinionを積極的に薦め、肺がんに対する手術、肺葉切除術を、1.標準的手術方法、2. 胸腔鏡下の低侵襲手術、3.拡大手術のどの術式で行うか患者さん自身に選択させた上で手術を行っています。患者さんとは十分に話し合い、納得の行く医療を提供します。このように医療側と患者側との信頼関係を築いていくことが、低侵襲医療の発展には不可欠であると考えています。